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私、悪魔になりました  作者: 白子うに
8章 親友との再会。明かされる秘密
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第72話

 「事情。事情ですか」


 目の前のギャルは真剣な表情でそう問いかけた。わたしは特に隠すこともないだろうと思ったので、覚えている範囲で彼女たちに全て教えるが、やっぱり記憶がところどころ曖昧なので断片的にしか伝えられないと言うとそれでもいいらしい。

 自分でもなぜここにいたかわからないこと、牛丼屋に初めて入ったら隣に久しく会っていなかった親友と出会ったこと、彼女は実は神様だったということ。それぐらいしかちゃんと伝えれる自信がなかったのでこのぐらいしか話はできなかった。


「さっきペット?の狼がしゃべったのも、もしかして神様の使いとかだったりしますか!?だったらすごく素敵です。もしかして、あなたも火凪と一緒で神様だったりするの?」


 単純にそう思ったから口に出しただけなのに、急に表情を曇らせて汗をかきはじめてたギャルはわたしにすごい剣幕でわたしに掴みかかる。肩を激しく揺さぶられながら詰め寄ってくる彼女の今の表情は、神様である火凪の輝かしい笑顔と正反対で、まるで悪魔のような顔をしている。


「あんた今言ったことほんまか!?なぁ!?」


「そ、そうですけどっ、ちょっとやめてください!」


 バシッとその手を振り払った時に見た彼女の顔は、物凄く悲しそうな、もっと言えば絶望していたようにも見える。確かにちょっと失礼だったかもしれないけど、そっちだっていきなり掴みかかってきたんだからお相子でしょ。でも、そんな顔されたらこっちも困るよ。


「こっちの世界に神が干渉してきてるなんてね、どういうことかしら。あいつらはこの世界を創るだけ創ってここにはいないはずなのに」

 

 振り向くとさっきまで四足歩行だった動物が急に大人のお姉さんに変わっていた。背中に翼も生えてるし、やっぱり神の使いだったんだ。火凪に出会ってからほんと色々なことを経験してるけど、それも神様っていう特別すぎる存在のおかげなのかな。


「ねぇメサイアっ、て言ってもわかんないわよね。あなた、この姿を見てもまだ思い出せないの?」


「思い出すも何も、あなた方のような存在に出会っていたら忘れるわけないじゃないですか」と笑いながら答えたわたしを見て、お姉さんの表情も険しく変わった。少しきつめの口調で「そっちのやつも知らないの?よく見なさい」


 そっちのやつというのはギャルのことだろうか。さっきは悪い事をしたからついでに謝っておいた方がいいよね。振り向くと狼と同様に姿が変わっていた。動物から人間へと変わったことに比べるとそこまで変化したというわけではなかったが、どちらにも共通して言えることは、その見た目は神様というよりは悪魔というのが正しいだろう。


「あの、さっきはごめんなさい。ちょっと驚いちゃって」


「なぁ。ほんまに覚えてへんのか、あんた。この場所で初めてうちらは出会ったんやで。あんたが飛び降りて自殺しようとして・・・ほんであんたはうちと約束してくれたやん、この世界を壊そうって」


「すみません」としかいいようがなかった。だって本当に身に覚えがないんだもん。わたしが自殺しようとしてたって、この屋上にきたのはあるけどそんなことしようとしてないし。でもこの人達が嘘をついてるようにも思えない。自殺しようとする原因を考えると、やっぱりいじめとかかなぁ。いじめを受けてた記憶が全くないんだけど。


「この姿を見てもわからんか?うちらは悪魔なんや。そして、あんたも」


「悪魔・・・・・・・わたしも」


 本当に悪魔だった。神様っぽくはないと思ってたけど、にしても引っかかったのは、わたしも悪魔だということ。さすがに冗談だろうと笑って済ませることはできなくなってきた。もし仮にそうだったとしたら、この人達と同様に翼が生えて人間の見た目じゃないってことだもんね。急に不安になって自分の自分の体を触ってみるけど、やっぱりどこも異常がない。もしこの人達みたいに人間の姿と悪魔の姿両方に変われるというなら出来るはずだけど、どれだけ意識を向けても何も変化することはなかった。


「悪魔の姿にもなれないのね」と軽くため息を吐いた狼のお姉さんは、サタンさんを見た後に目を閉じて何かを考えている。


「メサイアの力を引き出すっていうガーディアンも反応しないってことは完全に悪魔にはなれそうにないわね。あなた、その神様だっていう親友の子には連絡取れないの?」


「待ちぃなオオカミ。こんな状況で連絡してどないするっちゅうねん。相手が何の目的か知らんが、仮にうちらの存在に気付いとったとしたら罠の可能性だってある。しかも相手の情報も全くわからへんまま会うのは危険すぎる」


「まぁそうよね・・・それに気がかりなのは、相手はなぜメサイアを殺さなかったのかじゃない?もし悪魔を殺すためにこの世界にそいつがやってきたとして、そんな親友だからって理由で殺さないなんてありえるの?」


「そんなん当事者に聞かなわからへんやないか。それに篝ちゃんの親友ってことは、神といえど元は人間や。情に流されるなんてことがあるかもしれん」


「それはそうね。連絡は取らないとして、これからどうする」


「ここにいるわけにもいかんやろ。まずはこの篝ちゃんの状態を知ってるかもしれんオーディンの爺さんのとこへ連れてく。とりあえずあそこなら安心やろ。待ってる時間もあれやから、次の七大魔王の一人に会いに行く」


「ちょっと待ってよ。主戦力がいないこの状態で行くのは危険だわ」


「誰も戦いに行くなんて言ってへんやろ。会いに行くんや。うちのかつての戦友アリエルにな」


「あっ!そうだったわね。そう言えばあなたたちは仲間だったのよね。サタンに忠誠を誓っていた彼がなぜアスモデウスに選ばれたのか疑問だったけど、本人も言う事はなくて、周りも聞いちゃいけない空気みたいになってた異質な立ち位置になってたけど。知ってる仲だったら話だけでも聞けそうね。私と将門みたいなことにならないことを祈るわ」


「決まったな。ほなのんびりもしてられん、行くぞ」


 随分わたしを置き去りにして長い間話し込んでたなぁ。何を話してるかはサッパリで内容は頭にほとんど入ってこなかったけど、どうやらわたしはこの悪魔達にどこかへ連れていかれることは理解した。特別恐怖は感じないのは、非現実的なことが次々と起こりすぎていて感覚が麻痺してしまってると思われるが、恐怖より高揚感があるのはあまりよろしくはない。普通の人間の感覚じゃあないしね。

 

「わたしの所有物なんだから、絶対無くさないでよね」



 また謎の腕時計のようなものにサタンさんが触れると、屋上にいたわたしたちはどこか別の場所に移動した。オーディンの爺さんという人のところだろうか。いきなり家の中に入っちゃって失礼極まりないだろうが、わざわざ家に入れるぐらいなんだから関係は浅くはないのかも。しっかしオシャレな部屋だなぁ。意識高い系の人みたい。たくさんの分厚い本とか高そうなお酒、テーブルや椅子なんかもはや使用するにはどうなのかというぐらい変な形をしている。飾り?


「ジジィーーー!ちょっと子守を頼みたいねんけどー!降りてきてくれー」


 あ、爺さんって言わないんだ。言葉遣いは訂正した方がいいとは思うけど、ジジィって気軽に呼べる間柄なら余計なお世話と言われて終わりだろう。

 しばらくすると上の部屋の扉がきぃーっと軋む音を立てながら静かに開く。階段から降りてきたのはジジィなんていうには五十年後が丁度いいんじゃないかってぐらいで、少し強面だがどう見ても二十代にしか見えない男だった。悪魔に老化現象があるのかどうかなんて知る訳ないけど、とりあえず軽く会釈をすると向こうも会釈をしてくれた。やはり見た目で判断してはいけない。


「お前一人じゃないなんて珍しいじゃないか。んで子守ってのはなんだい。そっちの色っぽい姉ちゃんなら大歓迎じゃぞ」


「違います。あ、挨拶が遅れました、オオカミっていいます」


「知っとるよそれくらい。しかしどうして七大魔王のあんたがいるかは謎じゃが、まぁ深くは追及しんといてやろう。ほんじゃそっちの・・・って人間じゃないか」


「ちゃうちゃう。こいつがメサイアや」


「この子が前に話しとった子かいな。お前のファントムじゃったな。だが、どうも悪魔には見えんのじゃが」


「うちらも詳しいことは知らんが、どうやら人間世界で親友と出会ったっちゅうんやけど、そいつが神様らしくてな」


「・・・神、じゃと?今はあっちの世界にはおらんはずじゃが」


「そうなんですよ。しかもその神様が元人間だっていうなら、何かが起こりそうな気がして不安です。そもそもただの人間を神にするなんてこと聞いた事ありませんし」


「ふむ。事態は謎を深めつつも良い方向へは向かってないようじゃな。それで、その子がその神と名乗る人間に会ってから悪魔になれへんくなったと」


「それだけやない。ところどころ記憶を無くしとって、うちらのことさえ誰のことか思い出せへんみたいでな。当然自分が悪魔やっちゅうことも理解できとらんのや。ジジィなら何か知ってるんちゃうかおもて来たんやけど」


「さすがの儂もそんな現象は見たことも聞いたこともないのぉ。じゃがその子の状態を見る限り、その神とやらと関係してるのは間違いない。とりあえずは調べてみるが、ひとまずはこの子の保護ということでいいかの?」


「話が早くて助かるわジジィ。ほなしばらく頼むわ。うちらはうちらでやらなあかんこともあるし、また様子見に来るわ。篝ちゃんもわからへんやろうけど、とりあえずここにいてくれ」


 わかりました。大してわかってもいないわたしだったが、その場しのぎでそう答えた。どっちにしろ一人では何も出来ないし動けないなら、保護してくれるここにいる方が安全に決まっている。というか保護って誰からわたしを護るのかな。話の状況的には火凪に会わせないためってことなんだろうけど、彼らは火凪と敵対しているのだろうか。神様と悪魔、確かに相容れる存在ではないな。

 じゃあ。わたしはどっちの味方をすればいいんだ。

 この人達は保護とは言っているけど、もし敵対しているならば神様である火凪と接触したわたしを誘拐して情報を聞き出そうとしているのかもしれない。

 そんなことを思ってもみたが、やっぱりその考えも違うんだろうなぁとなんとなく自分ではわかる。だからといって火凪が悪者かって決めつけるのも出来ない。なぜなら彼女はわたしを助けてくれたんだから。

 結論が出ない時にすることは決まっている。何も考えないことだ。


「ほな行ってくるわ。なんかわかったら知らせてくれ」


「行ってらっしゃい」


 そう彼女たちに伝えると、二人は今までの硬いものとは違い、微笑んだ柔らかい表情をわたしに見せた。とても良い笑顔で見ていて安心する。それに、どこか懐かしい感じ。

 初対面なのに、初対面じゃない。胸が少しキュッ締め付けられるこの感情はなんだろう。

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