第71話
「誰ですか?あの、そこをどいてもいたいんですけど」
問いかけるもギャルは反応しない。ジト目というか、半目でわたしを見ている。初対面でそんな顔をされるほどわたしは人相も悪くないのに。人見知りではあるけど、人当たりはいい。
なんか気まずいので、対象をギャルから犬へと変えよう。
「あ、可愛い犬ですね!触っていいですか?」
許可を取る前にわたしはその犬をわしゃわしゃ撫でまわす。大体犬を飼ってる人というのは、わが愛犬の可愛さをみんなにわかってもらいたい欲がある人が多いので、なんだかんだ触る事に関しては寛容な人が多いのだ。それにしてもごわごわした毛並みだなぁ。
「私は犬ではない。狼、オオカミよ」
「わっ!!」
犬が、しゃべったぞ。思わずのけぞって地面にしりもちをついた。なにこれ超ファンタジーじゃん。あ、神様がいるなら犬だってしゃべるか。そりゃそういうのも出てくるよね。
「迎えに来たわよメサイア。遅いと思ってサタンと心配してたらこんなところにいたのね」
「メサイアって誰ですか?」
唐突にそんな洋風な名前を出されてもわかんないよ。そんな二つ名つけられた覚えないし、それに迎えにきたって、このしゃべる狼とギャルが?初対面なのに?
「おいおいマジか。冗談ならやめてや篝ちゃん。うちらは姿変えてるんや。うちはサタンや、んでこいつはお前の大好きなオオカミさんやで」
「ちょっと、待ってください」
サタンとオオカミ。その名前には憶えがある、でもどうしてだろう。さっきまでは思い出せたはずなのに全く出てこない。姿変えてるって、もとはどんな姿だったんだろうか。男が女に変装をしている感じでいいのか?
「ごめんなさい。ちょっと思い出せなくて・・・」
そう告げるとギャルは目をひんむいてペットの狼と見合った。
「おいオオカミ。これヤバイんちゃうか」
「えぇ。私たちが来る前に何かあったみたいだけど、完全に記憶をなくしてるわね。周囲は索敵したから今は安心していいと思うけど」
「とりあえず連れて帰るか。ここにいてもしゃーないしな」
ギャルがわたしに近づいて腕時計のようなものに触れた途端に、わたしはどこかの学校の屋上にきていた。学校かぁ。そういやわたし、学校行ってたっけな。でもまた不思議なことが起きたな。しゃべる動物にワープ?夢でもみてるのかな、わたし。ぽけーっと座りながら空を見ていると、さっきのギャルが頭をポリポリ掻きながら目の前にどかっと座った。ペットの狼はお行儀よく飼い主の隣にお座りしている。
「ほな事情聴かせてもらおうかー篝ちゃん」




