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私、悪魔になりました  作者: 白子うに
8章 親友との再会。明かされる秘密
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第68話

 バレとるやないか。牛丼屋で会った時は何事もなくやり過ごせたと思っていたのに、やっぱりあの事件について聞くつもりでわたしに接近してきたと思うと沸々と湧き上がる嫌悪感で胸やけする。

 まぁ今の場面を見た後にこの質問をされ、はいそうです、と馬鹿みたいに答えるやつはサタンぐらいだろう。

 だからここはスマートに、可憐に嘘をつかせてもらう。あれだけ嘘はついちゃダメだとかほざいていた自分を叱りたい。

 前言撤回します、嘘はついていいです。命の危険がある時は特に。だからわたしは火凪に「わたしは知らない。あの子たちにいじめられていたから疑われて当然だろうけど、知らない」と言った。

 そっかぁと生返事をされたのがイラッとさせる。なんか見透かしてるような雰囲気を醸し出してはいるが、それはフェイクで、余裕を見せつけてわたしの動揺を誘う心理的テクニックに違いない。テレビでこういうのやってたからな。念押しで二回も知らないと言ったのは、これ以上深く追及してくるなというわたしからのメッセージなのだが、そんなことおかまいなしに次々と質問をしてきた。全く違う質問を。


「世界って変わると思う?」


「えっ?」


 はい?


「間違えた、変えられると思う?」


 はい?


「どう思う、篝」


「無理だと思うよ。現に今は平和に見えて平和じゃない。本当の平和を望むなら、なんで武力を持つんだろうね?抑止力?幸せにそんなものは必要ない。要るのは、人と人とが思いやる心だと思うけど」と挑発的に質問を返したやった。なんでこういう話題を振ったのか知らないけど、正論をぶつけてやれば、どんな返事が返ってくるんだろうと期待していたのに。


「そっかー」ってきた。

 

 は?なんだそりゃ。そっかーってなんだ。質問してきた側がそれだけって馬鹿にしてるとしか思わないんですが。神様だからって偉そうにしないでください。しかも続けて質問をしてきた。


「いじめる人といじめられる人、どっちが悪いと思う?」


 こいつ・・・、わたしがいじめられてたって言ったからこの質問をしてきたのか?だとしたら相当性格が曲がってるぞ。いじめられてたやつが、自分の方に原因があると思ってるやつなんかいるか!例外でそういうことがあったとしても、だとしても!いじめるやつがいなきゃいじめなんて起こらないだろ。現にわたしみたいに、何もしてなくてもターゲットにされることなんかざらにあるだろう。一部の馬鹿の気分転換用のおもちゃとして扱われた気持ちがお前にはわかるのか?もう我慢できない。だが、わたしはここで「いじめる人」と答えるのは明らかで、その答えを期待してるであろう火凪の思い通りの展開にさせたくなった。

 だから答えを変えた。


「どっちも悪いと思うけど」


 そう言ってはみたが、完全に顔と口調が真逆の反応をしているのがわかる。自分の体だもの。昔から感情が表情に出にくいタイプだと言われていたはずだったけど、さすがに無理だった。

 その答えを聞いた火凪は「ま、それが正解かな」と言った。

 正解なわけねーだろ。なに納得してんだよ。いじめるやつが悪いに決まってるだろ。というか、わたしの事を嘘か本当か知らないけど、好きとか言っといてそれはありえないでしょ。付き合ってたら即別れるよ。嘘でも「いじめる人に決まってるよ!」とか言うかと期待してたのに。

 なんかアホらしくなってきた。情けなくなってきた。 

 何がアホらしくて何が情けないかって?

 好きって言われてちょっと意識してた自分にだよ。

 あー拗らせ女子は嫌だ嫌だ。

 けど気持ちはすっかり冷めている。

 精神的ダメージは受けたが。

 割に合わないな。


「じゃぁ最後にもう一つだけ」


 この期に及んでまだ学習しないのか。見損なったよ親友。あの頃の神威 火凪は一体どこにいったんだ。


「僕が人間じゃないってわかった時の感想を聞かせてよ」


「感想・・・・・・?」


 感想って言われても困る。感想??なんでそんなの気にするんだ。生憎わたしも人間じゃないもんでねぇ。


「なんか偉そうだなぁって思った」と素直に答えた。

 偉そうだったじゃないか。人間だった分際のわたしたちが、人間を超越する存在になったからってそんな風になってはいけないと思います、はい。

 悪魔ならまだしも、神様なんだよね?

 それに人間世界を統治してる、曲がりなりにも神様なら、火凪には向いてないと思う。

 続けて言った。

 それを聞いた途端に大笑いしだした。下品な笑い方で。下品な神様が。


「やっぱり篝は最高だよ。僕が好きになった人でよかった。色々聞いてごめんね、次は篝が僕に質問していいよ」


 ほら偉そうじゃないか。上から目線になってるぞーーー。なーにが最高だ、心では見下してるんだろそうせ。悪魔は神様より下ってか?ん、わたしが悪魔とはわかってないのか。まぁ、いい気になるのも今のうちだ。今度はわたしが質問する番。

 火凪の恋心を利用させてもらって有益な情報を聞き出してやる。今後のわたしたちにとってはどれも重要なことばかり。まずはお前のことだ。わたしたちの最大の敵となる神のことを教えてもらう。それにルナとの関係性、どういう経緯で神となったのか、なぜ行方不明の事件について調べているのか。全部聞けることは聞いてやるぞ。ふはははは、震えて聞け!


「あっごめん。ちょっと用事できたしお別れするね」


「はっ!?」


「大丈夫。気付けば元の世界に戻ってるから。それと、またすぐに会うことになるだろうし!」と勝手に話を切り上げて火凪は空間に溶け込むようにして消えて行った。ぐにゃりと曲がったその空間が徐々に広がって大きくなったと思ったら、さっきまでいた神社の境内はなくなり、細い裏路地にわたしは一人立っていた。年季の入った飲食店がそこにはあるだけで、神社のようなものはどこにも見当たらない。


「なんなの」と下に転がってた空き缶を蹴り飛ばしたら、その先には数人のヤンキーがいた。

 この展開ってあれだよね。普通当たらないはずの空き缶が、こういう時に限って当たるんだよね。


 「こつん」


 ほらねっ?

 見事にダイレクトヒットしたのは髪の毛が束になってネジネジなってるお兄さんで(ドレッドヘアーっていうんだったかな)「あぁ?」と既にあなた何人か人殺してるでしょぐらいの目つきでガンを飛ばしながら向かってきた。

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