第59話
「地割れ!?上に飛んで逃げましょうオオカミさん!」
「え、えぇ。これが元大魔神の力・・・凄まじいものね」
サタンの作戦は足場を崩すことだった。
翼を持たない将門に対して最も有効な策だろう。
きっと最初はわたしみたいにあいつを物理的に倒すことが目的だったとは思うけど、サタンは人の失敗を見て行動すると言った。わたしの攻撃が効かなかったことでこの方法を編み出したというのなら失敗した甲斐があるってもんだ。
将門は再びジャンプしようとするも不安定な足場のせいで何も出来ることなく下に落ちていき、みるみるうちにその姿は漆黒の闇の中へと消えて行った。
崩れた果てにあるもの、それは唯一将門だけ知ることになるだろう。
「いや~危なかったなぁ。まさかあんな強いやつやったとは思わへんかったけど、とりあえずはうちらの勝ちや」
「でも大丈夫かな。殺すことはできなかったわけだし、いずれわたしたちの前に現れたりでもされたら最悪だよ」
「万が一そうなった場合を想定して、これからもっと強くなればいいだけや。けど少し疲れたな。いや、めちゃんこ疲れた。日本に帰って休もう。あそこは比較的安全やし」
疲れたという言葉を聞いた瞬間わたしもめちゃくちゃ体がだるくなったじゃん。
認識するというのはよろしくないな。
帰りはオオカミさんがもっている記憶式転移装置を使わずにフェニックスに乗ってゆっくり帰ることに決まった。というのもサタンのさっきの力についてゆっくり話を聞きたかったからで、わたし以外の二人はとっとと帰って休みたい派だった。だが今回の功労者でもあるわたしの願いを聞き入れたると嫌々受け入れてくれた。優しぃですな。
話を聞くと、あの力の秘密はやはりリリスの能力に隠されたもので、受けたダメージに比例してサタンの潜在力を引き出すという能力らしい。この能力のすごいところはダメージを受けるだけではなく、相手に与えたダメージも潜在力に変換できること。例えば相手の攻撃を受けて得る潜在力が二倍だとすれば、攻撃をして相手にダメージを与えて得る潜在力は一・三倍ほど。リリスと合体すれば全身が潜在力を溜めれることになり、攻撃をしてもされても潜在力に変換できる最高の状態になる。ある程度ダメージを受ければすぐにでも潜在力に変換はできるが得る力はそこまで強くない。
逆リリスが瀕死の状態まで耐えて得る力はかなり強い。さっきのサタンの状態はこれに該当する。弱点は、リリスが意識を失ってしまうと潜在力は全て失われること。だから加減が難しいらしい。もっとも、この能力を最大限に発揮して得れる力は大魔神の時の半分程らしく、失った能力までは復活できることはないらしい。炎が出ていたのは能力ではないのかと疑問を投げかけると、あれはもともとサタンが引き出せていない身体能力やからお飾りみたいなもんやと言われた。全盛期は能力を奪われる前だからあの炎を意のままに操り戦えたというわけか。
だがそれでもあれほどの力を出せるのは非情に恐ろしい。
大魔神の力を取り戻せば暴君になるのは間違いない。
話を聞いた結果、根本的にはわたしの今の状態と似ているなーと感じた。
身体能力の急激な底上げという点ではサタンには負けているが、今後の成長性という意味ではわたしとガーディアンの方が上という解釈でこの話は終わった。
オオカミさんも知りたかった疑問を知れて満足したのか眠ってしまった。
「戦っとらへんこいつの方が疲れてるってなんやねん」といつもの嫌味を言いつつもその顔は笑っていた。一安心一安心。
目先の目標はこのチームを仲良くさせることなんだよねぇ。
今回の件で少しはサタンのことを見直してくれてたら良しとしよう。
さぁて、わたしもひと眠りしよう。
日本についたら起こしたるといってくれたサタン。
疲れてるのに眠らないの?と聞いたが、考えごとができたから起きとくとの事。
寝なよーと再度促すもええわと言われ、あまりしつこいのもうざがられるからとっとと寝ることにした。