第15話
意識が遠くなるほどの頭痛と吐き気がわたしを襲う。ギリギリのところでなんとか意識を失わずには済んだが、恐ろしいほど気分が悪くなった。目を開けることさえできないので、とりあえず深呼吸をして呼吸を整える。ふーっふぅーーっと息を吐いては吸うの繰り返し。
わたしの息づかいを不安に感じたのかサタンがちらりと私の方を見る。
「大丈夫かいな。あ~~~これは言ってなかったうちにも責任があるわ。瞬間移動すると慣れてないやつは気分悪くするって言っとけばよかったわ。急ぎ過ぎてあんたへの配慮が足りんかった」
どうやらサタンはこっちの世界限定で自分が言った場所にだけ瞬間移動が使えるらしい。
少し深呼吸をして落ち着いてきたわたしはゆっくりと目を開ける。そこには一面緑の森が姿を現していた。富士の樹海の真上にいる状態で、この真下からもうオロチの住処だとサタンは言う。疲れて会話に応じる事さえままならないへなちょこななりたて悪魔だが、そこは少し踏ん張って会話を続ける。
「いやっ、ぜ、全然大丈夫。急ぐ気持ちもわかるし、今度からは、うっっうぉえっぷ・・・うん、気にしないでね」
「いや・・・あんた全然大丈夫そうじゃないやん。ちょっと休もか」
「いやいや、ほんと大丈夫だから。せっかく急いできた意味がなくなるし」
「そうか。ほんならまだもうちょいうちの背中につかまっとき。自分で移動するより楽やろ」
「ありがとう。それじゃお言葉に甘えさせてもらうね」
「ほんなら行こか。ほんまにオロチが生きてるかはどうかわからんし、念のため何があるかわからんし一応気を付けといてな。まぁ今の状態で気を付けろっていうのも無理な話やから、せめてうちの背中にだけはしっかりつかまっといてな。ルナってやつの言葉もまだそこまで信じたわけじゃないし。オロチには生きとってほしいのは当然なんやけど、いまいち理解できんからなぁ」
確かにわたしも出会ってすぐの人の言う事などあまり信用できない。その人がもし本当の事を言ってたとして、そんなすぐに相手を信じるというのは純粋な心を持つ穢れを知らない小さな子供ぐらいだろう。だけどあのルナって悪魔は嘘を付くような雰囲気には見えなかったし、多分本当の話なんだろうけど。
「覚悟はできたか?ほんなら結界に入っていくで~」
サタンはゆっくりと下に降りていくのと同時に、わたしの気分の悪さが再上昇してきた。
や、やばい。どうしよ。もう吐いてすっきりしたいけど、今吐くとサタンの頭にわたしのリバースしたものが降り注いでしまうではないか!我慢しろ~我慢だ我慢。耐え抜くのだわたし・・・。
だが、そんな決意は悲しいことに一瞬で無くなった。
これは・・・この感覚は・・・・・・吐くッッ!!!
「ごめん」
「えっ?何がや?」
あっけらかんに答えるサタンをに説明する余裕もなく、わたしは勢いよくゲロッた。
サタンの頭にかかり、綺麗な赤茶色の髪の毛は胃液で汚くうす汚れて見るに堪えないものになった。見るに堪えないものにしたのは、誰でもないこのわたしなのだけれども。
「・・・ごめん」
「・・・・・・・・・ええよ」
すごく気まずくなった。




