第五十三話 途絶えた顎の音と、暗黒の迷宮探索
お読みいただきありがとうございます。つむ教授です!
第52話『新タイプの検証と、脅威の銀色』では、Eランクの新種『魚タイプ』の召喚獣サンマが前線にデビュー。完全受け流しのバフと視界遮断のデバフによる劇的なハメ連携が炸裂し、格上の強敵アーマーアントの猛攻を完璧にシャットアウトする無双劇が描かれました。
今回の第53話では、その圧倒的な盤石の陣形のもと、何ヶ月もの間じっくりと続けられてきた持久戦に大きな変化が訪れます。
新しく加わったEランクの仲間たちの息の合ったコンビネーションが次々と炸裂し、ハクスラサイクルは絶好調。しかし、いつものように迎撃を続けていたアルカたちの前で、突故として不気味な顎の音が途絶え、アーマーアントたちの出現がピタリと止まります。地上付近の兵隊蟻を間引ききったと判断したパパの口から告げられる、次なる作戦の宣言。上下左右に複雑に分岐した暗黒の迷宮へと、印をつけながら一歩ずつ進んでいくハラハラワクワクの本格的な探索の幕開けをどうぞお楽しみください!
新戦力であるEランクの魚タイプ『サンマ』が戦場に加わったことで、私たちのハクスラ効率は劇的な進化を遂げていた。
サンマが空中を滑るように【跳ねる】ことで味方に完全受け流しの防御バフを付与し、さらに【群れる】による無数の銀色の群れがアーマーアントたちの視界を完全に遮断して命中率をガクンと引き下げる。
この凶悪なハメ殺し連携に加え、新しく名付けたEランクの仲間たちのコンビネーションも次々と炸裂していた。
「モス、痺れの鱗粉をお願い! タイガー、動きが鈍ったところを狙って!」
私の指示を受け、大きな羽を持つ虫タイプのモスが戦場の上空で優雅に羽ばたいた。撒き散らされた微量の麻痺鱗粉がアーマーアントたちの巨体を包み込み、その動きをピキリと麻痺させて速度を著しく低下させる。
「グルルァ!」
そこへ、鋭い牙を持つ獣タイプのタイガーが音もなく飛びかかり、無防備になったアーマーアントの首元へ強烈な力で【噛みつく】を叩き込む。強靭な顎と鋭い牙が、鉄壁の鎧の隙間を完璧に捉えてダメージを与えていく。
ヤンマとウルフのハメ連携だけでなく、このモスとタイガーによる『麻痺&噛みつき』のコンビも加わったことで、それまでランク差でやられることが多かった前線は、完全にコントロールされた鉄壁の安全地帯と化していた。
私は後方の安全な陣地から淡々とサイクルを回し、アーマーアントが絶命するたびにその場に転がる漆黒のDランク魔石を『次元統括』の無限収納空間へと次々に吸い込ませていった。
そんな粘り強い討伐戦を、私たちは来る日も来る日も実直に繰り返した。
最初は無限に湧き出てくるかのように思えたアーマーアントの軍勢だったが、こちらが一切の消耗なく一方的にハメ殺し続けるゾンビ戦法を前に、さすがの数に物言わせる蟻たちも確実にその数を減らしていった。
そして、ある日の午後のことだった。
いつものように魔導書を開き、洞窟の入り口へ向けて迎撃の構えをとっていた私と召喚獣たちの前で、突如として奇妙な変化が起きた。
「……あれ?」
私は小さく首を傾げた。
いつもなら、洞窟の奥からカチカチ、ギチギチと絶え間なく響いてきていた、蟻たちの不気味な顎の音がピタリと途絶えていたのだ。
1分が経過し、5分が経過しても、次のアーマーアントが一向に姿を現さない。洞窟の奥からは、ただひんやりとした静寂の風が吹き抜けてくるだけだった。
「出てくるのが、止まった……?」
私がぽつりと呟くと、前線で大剣を地面に突き立てて警戒していたギルガ先生が、ふぅと大きく息を吐きながら肩の力を抜いた。
「おう、どうやらそのようだな。これだけ長い間、出てこねえってことは……」
偵察から戻ってきたパパが、愛剣を鞘に収めながら、私たちの元へと歩み寄ってきた。その表情には、何ヶ月ものの過酷な持久戦を戦い抜いた確かな手応えが滲んでいた。
「ああ。粘り強く巣穴から出てくるアーマーアントを倒し続けた甲斐があった。アルカの召喚術のサポートのおかげで、地上付近にいた兵隊蟻はすべて間引ききったと見ていいだろうな」
「パパ、じゃあ……!」
私の言葉に、パパは力強く頷き、洞窟の奥に広がる底知れない暗闇へと鋭い視線を向けた。
「ああ。兵隊が出尽くした今こそ、攻勢に出る絶好の好機だ。……みんな、よく長い持久戦に耐えてくれた! ここからは、こちらから中に打って出る。巣の奥の探索に移るぞ!」
パパが討伐隊の面々に向かって声を張り上げると、冒険者や職人たちから「おおおおっ!」と地鳴りのような雄叫びが沸き起こった。
ついに、防衛戦から攻城戦への移行。
私たちは次元統括から出したたいまつを掲げ、入り口から続く暗闇の奥へと足を踏み入れた。
ちなみに、次元統括のなかは時間が進まないらしい。
一歩中に入ると、アーマーアントの巣穴はアリの巣らしく、上下左右に幾重にも分岐した極めて複雑な迷路のようになっていた。一歩間違えれば、二度と地上に戻れなくなるような暗黒の迷宮だ。
「アルカ、ルーク。巣穴の中は複雑だ。帰り道を見失って迷わないように、分岐点ごとにこの染料でしっかりと『印』をつけていくぞ」
「バッチリつけておきます!」
パパの落ち着いた指示に従い、ルークや職人たちが壁に分かりやすい目印を刻み、染料で印をつけていく。それを確認しながら、私たちは一歩一歩、慎重に奥へと歩みを進めた。
この巨大な洞窟のさらに奥、五百年間誰も生きて姿を見た者がいないという、硬い鎧を持つBランク魔獣『クイーンアーマーアント』が眠る、未知の領域への探索がいよいよ始まったのだ。
(これまでに鍛え上げたEランクの仲間たち、そして私の召喚レベルの成果を、本番で発揮する時が来たわね!)
暗黒の巣穴を見据えながら、私の胸は元教授としての飽くなき探究心と、無限術士としてのハクスラ精神で激しく高鳴っていた。
「みんな行くよ!」
私は頼もしい仲間たちの魔導カードをきつく握り直し、パパたちの背中を追うように、ほんわかと不敵な笑みを浮かべて未知の洞窟の深部へと一歩足を踏み入れるのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
何ヶ月も粘り強く回し続けてきたアーマーアントのハクスラサイクル、ついに地上付近の兵隊蟻を全て間引ききるという大きな成果を達成しましたね。
今回はサンマだけでなく、虫タイプのモスによる【痺れの鱗粉】での麻痺と、獣タイプのタイガーによる【噛みつく】の『麻痺&噛みつき』コンビの素晴らしいハメ連携も描かれ、Eランク召喚獣たちのポテンシャルの高さが改めて証明されました。格上を完全にコントロールしてDランク魔石の山を築き上げるアルカちゃん、さすがのハクスラ精神です。
後半からは、一気に不気味な静寂が広がり、物語が「防衛戦」から「巣穴の探索」へと大きく動き出しました。蟻の巣らしく上下左右に幾重にも分岐した複雑な迷宮に対し、迷わないように印をつけながら慎重に進んでいく描写は、これからの大冒険への緊迫感を最高に引き立ててくれますね。
この暗黒の迷路の最奥に眠るという、五百年誰も見たことがないBランクのクイーンアーマーアントの元へ、アルカちゃんたちがどうやって辿り着き、どんな戦いを繰り広げていくのか……一章のクライマックスに向けてワクワクが止まりません!
「モスとタイガーの麻痺噛みつき連携が格好いい!」「迷わないように印をつけて進む探索のリアルな緊張感がたまらない!」「いよいよ奥へ進む展開に胸が熱くなる!」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページから【ブックマーク登録】や【評価の☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけると、つむ教授の執筆エネルギーがさらに無限(∞)になります!
次回もどうぞお楽しみに!




