第十三話 限界突破のステータスと、あったかい相棒
お読みいただきありがとうございます、つむ教授です!
第12話『領地データの可視化と、幸運の風土加護』では、通常スキル『統治統計』を使って、領地が抱える深刻な「土壌の栄養不足」という最初のボトルネックを発見したアルカ。
第13話の舞台は、その直後。庭園の芝生の上で、最初の一歩を踏み出した瞬間から始まります!
五歳児のフィジカルでは開墾すらできませんが、アルカの頭脳には開発経済学の理論があり、隣には【魔力無限】を極限まで吸い上げて生まれた可愛い相棒スノウがいます。
アルカの『風土豊盛』と、スノウの持つ『風土加護』『天候操作』というバグ能力が完璧に連動したとき、領地全土を包み込む「奇跡の光景」とは――!?
目の前に広がる男爵領の豊かな大地を見つめながら、私は静かに最初の一歩を踏み出した。
私の小さな肩の上では、スノウが「きゅい?」と不思議そうに首を傾げている。
(開発経済学の理論において、土地の生産性を劇的に向上させるには、効率的なインフラ整備と肥料の投入が不可欠。けれど、この世界には物理的なコストを一切無視できる、私とこの子のバグ能力があるわ)
前世の頭をフル回転させ、私は脳内で二つの能力を掛け合わせる奇跡の数式を、完全に、そして美しく組み立てていく。
私の持つ、領地全体の成長率を底上げする常時発動スキル『風土豊盛』。
スノウの持つ『風土加護』と『天候操作』。
この三つを連動させて、効果をさらに上げるのだ。
(よし、理論は完璧。私の無限の魔力をスノウの能力に上乗せして、領地全体へと広げるイメージね)
私は芝生の上でそっと目を閉じ、肩の上のスノウへと意識を集中させた。
日用の照明魔導具を扱うときとは違い、神から授かった私のスキルは、私の持つ【魔力無限】の膨大なエネルギーを完璧に自動制御してスノウへと繋いでくれる。
だが、次の瞬間、私の想像を遥かに超える事態が起きた。
「きゅいぃぃっ!」
スノウが嬉そうに声を張り上げた瞬間、その小さな体がまばゆい黄金の光に包まれる。
(えっ……ちょっと待って。スノウ、きみの能力の出力、最初から高すぎない……!?)
システムによる魔力制御は完璧だった。つまり、これは私の暴走ではない。
私の無限の魔力をダイレクトに受け取ったことで、スノウ自身の持つ『天候操作』の本質が、一番下のGランクとは到底思えない規模で覚醒してしまったのだ。
ざあぁぁぁ……! と、心地よい音を立てて、領地全土にきらきらと輝く黄金の魔力が勢いよく降り注ぎ始めた。
私の無限の魔力と、スノウの土地祝福の力が完全に融合した、大地の栄養そのものの恵みの魔力。
魔力が地面に染み込んだ瞬間、庭園の草木が目に見える速さでみずみずしく青々と狂い咲き、遠くの農地からは「な、なんだこれはぁぁっ!?」という領民たちの驚愕の叫び声が風に乗って聞こえてきた。
『統治統計』のステータス画面を出現させると、そこには信じられない数値が並んでいた。
(……凄いわ。土壌の栄養ステータスが、限界を突破して信じられない速度で跳ね上がっている……!)
データが示す通り、領地が抱えていた最初の、および最大のボトルネックは、スノウの規格外すぎる祝福の魔力によって一瞬で綺麗に解消されたのだ。
これでこれからは、領民たちが汗水垂らして植えた作物が、今までの何倍もの大きさと美味しさで大豊作になることは間違いない。
「ア、アルカ……!? 一体、何が起きているんだい……!?」
そこへ、城館の部屋から大慌てで庭園へと飛び出してきたパパのクラウスとママのエレナが、腰を抜かさんばかりに驚愕して固まっていた。
元Aランク冒険者のパパでさえ、領地を包み込む黄金の魔力を前に、顎が外れそうなほど目を見開いている。
パパの隣で、ママも聖域のような美しい光景に圧倒され、ただ祈るように胸の前で手を組んでいた。
(あぁ、よかったわ。最初の課題は完璧にクリアね。これで美味しいものがいっぱい食べられる環境の、最高の土台ができたわ……)
ステータス画面の完璧な成果と、遠くから聞こえる領民たちの歓声に、私は深い満足感に包まれた。
前世では、どれだけ一人で必死に論文を書いても、誰もこんな風に喜んでくれなかった。
だけど今、私のこの力と知識が、この温かいルートハーバー家と、領地のみんなの未来を確実に救ったのだ。
――が、その素晴らしい達成感に胸を震わせた、まさにその時だった。
(……ふぇ? なんだか、急に、身体の力が、抜けて……。まぶたが、もの凄く、重い……)
頭脳を限界までフル稼働させて知性を暴走させ、さらに膨大な魔力を一気に出力した反動。
【魔力無限】の私であっても、幼児の肉体特有の強烈な眠気と急激な空腹感には、どうしても抗うことができないのだ。
脳が完全な強制シャットダウンのサインを出している。
(だ、ダメだわ……。もう一歩も、動けな……い……)
か弱きインドア派の五歳児のフィジカルは、すでに限界を迎えていた。
私は肩の上から膝の上へとトコトコと降りてきて、心配そうに顔を覗き込んでくるスノウの小さな体を、最後の力を振り絞ってぎゅっと抱きしめる。
端から、パパとママが「アルカっ!?」と大慌てでこちらへ駆け寄ってくる声を遠くに聞きながら、私は庭園のふかふかな芝生の上で、そのままコテッと意識を手放すのだった。
「スノウ、あったかいね……ふにゃあ……」
第13話をお読みいただき、ありがとうございました!
最初の内政改革として、スノウの『天候操作』に自身の無限魔力を上乗せしたアルカ。
神から授かったスキルのおかげで魔力制御は完璧だったものの、魔力をダイレクトに受け取ったスノウ自身のポテンシャルが最初から高すぎました(笑)。一番下のGランク召喚獣のはずなのに、領地全土にきらきらと輝く【黄金の魔力】を降らせるという、とんでもない覚醒っぷりを見せてくれましたね。
大地の栄養そのものの恵みによって、土壌の栄養ステータスは一瞬で限界突破!領地最大の課題は見事にクリアされ、これからの大豊作が確定いたしました。
大慌てで部屋から飛び出してきて腰を抜かしているパパとママの姿、元実力派冒険者なのに完全にアルカに振り回されていて微笑ましいです。
前世の孤独な研究室での終わりを思い出しつつも、今世では自分の知識と力が、大好きな家族と領民たちの未来を救ったことに深い満足感を覚えるアルカ。
しかし、知性を暴走させて膨大な魔力を扱った反動には抗えず、最後はスノウをぎゅっと抱きしめて「スノウ、あったかいね……ふにゃあ……」と芝生の上でコテッと可愛らしく寝落ちしてしまいました。
次回、第14話。
芝生の上でスノウと一緒にすやすやと眠るアルカを見たパパとママは、この「奇跡の雨」の正体を前に、またしても大いなる勘違いを加速させることに――!?
「スノウのきゅいぃぃっ!が最高!」「黄金の魔力が降り注ぐシーンにワクワクした!」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページから【ブックマーク登録】や【評価の☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけると、つむ教授の執筆エネルギーがさらに無限(∞)になります!
次回もどうぞお楽しみに!




