閃光探偵
オレの名はタナカケイゴ23才。
親ガチャに勝ち大金持ちの家に生まれた。
ギャンブルと美女と酒が大好きな放蕩息子だ。
湯水のようにお金を使っていたらベガスで300億溶かしちまったぜ。
金の無心に行ったら親父はあきれてオレを勘当すると言い放ったので銃で殺した。
はじめての殺しで心臓がバクバクする。
セックスに近い興奮を感じていた。
自殺に見せかけるために親父の手に銃を握らせる。
銃声を聞いておふくろたちが駆けつけてきた。
「あなたどうしたの?」
「旦那さまどうかされましたか?」
「お父さま?」
ドアがどんどん叩かれる。
オレは回転する本棚の仕掛けを使って隣の部屋に移動して何食わぬ顔で合流した。
「なんかすんげぇ音したな」
回転する本棚は死んだ祖父がオレだけに教えてくれた秘密の扉だ。
動かす本は3つで順番通り動かさないと回転しない。
知らなきゃぜったいに動かせねぇ。
完璧な密室トリックだ。
長男であるオレには巨額の遺産が転がり込んでくる。
ニヤつきたいのをこらえて仏頂面を作った。
おふくろは倉庫から持ってきた合鍵を使ってドアを開ける。
「あなたっ!?」
親父の死体におふくろがすがりついた。
優等生の弟ユージとおいぼれた家政婦はぼうぜんと立ち尽くしている。
すぐに警察が呼ばれた。
オレたちはリビングに集められてたぬきみたいな刑事から事情聴取を受ける。
事情聴取を終えた刑事はつぶやいた。
「自殺ですな」
「主人には自殺する理由がありません!」
「完全な密室だ」
「なにかのトリックですよ!」
ユージが刑事に喰らいつく。
「ほう。どんな?」
「それはわかりません。しかし父は自殺すると天国に行けなくなるからぜったいに自殺しないと言ってました」
「ならば自殺の線は薄いか」
はやく自殺で処理しろよ。無能が。どうせてめえじゃ解決できねーよ。
オレはライフル射撃が趣味で今朝も射撃場に行ってきた。
発射残渣もあってとうぜんだ。
便所で確認したが返り血もねぇ。
調べられても余裕のよっちゃんだね。
堂々とした態度でタバコを吹かす。
ユージがオレをにらんだ。
「兄さんが怪しいな。隣の部屋にいたのに駆けつけるのが遅かったじゃないか」
「銃声が聞こえて怖かったんだよ。強盗かもしれねぇだろ」
「遺産を相続するためにお父さまを殺したんじゃないか?」
「殺すわけねーだろタコ。オレは親父を愛してたんだ」
「よくいうよ。ひとを愛したことなんてないだろ」
「なんだとてめぇこのやろー!」
ユージに殴りかかろうとしたところで刑事が仲裁に入る。
「まあまあ落ち着いて。じつはすでに探偵を呼んでおります。もうまもなく到着するでしょう」
探偵だ?
漫画じゃあるまいし探偵なんぞになにができる。
浮気調査でもしてろっつーの。
ソファーに深く腰かけて探偵の到着を待っているとガヤガヤと外が騒がしくなる。
やがて警察官に取り囲まれた探偵姿の美少女が姿を現した。
「こちらが名探偵の姫咲ヒカリさんです」
黒髪黒眼の美少女はオレたちを見回す。
14才ぐらいか。見た目はトップアイドルなみだな。
大金を積めば股をひらかねぇ女はいない。
親父の遺産が転がり込んだらオレの女にしてやろう。
けがれなき美少女とまぐまう妄想をする。
内心でよだれがとまらねぇ。
美少女探偵はすっと人差し指をオレに向ける。
「犯人このひとです」
全員ギョッとした顔でオレに注目する。
「ばっ、ばっきゃろーおめえ!オレが犯人なわけねえだろ!」
「確保しろ」
刑事は部下たちに指示する。オレは身柄を拘束された。
納得いかねぇ!
「あいつはいま来たばっかだろ?なにがわかんだよ!」
「彼女が犯人だと言ったら事件解決なんだよ。あきらめろ」
「ちがう!オレじゃねぇ!」
オレは手錠をかけられてパトカーで連行された。
取調室に放置されて30分後、刑事がのそのそと現れる。
「オレは無実だ!」
「いーやおまえがやったんだ」
「証拠は?」
「あの子は他人の心が読めるんだよ」
「そんなわけあるか!超能力者かよ!」
「超能力者だ」
刑事の目は本気だ。こいつイカれてんな。
「じゃあオレはどうやって密室を作った?」
「本棚を回転させて隣の部屋に移動したんだろ」
「!?」
「おまえさんヒカリ探偵でエロい妄想をしていたそうだな。それも罪にくわえて欲しいと言っていたぞ」
「・・・ほんとに心が読めんのかよ」
椅子から滑り落ちたオレを刑事は勝ち誇った顔で見つめていた。
あとで知ったがあの女は閃光のようなすばやさで事件を解決する閃光探偵と巷で呼ばれているらしい。
あの女の存在を知っていたら殺人事件なんて起こさなかったのによぉ。
とことん運がねぇぜ。オレは牢獄でひとりうなだれた。




