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バロック!!  作者: 羊蔵
一章 穴あき・インザ・ウルタール
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1/15

1 物語る猫の住み処


 十体の煌びやかな獣が神々のようにそびえ立っている。

 無限に続く聖堂の街並み。空は真っ白な空間。戦いで破壊された地面に、金銀の装具、宝石の欠片。そして水晶の柱が乱立している。

 みな美しい欠片たち。

 そんななか、僕ら人間だけが血にまみれ、這いつくばっている。


 不思議な力で僕らを守ってくれた三人の女の子。

 彼女らは、今、氷のように成長する水晶の柱に取り込まれつつある。

 〈獣〉たち相手に、あんなにも力を振るった〈まんのう町〉も、瓦礫のなかに倒れ、同じく水晶に食われつつあった。

 そして、優しく美しい〈ロッカ〉さん。彼女も力尽きていた。


 僕らを見下ろす巨大な〈獣〉たちが、その力のほんの一部を振るった結果が、これだ。

 どうすればいい?

 僕は手の中の刃を見つめる。

 それは形としては短刀であり、素材としては、琥珀に似た美しい宝石の塊だった。

 〈バロック〉。〈聖堂街の獣〉を倒せる、唯一のもの。


「やめろ、無理だ……」

 〈まんのう町〉が僕と止めた。

「バロックに……意志をこめるんだよ」

 倒れ伏したままのロッカさんは、反対のことを言った。

「……あなたの中の、絶対にゆずれない――」

「何でここに猫がいないんだ?」

 僕はガクガク怯えつつもぶち切れていたので、ロッカさんの言葉を遮ってしまう。

 そのことを申し訳なく感じつつ、やっぱりガクガク震えつつ、けっきょくどうすれば良いんだよ? とも同時に思考しながら、そして、どうしようもなく怒っていた。

 どうしてここに僕の猫がいないんだ?

 だから僕が、短刀に――バロックにこめた意志は一つだった。

「猫を返せ、ウルタールの猫だぞ」

 そうして僕はバロックを振り下ろしたのだった。


 これは僕が振るうバロックの物語だ。

 僕の名はウルタール。

 ウルタールとは土地の名前である。

 またウルタールとは猫の住処のことである。

 だから、これは猫のための物語である。

 僕は僕の猫を取り戻したい。

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