#4 秘密
「君は、どうして、そう——」
言葉を探す表情が苦々しい理由は、消極的なものではないと、本能的にそう感じた。
疲れた顔。ぼさぼさの髪と、露になった額に浮かんだしわで、最初は気がつかなかった。私は傘を片手に、「南くん」はゴミ袋を片手に、深夜一時のコンビニで出会った。「南くん」はまずそうな表情を浮かべる。その時、初めて彼の生々しい感情に触れた気がした。いつも被っていた仮面が外れかけているんだと思った。
ぺこり、と軽く頭を下げて、店の裏に消える。気まずいとはいえ、この時間、この天気でここまで来てなにもせずに帰るというのはかえって気持ちが悪い。レジでまた顔を合わせることになるのはわかりきっていたことなのに。
お疲れさま、と声をかけた。知り合いにこんなに疲れている顔をされたら、何か言ってあげるのが普通だと思った。「南くん」は、私から目をそらしたのだが。
南くんって、いつもお昼どっかに行っちゃうよね。食堂にも教室にも外にもいないんだよね。家帰ってるんじゃない? 自転車で来てるもんね。一緒にお昼食べたいのに、なんか誘えないよね。
女子たちの噂は、なんとなく以前よりは現実味を増している。彼に奢ってもらった日から、気になって目に入るときは「南くん」を観察するようになった。「南くん」は、男の子とはそれなりに話しているが、女の子とは挨拶くらいしかしているところを見かけない。
女性恐怖症。考察するのを避けているのに、その言葉が頭から離れない。人よけのためと考えれば、一番現実的な薬指の指輪。私に対してとった不思議な態度。
それからたまに、意識して深夜のコンビニに寄るようになった。「南くん」は翌日が一限の授業でもコンビニにいたし、授業にもちゃんと来ていた。
どうしても気になってしまう。今現実に目の前に「南くん」がいるからこそ、ミステリーになり得ていることの一つ。昼休みの彼を追いかけてみることにした。
「南くん」は自転車に乗って、急ぎ気味でどこかへ向かった。私も自転車で追いかけると、向かっているのはあのコンビニの方向だった。自転車を停めて店内へ消えた彼を待っている形になってしまう。しまった、これじゃあストーカーだ。どうにか言い訳を考えているうちに、「南くん」は出てきてしまう。
たくさん入ったビニール袋をぶら下げた手が握られ、その指に輝く指輪がきらりと光る。「南くん」は、頭に手をやり、眉をひそめた。




