少女の名と、託された色
泉が完全に色を取り戻し、
町に柔らかな光が満ちていく。
その中で——
少女は彩の前に立っていた。
瞳には、もう灰色はない。
淡い桃色が、揺れている。
少女は胸に手を当て、
少し震える声で言った。
「……私、名前……
まだ言ってなかったよね。」
彩は優しく微笑む。
「うん。
あなたの名前、教えてほしい。」
少女は一度だけ深呼吸し、
光の泉を背にして言った。
「……私の名前は——
リナ。」
ミュレが嬉しそうに跳ねる。
「リナちゃん!
かわいい名前だよ〜!」
レイアも静かに頷く。
「似合ってる。
お前の色にも。」
リナは少し照れたように笑い、
彩の手をそっと握った。
「彩さん……
私、あなたに……お願いがあるの。」
彩はリナの手を包み込む。
「うん。
なんでも言って。」
リナは瞳を伏せ、
胸の奥から言葉を絞り出した。
「……私の“色”を……
もっと強くしてほしい。」
彩は驚いた。
「リナの色……?」
リナは頷く。
「私の色は……桃色。
優しさとか、愛情の色だって……
あなたが教えてくれた。」
リナの瞳が揺れる。
「でも……
私はまだ、自分の色を信じられない。
大切な人を失って……
自分の色が“弱い”って思ってた。」
彩の胸が痛む。
巫女装束が淡いピンクに揺れる。
「リナ……
あなたの色は弱くなんかないよ。」
リナは首を振った。
「ううん……
彩さんの色を見たら分かったの。
私はまだ……
“誰かを守れる色”になれてない。」
彩はそっとリナの肩に手を置いた。
「……だから、私に託したいんだね。
あなたの色を……強くすること。」
リナは涙をこぼしながら頷いた。
「彩さん……
あなたは、私の色を目覚めさせてくれた。
だから……
どうか、この町の人たちの色も……
世界の色も……
全部、取り戻してほしい。」
彩の胸元の“核の紋”が輝く。
どくん。
どくん。
彩はリナの手を握り返した。
「……うん。
リナの願い、ちゃんと受け取った。」
巫女装束がピンクとラベンダーの光を放つ。
「あなたの色は、もう弱くない。
だって……
“誰かのために願える色”は、
本当に強い色だから。」
リナは涙を拭き、
小さく笑った。
「……ありがとう、彩さん。
あなたの旅が……
どうか、色で満ちますように。」
レイアが彩の隣に立つ。
「彩。
行こう。
次の泉へ。」
彩はリナの手を離し、
優しく微笑んだ。
「リナ。
あなたの色は……
私が必ず守るよ。」
リナの桃色の瞳が、
光の泉に照らされて輝いた。
少女リナの願いは、
彩の旅に新しい意味を与えた。
“人の色を守る”という使命を。




