色を携えて、灰の世界へ
境界層の光が静かに揺れていた。
淡いパステルの風が吹き、彩の巫女装束がふわりと揺れる。
レイアはその光景を、まるで夢を見るように見つめていた。
「……ここは、綺麗だな。」
「うん。
でも……私たちが戻らなきゃいけないのは、灰色の世界。」
彩は胸に手を当てた。
装束は淡いラベンダーとピンクの混ざった光を帯びている。
ミュレが彩の肩に乗り、元気よく言った。
「彩ちゃん、準備できてる?
いよいよ“色を取り戻す旅”の始まりだよ!」
リュミエは静かに頷く。
「境界層で魔力は安定しました。
あなたなら、もう無彩獣にも対抗できます。」
ヴェイルが彩の背に手をかざす。
「境界の子よ。
あなたの色は、世界を照らす灯火。
行きなさい。
灰色の大地に、色を取り戻すために。」
彩は深く息を吸った。
「……行く。
レイアと一緒に。」
レイアは剣を握り、静かに頷いた。
「俺も行く。
お前の色が……世界を変えるなら。
その隣に立つ。」
その言葉に、彩の装束が淡いピンクに揺れた。
“嬉しい”という感情がそのまま色になって現れる。
ミュレがくるくる回りながら叫ぶ。
「ほらほら!彩ちゃん照れてる〜!」
リュミエが咳払いする。
「……はしゃぎすぎです、ミュレ。」
ヴェイルは静かに微笑んだ。
「では、境界を開こう。」
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境界層からの帰還
ヴェイルが指先で空をなぞると、
ラベンダーの光が裂け目となって広がった。
その向こうには——
灰色の大地。
色を失った世界。
レイアは一歩前に出た。
「……戻るのか。」
「うん。でも……」
彩はレイアの手をそっと握った。
「今度は、色を取り戻すために戻るんだよ。」
レイアは驚いたように彩を見たが、
すぐに柔らかく微笑んだ。
「……ああ。
お前の色があれば、きっとできる。」
その瞬間、
レイアの瞳に淡い青がふわりと灯った。
彩の胸が熱くなる。
装束も淡いブルーを帯びて揺れた。
ミュレが嬉しそうに叫ぶ。
「レイアくんの色、また強くなったよ!」
リュミエが静かに告げる。
「彩の色は、人の心にも灯る。
あなたたち二人なら、きっと世界を変えられる。」
ヴェイルが最後に言った。
「行きなさい。
境界の巫女と、色を取り戻す剣士よ。」
旅立ち
彩とレイアは境界の裂け目をくぐった。
足元に広がるのは、
相変わらず灰色の大地。
でも——
彩の足元だけ、淡いピンクの光が揺れていた。
レイアが静かに言う。
「……行こう、彩。」
彩は頷いた。
「うん。
世界に色を取り戻す旅、始めよう。」
二人は並んで歩き出した。
灰色の世界に、
小さな色の灯火が揺れながら。
境界の巫女・彩と、灰色の剣士レイア。
二人の旅が、今始まった。




