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プロローグ
言の葉には力が宿る
その力は、万象を操る魔法使いだけのものではない
それは遍く全ての人に与えられた力である
優しき言葉は子を育み
力強き言葉は明日への活力となる
それらはすなわち祝福である
恨みの言葉は世界を歪ませ
嫌悪の言葉は心を蝕む
それらはすなわち呪詛である
そうあれかしと願い
そうあれかしと言の葉を紡げば
その力はいつか岩をも穿つ
『力の差こそあれ、人は皆言霊が使えるんだよ』
そう言って、言葉と力の使い方を言い聞かせた、優しい先生を思い出す。
──ならば
──そうであるならば
言葉を失った自分には、何が成せるのだろうか。
胸を締め付ける焦燥、無力感。
そんな負の思いが溢れそうになった瞬間、木の扉を叩く音が響き渡った。




