真祖を盗み出す方法
王妃の衝撃的な姿を見た後の昼飯、俺とアセナはまだ勇者とルフェイと共に居た。
前に言った昼飯ぐらいっと言うのを今実行されているのだ。
でも王妃の姿を見た後だからか、久々に食欲がない。
「いや、それで食欲がないと言われましても……」
ルフェイがツッコミを入れるが本当にこれでも食欲がないのだよ。
今日の昼は特盛ペペロンチーノ。絶妙な辛味とうま味が大変美味しゅうございました。
そして俺は勇者に聞く。
「それでユウガ、あの王妃の状態は何だ。どう見ても普通じゃない」
そう言うと勇者とルフェイは顔を見合わせて言う。
そして勇者の方から口に出した。
「秘密にしてもらえるって約束できる?」
「残念ながらアセナの他に親しい間柄はいなくてな、教える相手はユウガぐらいしかない」
かなり真面目な話になりそうだったので話が始まる前になごませようと思って言ってみた。
すると言わないと安心したのか、勇者は少しほっとした表情を見せてから言った。
「あれはね、呪いだよ」
「呪い?」
「うん。さっき王城で大昔の魔物を封じ込めたって話をしたよね?」
「ああ、その話か」
「その……その魔物を封じ込める際に色んな種族は様々な形で封印に成功したんだけど、人魚族だけはとても大きな代償を支払わないといけなかったんだ」
「代償……」
予想通り重たい話のようだ。
アセナの力を封じ込めていたのはおそらくあの球なんだろうが、それ以外にもミイラの腕とか鎖とかあったし、おそらくそれと同様の事をしたのだろう。
「その代償は自分自身の中にその魔物を封じ込めるって言うものだったらしい」
「は、え、って事はちょっと待てよ。つまりその魔物は……」
「……今も歴代女王達の体内で封印されている。しかも封印中は魔力を封印の方に回さないといけないから、本人が魔法を使うどころか生命維持ですら難しい。しかも今の女王様は元々魔力が低い方だったから……」
俺は色んな意味で頭を抱え込むしかなかった。
つまりだ、つまり今回の鮫の真祖は王妃の身体の中に居るという事だ。
この状況でどうやって真祖の封印を解けって言うんだ?
俺は頭を抱えながらも勇者に質問する。
「その状態どうにか出来ねぇの?」
「現状できるのは人魚姫にその魔物を移す事だけ、人魚姫に断られた1番の理由がこれ。次は自分の番だから動けないし、移した後は戦力になる事も出来ないからって」
「と言うか今までどうやって移してきたって言うんだ?移すって事は取りだす事が可能って事じゃないのか?それなら別に歴代女王じゃなくてもなんかこう、都合のいい道具はないのか?」
そう言うと勇者は首を横に振って言葉を続ける。
「移動するのは死んだ時だけ。その時に自然と次の女王、つまり人魚姫の身体の中に移動する。誰かが手術で取り出してる訳じゃないし、魔法も強力過ぎて封印したまま取り出すのはほぼ不可能。この呪いが解けるのは歴代女王が死んだ時だけって言われてる。しかもその魔物復活と一緒にね」
………………これが理不尽って奴か。
こんな状況でどうやって真祖を解放しろって?
殺すしかないのか?今の王妃と人魚姫を殺して?
……いくら短絡的とはいえ、そんな事は出来るだけしたくない。
そりゃ散々今まで魔物を殺したり、ドワーフ達を殺したりしましたよ?魔物はともかくドワーフの方は力加減を間違ってだし、目的のために何でも殺すって言うのはちょっと違う。
所詮俺は信念のないぐだぐだ野郎だ。
怖い事やできない事からは逃げるし、手を出したくもない。
それに俺にはまだ人を殺したくないという感情ぐらい持ち合わせているつもりだ。
目的のために誰かを無感情に殺せるほど、腐っちゃいない。
となると今の俺に出来る事で、どうやったら殺さずに真祖だけを取り出す事が出来るのか思考するしかない。
俺のスキルは『捕食』に『変質』、『身体強化』『高速再生』の4つのみ。
身体強化と高速再生は俺自身にしか使えないのでこれは没。
となると捕食と変質だけでどうにかするしかない。
どうすればいい?王妃様を1度捕食した後真祖だけを取り出して吐き出せるのか?
いや、別腹でなら出来るが完全に捕食した場合真祖の解放も失敗しそうだし、結局王妃を助けるという事にはならない。
最悪人魚姫に呪いは移らなかったとしても失敗は失敗だ。
となると変質だけで手術を行えというのか?
変質は触れたものの形状を変えたり不純物を取り除く事が出来る。
………………不純物?
変質を使って王妃の中にある真祖を不純物として取り出す事は可能なのか?
俺の変質は食った物を性質や特性をコピーする能力。
そして変質は本当に自分自身を形状を変えたり不純物を取り除くだけの能力なのか?
もし仮にこの能力を他者に利用する事が出来れば?
俺の身体を変質させる時、その能力が本当に俺に必要な物かどうか判別してから取り込んでいるはず。
これを王妃の身体に使用するとして、王妃の体内に必要ないものとして分離できれば!!
「えっと……タツキ?」
「あ、いやごめん。この世の理不尽さにちょっと嘆いてた」
「そ、そうか。そうだよな……理不尽だよな……」
俺が静かに俯いている事に適当に返したが一応の納得はしてもらえたらしい。
ただルフェイに関しては怪しんでいる感じがするけれど。
仮にこれが成功するとして問題はタイムリミット。
俺達はあと2週間ちょっとはこの島で暮らす事になるし、かといって王妃人身が今にも死にそうな感じだ。
この2つのタイムリミットを考えて動く必要がある。
「王妃ってあとどれぐらい持ちそうなんだ?」
「詳しくは知らないけど……人魚姫の様子を見る限りもう長くはないんじゃないかな?失礼だとは思うけど、そうでなきゃ人魚姫もああは言わないだろうし」
つまりもうすぐ死にそうって事ね。
よし。人助けは趣味じゃないが、王妃が死んで状況がややこしくなる事も面倒だ。
出来るだけ早く行動しよう。
-
大雑把に考えながらも夜、俺とアセナはポータルを使って帰ってきた。
ポールさんに出迎えられて、「疲れたから」と言って2人で寝室に戻る。
俺はスマホを取り出した。そしてろくに使わない通話機能を使って連絡する。
少し待つだろうかと考えていると、1コールですぐに出た。
『はいはーい!こちらマコトです!!』
「うっせぇぞ。電話で大声出すな」
『あ~ごめんごめん。初めて君から電話がかかってきたから嬉しくて、それでもう鮫ちゃんは助けれた?』
「数日後に実行予定だ。ただその前に確認しておきたい事がある」
『ん?お城の地図が欲しいの?それとも王様やお姫様の戦闘力?』
「俺の『変質』について聞いておきたい。俺の『変質』で真祖だけを王妃から取り出す事は可能か」
そう聞くとマコトは少し考える様に間が空いた。
そしてマコトは言う。
『取り出すだけなら……可能だよ。でもその後に関しては何ともな……』
「どういう事だ」
『えっと、簡単に言うと現在の王妃の身体に起こっている事は彼女の中で真祖が暴れてるのが原因って事。その理由は自分が復活するだけの魔力を欲してるから』
「真祖の方も魔力不足って事か。で、そのために必要な魔力を歴代王妃から分捕ってると」
『そうそう。それに呪いって君達は言っていたけど、あれだって鮫ちゃんを封じた最初の人魚姫が原因何だからあんまり呪い呪いって言ってほしくないんだよね~。自分の身体に封じ込めた業とでも言うべきものなんだからさ。だから仮にタツキが取り出す事が出来たとしても復活するまではその連鎖は止められないから気を付けてね?』
なる程、つまりこういう訳だ。
仮に俺が『変質』を使った手術で真祖を取り出す事に成功したとしても復活は出来ない。そのためには大量の魔力が必要でどこからか供給する必要があると。そしてそれに失敗したら人魚姫の体内の戻るだけ、か。
となると俺自身の魔力を食わせる方が楽か?
普段物理攻撃ばっかりで魔法を使った攻撃なんてろくにしないし、魔法使うよりも身体の1部を変質させて毒とかを吐き出す類の魔物の力を使った方が個人的に制御しやすいからな。
と言うか俺ろくに魔力使ってなくね?
ファンタジー世界なのに魔法の力をろくに使ってないとか矛盾じゃね?
「まぁ魔力の方はどうにかなるだろうさ。マコトから見て俺の魔力ってどれぐらいある?」
『そうだね……うん。分かんない』
「は?」
『いやだってさ、タツキの場合魔力を全部『捕食』で溜め込んでるみたいだからパッと見ただけじゃ分かんないんだよ。全部タツキの言う別腹に溜め込んでるでしょ?』
「いや、そこは神様らしくスキルなんざ関係ねぇ!みたいな感じで色々できんじゃないの?」
『出来なくはないけど~面倒なんだよ~』
「まぁとにかく分かった。一応『変質』で取り出せるって分かったからそれだけでいい。ありがとな」
『!うん!!また何か聞きたい事があったらいつでも相談してね!!』
「おう。それじゃぁな」
『いつでもいいからね!本当にいつでも――』
電話を切ってアセナと向き合う。
「話聞こえてたよな」
「ばっちり。でもいつ動く?」
「少し準備を整えたい。アセナとしてはあの王妃はいつまで生きれそうだ?」
「多分もって5日、もたなかったら3日ぐらい?」
「なら明日動くぞ。問題は内部の警備だな」
マップ機能を使って兵士の動きを確認したが流石王城、兵士がわんさかだ。
いや、多分ドワーフの国でも似たような感じだったのかも知れないが、あの時は穴掘って短期決戦だったからあんまり兵士がたくさんいるって感じはしなかったんだよな。
でも今回は穴掘って移動できるような感じじゃないし、堂々と真正面からぶつかるのは流石に悪手だ。
となると兵士達をどこかに集める必要があるのだが……
そう思っているとアセナは俺の袖を引っ張った。
そして俺をじっと見ながら自信満々に言う。
「私が引き付ける。だからタツキは妹を連れだしてきて」
「簡単に言うがどうするつもりだ?それにここでバレたら新婚旅行どころじゃなくなるぞ。と言うか帰れるかどうかも分かんないし」
このウミガメの気まぐれで海の中だったり海面だったりする。
仮に水中で逃げる様な事になった場合逃げきれる自信はない。
でもアセナは自信満々に言う。
「私は狼の真祖。そこら辺の魔物とは大違い。大丈夫、誰にもばれないように出来るから」
「……新婚旅行は続けられるんだろうな?」
「ん。私もこの旅行は楽しいし、邪魔されたくない。だから久しぶりにちょっとだけ本気出す」
そう言いながら唇を舐める姿は妖艶で、つい引き込まれる。
そう言えばそうだった。アセナも真祖、俺に守られるだけのか弱い女の子ではない。
俺はアセナの頭を撫でながら信頼を込めていった。
「なら頼む。できるだけ多く引き付けてくれ」
「任された。そしてお互いの士気向上のために愛し合う事を希望します」
そう言ってアセナはあおむけで腹を出しながら俺の事を誘惑してくる。
お互いの士気向上のためなら仕方ないと思って俺は素直に俺の欲望のままにアセナに襲うのだった。




