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閑話 それぞれの道

 深夜2時。私、ノーマ・ホワイトフォレストはハルル姫を連れて大国会議用の席に座る。

 通信用魔道具を少しいじり、ハルル姫も参加できるように調整した後会議は始まった。

 まず私に声をかけてきたのはエルフの女王だ。ここでは天帝と呼ばれている。


『それでは今日もまたあの男がどのような事をしているか聞こうか。北王』

「…………聞かぬ方が幸せな事もある」

『また何か仕出かしたのかあの男は。もう並の事では驚かんぞ』


 そう言うのはドワーフ王。ここでは地王と呼ばれている。


「またタツキ殿がとんでもない事をした。4体の悪魔を召喚した」

『4体の悪魔……面倒な事を。しかしそれぐらいなら問題ないと朕は思うのだが?』

「召喚された悪魔は赤き魔王と同等だそうだ。獅子の真祖様が言っていたのだから間違いない」


 そう言うと事情の知らない他の王達は驚きのあまりか黙ってしまった。

 しばらくの静寂の中、確認するように海王、ドン・セフィロ・トータスがハルル姫に聞く。


『ハルルよ、その光景もお前は見たのか』

「はい。タツキ様はそう言った事を隠して行うつもりは一切ないように思えます。いえ、むしろ隠さずに力を誇示する事こそが目的であると思えるほどです。その結果、勇者ユウガ様を含む勇者パーティー全員と、ノーマ様の近衛兵が見届けております」

『そうか……ではそれを見たお前はどのように思う』

「敵対するのは愚策としか言いようがありません。現在タツキ様が明確に敵と言っているのは教会の過激派組織の事であり、他の者達の事は敵とすら認識していません。そのおかげで私もまだ生きています」


 その様にハルル姫が言うと海王は頷きながら決断を下す。


『ではセフィロ・トータスは、いや、我々人魚族はタツキ殿と敵対する行為は一切しないものとする。この場で話し合うのはあくまでも危険を回避するためだ』

『なにを言うか海王よ!!奴は全ての真祖を解放しただけではなく、魔王に匹敵する悪魔すら呼び出した、まさにこの世に終わりをもたらす者!それを放っておくなど言語道断である!!』

『しかし天帝よ。真祖だけではなく魔王に匹敵する悪魔5体に勝利する事が出来るとでも?それにその話を聞いて納得した。深海の奥底に縄張りを張っている悪魔の気配が消えたと報告があった。ハルルの言う事は何も間違いではないだろう』

『しかしだな!その脅威があのタツキとか言う小僧の元に、一点に集まっているのだぞ!調停者である龍皇は一体何をしている!!朕は誠に遺憾いかんである!!』


 天帝は怒りのあまり少々おかしくなっている。

 確かに天帝の言う言葉も一理ある。タツキ殿の元には大きな力があまりにも集まり過ぎている。

 それを危険と思わない者は居まい。

 だが止めるとしても我々は――


『遅すぎたのだな、我々は』


 そう呟いたのは法王である。


『我々の行動はあまりにも遅すぎた。そしてこの中で最も愚かの行動をしているのはわしであろう。教会を敵として見ているのであれば儂に未来はない。いや、元々この老いぼれに未来など短い物であろうが、孫の、ヒジリの未来を奪った儂は……何と愚かだった事か……』


 法王はうつむいてただ後悔を繰り返すばかりである。

 法王は人と人の争いを拒まない故に中立派として温厚派や過激派の間に立ち、神の教えを真摯に伝えてきたのだ。

 しかしヒジリ様は既にタツキ殿によって声を失い、殺意に当てられたせいか、現在客室の片隅で怯えているという恐慌状態にまでなってしまった。

 今勇者がヒジリ様を支えているが……立ち直れる日が来るのかどうか分からない。


『タツキ殿は教会を敵として見ているのだな?』

「より正確には教会の過激派です。実際勇者パーティーのジャンヌ殿、ジョージ殿に温厚派や中立派などに戦う前に逃げるよう言っておりました」

『で、では教会に未来はあると?』

「タツキ殿と敵対せず、大人しくすると言うのであれば一縷いちるの望みはあるかと」


 タツキ殿は短絡的ではあるが無差別に殺すほど無慈悲でもない。

 そう言うと法王は言う。


『では今度そちらに行ってもよろしいだろうか?タツキ殿に直接話をしたい』

「そ、それは……とても光栄な話なのですが、もうすぐトンネル工事が終わります。工事が終わり、安全を確認したのち、タツキ殿はおそらく狐の真祖を解放しに行くと思われます」

『では、今さら準備しても遅いか』

「そのように思われます」


 タツキ殿のおかげで出来たトンネルと言う交通網。今後は我々の手だけで行う事が出来る様にしてはいるがほんの少し不安もある。

 異世界の技術と言う事もあり、手探りである部分も多かったがほとんどがアスクレピオス様、ジャック殿のおかげと言えた。

 そして我々は真祖様達と共に生きる道を選択した。

 後戻りはできない。


『そのタツキ様は今度こちらに来るのだな』


 私以上に口数が少ない男、獣王が珍しく口を開いた。

 彼はこの大国会議でも参加しているだけっという状態が強く、一言も発せずに終わる事もしよくあるほどだ。

 更に彼が誰かに様と付ける事すら初めて聞く。

 私は頷きながら肯定する。


「その様だ。タツキ殿はそちらに向かう」

『では伝えておいて欲しい。我々獣人は敵対する意思はなく、むしろ歓迎すると』

『どう言うつもりだ獣王。朕たちを裏切るつもりか』


 強く天帝が縦横に聞くが獣王は薄く笑うと私に告げた。


『ノーマ殿。タツキ様にはぜひ我が国に立ち寄る様お伝えください。特にアセナ様と共に来ていただけると幸いですっと』

「アセナ様、狼の真祖様にですね。承知しました」

『朕に答えぬか獣王!!獣風情が!!』

『その獣に敗北するのは貴様だ天帝。いつまでも見下ろすばかりで、隣の木々がどれほど大きくなったのか見ていないのだろう。気が付けば追い越されていた、などと言う状態やもしれん』


 獣王は天帝を見ながらわらっている。

 天帝が再び口を開こうとする前に地王が言う。


『我も手を引く。これ以上は無駄だ』

『このモグラめ!貴様も怖気付いだか!』

『これ以上の戦闘行為は無駄としか言いようがない。殺された兵は無念ではあるが、これ以上は犠牲を出すだけで無駄に終わる!』

『武力だけはあると思っておったのに、貴様は――』

『だがこのまま終わるつもりはない。魔石の純度100%を造り出したのちに真祖の再封印を計る。天帝よ、我らの長所は寿命の長さだ。我らの一生が終える前に真祖を1体だけでも封印できるようにしばし待て。真祖は封印しなければならない』


 そう強く天帝を説得する地王の言葉に天帝は黙った。

 そしてしばし考えると渋々と言う感じで頷く。


『…………よかろう。ではもう朕と地王はこれから先も真祖の封印を目指す。法王はどうする』

『儂は……これ以上の犠牲は払えん。もう既に心は砕けた。後はただ被害を最小限に抑える事に尽力を尽くす』

『では法王、我が国に来い。タツキ様と面会する機会ぐらいは設けられるやもしれん』

『では頼む。儂の間違いで他の信者達を巻き込む訳にはいかぬ。少しでも被害を抑える事が出来るのであればなんでもしよう』


 こうして各国の動きはおおまかに決まった。


 地王、天帝は真祖封印を諦めず。

 私、海王は怒りの矛先が向かない様に動き。

 法王は被害を抑えるために動く事となった。

 唯一獣王は既にタツキ殿に対して何らかの敬意を抱いている様で、怒りに触れない様にするどころか、喜んで協力するだろう。


 こうして今回の会議は終えた。

 私は大きく息を吐きだすと、ハルル姫も緊張した面持ちからようやく少し緊張が抜けたか。


「ハルル姫よ、今後はどのようにする」

「私はこれから先も勇者と共に行動しながらタツキ様を見ていくつもりです。勇者には今後は意地でもタツキ様と行動を共にするべきだと強く進言しておきます」

「そうか。そちらも大変そうだな」

「はい。ノーマ様もお気をつけて」


 こうして会議は終わった。

 この判断が今後どう転ぶかは誰にも分からない。

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