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報酬決定 / 新たな依頼 / 遊覧飛行

今話から冒険者ギルドを冒険者組合に変更させて頂きます。

それに伴いまして、タイトルの方を変更させていただきます。




 俺は、小鳥のさえずりで目を覚ました。 里奈先輩は俺の隣ですやすやと寝息をたてながら寝ている。

「もう朝か…今何時だろ…」

 ベッド脇のサイドテーブルに置いてあるスマホに手を伸ばす。電源ボタンを押して時間を確認する。

「まだ5時半か…。 二度寝は…出来そうにないな」

 隣で寝ている里奈を見ながら苦笑する。

「先輩は、朝が苦手だからな…。 俺が起こしてあげないといけないけど…まだいいか」

 音をたてないようにベッドから抜け出し、ずれかかっているブランケットを里奈先輩へかけ直した。

かけ直す時に先輩のパジャマから鎖骨と二つの双丘が見えそうになったが…何とか目を逸らすことに成功した。

「うっ…先輩の胸が見えそう…。 昨日は直視できたのにな…まぁいい…着替えるか…」

 スマホを操作して、新品の戦闘服を出す。 ジャージの下を脱いで、戦闘服の下を穿いてベルトを締める。

「先輩の分も出しておくか…」

 ちなみに、昨日来ていた戦闘服は、新しい戦闘服を出した瞬間に光の粒子となって消えた。

「これも消えるのかよ…」

 驚きつつも、俺は水筒を召喚し部屋に設置されている桶に水を張った。バシャバシャと顔を洗い、昨日先輩が出してくれたタオルで顔をぬぐう。後ろのベッドで物音がした。

「あっ…起きちゃった?」

 ふと、ベッドを振り返る。先輩がタオルケットを片手で握りながら、もう片方の手で目をこすっていた。


「おはよう、里奈。よく眠れた?」

「…おはよう…時雨…」

「相変わらず眠そうだね。ほら起きて顔を洗いなよ」

「うん…そうする…」

 先輩は、おぼつかない足取りでベッドを降りて、桶の前まで来る。

「この水もう使った?」

「使ったよ。里奈は、桶と洗顔用具出さないの?」

「忘れてた…。 面倒くさいなぁ…」

「ちゃんと洗わないとダメなんじゃないの?」

「…そうだけどさ…」

「女将さんがお湯持ってくるまで待つかい?」

 先輩は首を縦に振った。

「その間に出しとこ…」

 

先輩は、起きるときに持ったスマホを操作して、自分が使っていた洗顔フォームを出した。その後、パジャマの上を脱いでブラジャーを換え、その上からキャミソールを着る。 先輩が着替えている間は、俺は廊下で待機している。 5分くらい待っただろうか…。中から、入っていいよと声がした。部屋に入り俺は、護身用のUSPとM92F(ベレッタ)をホルスター付きで召喚する。召喚したら、セーフティを解除したUSPにマガジンを装填し、スライドを引き初弾を薬室に送り込む。そして、セーフティをかけてホルスターに戻して太ももに括り付ける。里奈のM92Fも同じようにして、ホルスターにしまう。先輩の格好は、キャミソールと戦闘服の下を穿いている。ブーツは、まだ紐を結んでいない。

「よし…これでいいな…。 M4とMP5A5は、後からでいいな。 里奈、顔洗い終わったかい?」

「終わったよ」

 里奈は、タオルで顔を拭いた。

「髪どうするの?」

「昨日と同じようにポニーテールにするよ…」

 そういって里奈は、自分の髪をまとめて結いゴムで結った。

「やっぱりさ…里奈は可愛いよね…」

「突然どうしたの?」

「いや…やっぱ言えない」

「言ってくれないの?」

「うん…無理かな」

「でも、言いだそうとした言葉は、いつかちゃんと聞けるよね?」

「その時がきたらちゃんと言うからさ…待ってて」

「言質取ったからね。 そろそろ7時になるよ。下に行こ」

「そうだね。 あっ、桶持ってかないと…」

「銃はどうするの?」

「昨日と同じように太もものホルスターに付けてね。 弾丸は装填してあるし、セーフティもかけてるから」

「ありがと」

 


俺たちは下に降り、食堂へ行く。

食堂は、まだ人の数が少なかったので、すぐに朝食が出てきた。メニューは、バターロールのようなものとスクランブルエッグとキャベツみたいに細切りにされている葉物のスープだった。何気に、異世界で初めての食事である。

『いただきます』

 宿の朝食は俺にとっては、少々物足りなかったが素朴な味がした。

『ごちそうさまでした』

 自分たちが使った食器を返却して、部屋に戻る。

「さてと、組合に行こうか」

 戦闘服の上を羽織り、タクティカルベストを着けて袖をまくる。M4A1とMP5A5を召喚し、槓桿を引いて初弾を薬室に装填する。セーフティをかけ、スリングベルトで体にかける。タクティカルベストには、M4のマガジンを5個召喚して、それぞれのポーチにしまう。

「準備完了っと…。 里奈は終わった?」

「終わったよ」

 先輩もタクティカルベストにMP5A1のマガジンを5個しまいながら答える。

 現在時刻は7時50分。部屋の鍵を閉めて下に降りる。女将さんにギルドに行ってきますと告げてギルドへ向かう。ギルドは8時に開くみたいなのでちょうど良かったと思う。

「報酬はどうする?」

「何でもいいよ…」

 


宿から少し歩いたところに冒険者組合の建物はある。 その前には、アパッチで強行着陸をしたロータリーが存在する。

「さて…入りますか…」

 里奈は頷いた。ちなみに、俺たちは完全装備だ。少しでも変なことをする奴がいたら、すぐに銃を向けられる。ただし…撃てるかどうかはわからないが…。

 冒険者組合のドアを開け、カウンターへ向かう。中には、あいたばかりだというのに、多くの冒険者がいた。

「おいあいつら、昨日豪炎龍を討伐したやつらだろ」

「嘘だろ…若すぎないか?」

「いや、本当らしい…。 昨日の夜に回収部隊に参加した奴から聞いたんだ。豪炎龍は…首が千切れて、胴体は…原型が残って無かったそうだ…」

「マジかよ…どんな魔法を使ったらそうなるんだよ」

「いや、魔法は一切使っていなかったそうだ」

 ギルド内は俺たちの話で盛り上がっていた。

「おはようございます。 報酬の交渉にきました」

「あ、おはようございます。 こちらへどうぞ」

 俺たちは、受付嬢の案内でギルドマスターの執務室に行くことになった。受付嬢は、執務室のドアをノックする。


「失礼します。 シグレ君とリナさんがいらっしゃいました」

「どうぞ」

『失礼します』

「おはよう。昨日はご苦労だったね。さて…報酬はどうしようか?」

「おはようございます。 出来れば…これを昇格試験にしてもらえないでしょうか?」

「ハハハ…豪炎龍討伐の任務報酬でランクを上げてほしいと言われるのは、初めてだな…」

「無理ならば、そちらが決めた報酬でも構いませんよ」

「いや…問題ないだろう。 だが…ほかの冒険者がどう出るかだな」

「ここで、ランクアップの措置を行えばいいのでは?」

「そうだな…よし、今この部屋で行おう」

「ありがとうございます」

「じゃあ、二人とも首に下げているタグを渡してくれ」

 俺たちは、首に下げているドッグタグを外して、ギルドマスターに渡す。ギルドマスターはこなれた手つきで、ブロンズのドッグタグに、魔法で刻印している。

 (魔法にそんな使い方あるのかよ…)

 あっという間に、二人分のブロンズのドッグタグが仕上がる。

「これでいいね。 昇格おめでとう!」

『ありがとうございます』

「それと、本来の報酬も渡そう。 金貨15枚と銀貨40枚だ。 これは、豪炎龍本体の買値だよ」

「ありがとうございます」

 俺は、受け取った買取金をポーチにしまう。入りきらなかった分は里奈先輩のポーチに入れさせてもらった。

「それでは失礼します」

 俺たちは立ち上がって頭を下げる。


「そうだ…君たちはこのままクエストを受けるのかい?」

「良いものがあったら受けるつもりです」

「なら…ギルドマスターからの依頼として受けてほしいクエストがあるのだがいいかい?」

「内容によります」

「単刀直入に言う。 盗賊共を壊滅して欲しい…。 そして近くの施設に捕らわれている人々を助け出してもらいたい」

「壊滅と救出ですか…何故です?」

「この町には長い間、盗賊がたむろしている地区があるんだ。 だからその地区にいる盗賊を壊滅させてほしい。 以前にもこの依頼を冒険者に出したんだが…全滅したんだ…」

「2人でですか?」

「できればな。だが無理ならば、冒険者たちにも依頼を出す」

「分かりました…受けましょう。 ですが…2つ条件があります」

「条件を聞こう。 言ってくれ」

「1つは、この情報を流さないこと。 もう1つは、ボスの首を持ってこなくても何も言わないこと。この2つが条件です」

「情報は絶対に流さない。だが、ボスの首がないと確認ができない…」

「首が残らない可能性があるんですよ…」

 俺は、唇の右端を吊り上げる。

「…君たちは、何をするつもりなんだ…」

「簡単なことです。空から爆弾というものを落とします」

「爆弾? それはなんなのだ?」

「爆裂魔法とでも思ってください。それと、盗賊どもが全員集まる時間と人々が捕らわれている場所はわかりますか? 」

「あ、あぁ…わかっている。 奴らは毎週水曜日に全員揃って会を開く。 その場所はここだ」

 ギルドマスターは俺に、地図を見せた。

「それだけあれば十分です。 この地図は貰っても構いませんか?」

「構わない。 それとこれが依頼書だ」

 ギルドマスターは、自分の執務机から1枚の契約書を取り出して俺に渡した。

「それでは、失礼します」

 俺たちは、ギルドマスターの執務室を出て、カウンターへ向かう。

「クエストの契約をお願いします」

 先ほど貰った依頼書をカウンターに提出する。 相変わらず騒がしいギルドだ…。 俺は心の中でつぶやいた。

「この依頼を受けるんですか?」

 俺は小声で受付嬢に話す。

「この依頼の事は他言無用で頼みます」

「わ、わかりました…。 頑張ってください」

「あ、それと…ギルドを立ち上げたいのでですがどうすれば?」

「もう、ギルドをお作りになるんですか?」

「ええ…まぁ」

「分かりました。 ではこの書類に記入をお願いします」

 受付嬢は、手元にあるファイルからギルド申請用の書類を出して、渡してきた。

「登録料は金貨5枚です。 ギルドのルールはこれをお読みください。

 俺は金貨5枚を受付嬢に渡して、説明の紙を受け取る。

「最後にギルド名を決めてください」

「PMCでお願いします」

 PMC…private military company。民間軍事会社という、そのままの名前だ。

「これで、登録は終了です」

「ありがとうございます」


「おい坊主、次は何を受けるんだ?」

 ジアンだ。

「すまないが教えられない」

「そうか…まぁ頑張れよ」

「ありがとう」



 組合を出て、宿に戻る。

「ねぇ…時雨? 本当にその依頼受けるの?」

「もう受けてしまったからね…」

 里奈先輩は、頭を下げる。

「それに策は考えてるよ。 ここでは、教えられないから王都の外に行こう」

「うん…」

 フロントの女将さんに、2日ほどクエストで戻らないことを伝え外に出る。

「さて…昨日アパッチを出した場所に行こうか」

「車で?」

「その方がいいね」

 スマホをいじって、陸上自衛隊の73式小型トラック《パジェロ》を召喚する。

「午前中だけど、人通り少ないんだな…」

「早く行こうよ。 怪しまれるよ」

「そうだな」

 ドアを開けシートに座り、シートベルトを着けエンジンをかける。

パジェロは軽快に走っていく。 数分で、アパッチを出した場所に着く。

「それじゃあ…策を話そうか…」

 先輩は俺を目を見つめている。

「戦闘爆撃機による…爆撃作戦だよ」

「爆撃…大勢の盗賊を殺害することになるね」

「これは…仕方がないことなのかな…」



 俺たちは、死とは関係のない生活をもとの世界で送っていた。 確かに、殺人事件や紛争などのニュースは度々流れはしていたが、それでも人を殺害するという事は本当ならば…できないのである。 だが…ここではどうだろう。 この世界では、常に死が付きまとう。 森に入れば魔物に殺されるかもしれない。 街道を歩いていれば盗賊に金や荷物を盗られて殺されるかもしれない。 冒険者であれば…クエスト中に殺されるかもしれない。 だからこそ…割り切らねばならない。 だからこそ…相手を殺してでも生き延びなければいけない。 今回依頼されてクエストはそれほどに重いのである。

「そうかもしれない…。 だけど、この任務を達成すれば…多くの人が救われると思う。 だからこそやらなければいけないんだ」

「そうだね…やらなきゃいけないね」

「よし…もっと広い場所に移ろうか。 そこに基地を召喚するからさ」

 パジェロのシフトレバーをDレンジに入れてアクセルを踏む。スマホに表示される地図を頼りに人目のつかない森の中に入る。パジェロを止め、降りてスマホで基地を召喚する。眩い光が俺たち二人の視界を奪う。光が収まるのを待って目を開ける。俺たちの目の前には滑走路2本と戦闘機やヘリを含めて100機ほど入るであろう格納庫や兵舎、管制搭などが建っていた。

「うん…デカい…」

 すると、二人ほど俺たちに向かって歩いてきた。二人は俺たちに対して敬礼する。俺もアメリカ空軍方式で答礼する。

「初めまして。 私がこの基地の司令官のジョン・ハーブ中将であります」

「同じく、陸軍司令の綾波春樹陸将補であります」

「総司令の神山時雨だ。 出迎え感謝する。 彼女が長谷川里奈だ」

 俺は、二人に里奈を紹介し、今現在の兵員数や機体の数を聞く。

「人員はどれぐらいいる?」

「はっ、空軍全体で400人ほどです」

「陸軍は200人ほどであります」

「航空機は?」

「F-22Aが16機、YF-23が2機、F-15Eが12機、F-2Aが16機、E-767が1機、HH-60Lが4機、MV-22が4機、AC-130が2機、AH-64Dが10機、SH-60等々です」

「そうか…わかった。 次に綾波陸将補、特殊作戦群2分隊をMV-22《オスプレイ》で盗賊のアジト周辺に送ってもらいたい。 地図はこれだ」

 綾波陸将補は地図を受け取る。

「了解いたしました」

「これから作戦を話すので、司令室に案内してほしい」

「お安い御用です」



 俺たち4人は、基地の説明を受けながら俺の執務室となる総司令官室に入る。それぞれ、執務室のソファーに座る。

「さて…作戦を話そう。 作戦は単純だ…F-15Eストライクイーグルで敵のアジトにLJDAMを落とす。 これだけだ。 その後、投下終了後に特戦群1分隊で敵アジトを捜索する。 たぶん、捜索できないと思うがな…。 残りの1分隊は、近くの建物に捕らわれているだろう人々の救出だ。 これにはCH-47を三機ほど充てる。 具体的は人数は不明だ」

「F-15Eは1機だけですか?」

「ああ。 一応護衛にはF-22を2機付ける。 ちなみに、F-15Eは俺と里奈が操縦する」

「わかりました」

「決行は明日の0500(朝の5時)だ」

「LJDAMの誘導は特戦の仕事ですね」

「そうだ、綾波陸将補。質問はあるか? ないなら解散だ」

 二人はそれぞれ敬礼して、部屋を出ていく。

「ほんとに…戦闘機に乗るの?」

「乗らなきゃダメでしょ。俺たちが依頼を受けたんだからさ」

「それは…そうだけどさ…」

 話していると、駐機場から1機のオスプレイが離陸していく。

「仕事が速いな…」

 そういって俺は立ち上がる。



「どこに行くの?」

「F-15Eに乗って遊覧飛行をしようよ」

「そだね…」

 俺は、部屋にある内線電話を使いハンガーにいる整備員に、F-15Eをエプロンに出しておくように伝える。



そして、それぞれロッカールームに移動して耐Gスーツに着替え、F-15Eが駐機しているエプロンに行く。機体の近くで作業をしている整備員に敬礼してから、ストライクイーグルの周りを時計回りに移動しながら機体を点検する。そして乗り込む。乗り込んだら、ヘルメットをかぶり、それぞれハーネスを着けてもらう。そしてキャノピーを閉める。整備員に親指指一本あげて合図し、エンジンマスタースイッチをオンに、JFS(ジェット燃料スターター)をオンにする。約15秒待ちスタータのレディランプが点灯し、火災警告灯が点灯しないのを確認して、メインエンジンをスタートさせる。 次に指2本立ててメカニックに合図し右側のエンジンスロットルフィンガーリフトを上げる。右エンジン点火させスロットルを18%にする。ファンタービン入り口温度計が600度に安定したら同じ手順で左エンジンもスタートさせる。両方点火したらJFSスイッチをオフにし、空気取り入れ口ランプをオート、ECCスイッチをサイクルにする。

 そして、テストスイッチボタンを押して、各システムの警告灯が正常に点灯するかチェックし、同時にINS(慣性航法装置)のアライメント(調整)を実施する。

チェックリストどおりにタキシー前チェックをし、完了したら輪止めを外してもらいタキシングを開始する。



「こちら、神山、コールサインはアンタレスでいい。 離陸許可を乞う」

『こちら管制、1番滑走路への進入を許可する』

「アンタレス1了解」

ブレーキを踏んで作動チェック、飛行計器が正常かどうかチェックし滑走路に入る前にメカニックに外部点検をしてもらい、ミサイルの安全ピンを抜いてもらう。今回は、自衛用にAIM-95 アジャイルを2本搭載している。

 そして滑走路へ向かう。レーダーをONにしてハーネスを再チェック。射出座席アーム、舵作動チェック、フラップ距離ポジションチェック、トリム距離位置チェック、キャノピーが完全に閉じているかチェックし、ピトーヒーターON、警告灯が点灯していないか確認する。サーキットブレーカーが納まっているかチェックする。



『アンタレス1、こちら管制、風は、方位305より4ノット、1番滑走路からの離陸を許可する』

「アンタレス1、了解、1番滑走路より、離陸する」



 滑走路上でブレーキを踏み込み左右のスロットルレバーをミリタリーパワーまで前進させ回転計、油圧計、燃料流入計、ファンタービン入り口温度計をチェックする。回転数90パーセント以上、タービン入り口温度322度で正常だ。正常ならばスロットルを戻す。ブレーキを離し、スロットルを80パーセント、そしてミリタリー位置まで動かす。

 機体が動き始める。120ノットに達するとローテーション。ピッチ角を10度にして上昇を開始する。上昇を開始したら250ノットになる前にフラップと車輪を格納する。350ノットを維持しながら上昇を続ける。

『アンタレス1、貴機の幸運を祈る』

「ありがとう」



 高度1000mまで上昇する。

「里奈どうだい? 調子は?」

「ばっちりだよ」

「じゃあ、このまま盗賊のアジトの位置をもう一度確認しに行こう」

「うん」

 俺は操縦桿を右に倒す。約15分ほどで、目的地の上空に到達する。

「ここか…。そろそろオスプレイも人員を降ろしてるとこかな」

「試験飛行の割には、あんまりうれしくなさそうだね…」

「いや…そんなことないさ」

「そう?」

「まぁ…本当は…ちょっと憂鬱だね」

「基地に戻ったら何する?」

「何しようね」


 その時だった。レーダーに何か映ったのだ。

「レーダーに飛行物体を感知」

「オスプレイじゃないのか?」

「違う。 オスプレイはこんなに遅くないよ」

「じゃあ…またドラゴンか?」

「わかんない」

 現在高度は650mだ。速度はマッハ0.5。時速にして約617㎞だ。

「機影さらに接近」

「人が乗っているのか?」

「そうみたいだね」

「さて…どうするか」

「逃げないの?」

「逃げた場合基地が見つかる。それはすごく迷惑だ」

「じゃあ…」

「相手には悪いがここで落とさせてもらう」

 スロットルを開け、レフトターンする。相手をロックオン出来るように、シーカーをワイバーンに向ける。

「AIM-95 アジャイル ロックオン…Fox2」

 ミサイルが敵ワイバーンに対して飛翔していく。相手はもう避けられないと悟ったらしい。空中で動きを止め、F-15Eを凝視している。ミサイルが当たり、竜騎兵とワイバーンが粉々になって落ちていく。

「敵生物撃破…これより帰投する」

「管制了解」

 その後の俺たちの様子は、よく覚えていない。ただ…一つ言えることは、何故撃ち落とす必要があったのかという自責の念があったことだ。



 この日王都守備隊は、定時哨戒に出ていた竜騎士が戻ってこなかったことに疑問を抱き、ほぼ全ての竜騎士を上げて捜索した。だが、結局見つかったのは、竜騎士の兜だけだった。





今回の話は、シリアスな面を一部含んでおります。

やっと戦闘機を出せました(戦闘爆撃機ですが)。次話は、盗賊を完全につぶすお話です

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