Story21 王都・グラリアです。1
「あれが、『王都・グラリア』かな?」
小さな丘から遠目からでも分かる程の頑丈そうな砦、その砦に守られるように街と大きな城を見て、ミッシェルこと、姉さんに言う。
「うん、多分そうだよぉ」
「よっし、行きますか!」
姉さんに張り切って言う。
「ジン君。お腹空いたー」
姉さんの一言でコケそうになったが。
「街に着いたらな」
丘から少し歩き砦の傍まで来ると、門番らしき人が近づく俺達に気づく。
そして、門番の人が少し警戒するとこちらに向かって言った。
「止まれ。何をしにきた」
「えっと、この街に入りたいんですけど」
「ならば身分証を提示しろ。なければ、大鉄貨十枚だ」
この世界のお金は
鉄貨 10→ 大鉄貨 10→ 銅貨 10→ 大銅貨 10→ 銀貨 10→ 大銀貨 10→ 金貨 10→ 白金 10
となっており、大鉄貨は鉄貨十枚だ。
因みに物価は日本と同じで、鉄貨一枚で一円と一緒だ。何とも分かりやすい。
でもお金の事は分かっても、身分証は分からない。
「あのー、身分証って何ですか?」
「身分証は冒険者や商人、貴族達が持っている物だ。冒険者の場合は『ランクカード』となっている」
「分かりました。じゃあ、大鉄貨二十枚。二人分で」
俺は門番の人に身分証の説明をしてもらった後、俺と姉さんの二人分のお金を渡す。
お金を受け取ると門番の人はそれを数えると、こちらに向き直りニカッと笑う。
「うむ、しっかり受け取った。街を楽しんでくれ。因みに冒険者ギルドなら、街の中央にある」
「ありがとうございます」
「ありがとうございますぅ」
俺と姉さんは門番の人にお礼を言い、門をくぐる。
門をくぐるとそこは、物凄い活気のある場所だった。
人通りが多く、その人達に声をかける商人達。
頬や腕に傷があり、武器や盾、鎧を装備した男の人達。恐らく冒険者だろう。
良い所だなと思いながらも、少しだけ嫌な顔をする。
「あ、そういえば。ジン君、人が多い所苦手なんだっけ? 大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫」
そう、俺は人が密集している所が嫌いなのだ。
別に人が嫌いなのでは無い、密集している所が嫌いなのだ。
理由は吐きそうになるからだ。
入学式や卒業式は良く体調を崩した。
「さて、最初はご飯……だったが、まずは冒険者ギルドに行って冒険者登録をしに行こう。さっき門番の人が言っていた『ランクカード』を発行するのに時間がかかるかもしれない」
「うー、分かった。でもお腹ぺこぺこだからぁ、後でいっぱい食べさせてね?」
冒険者ギルドに向かって、人混みの中を歩き出す。
はぐれ無い様に、しっかりと手を繋いで。
……別に他意はないですよ? 兄弟だけど手柔らかいなーとか思ってないからね?
「ジン君ってぇ、あんまり面識の無い人とか、他人には人が変わった様に敬語を使うよねぇ?」
「……それは言わない約束だ」




