再起動
これは、いつか魔王を殺す勇者になってしまう少年と
その少年を育てた魔王と仲間たちの話。
『勇者』と『魔王』という運命に抗おうとする物語。
魔王城は今日も燃えていた。
黒い石壁を舐めるように炎が這い、崩れた塔の残骸が赤く照らされている。
焦げた匂いと血の鉄臭さが混じった空気の中で、十八歳のシリウスは
剣を握りしめて立ち尽くしていた。
足元には倒れ伏す魔王城の仲間たち。
かつて笑いあった仲間たちが、血に濡れて動かない。
そして──
その中心に、育ての親である魔王ノクスが倒れている。
「……どうして……」
シリウスの喉の奥から、かすれた声が漏れる。
剣を握りしめる手は震え、ぽたぽたと刃から血が滴る。
頭の奥が霞んでいる。
この光景を何度も見てきた気がした。
何度この手で───
「どうして……こうなってるんだ……?」
叫びたいのに声は喉の奥で小さく消えていく。
シリウスは守りたかった。
一緒に笑って、暮らして、同じ食卓を共にする毎日を過ごす事。
ただそれだけを望んでいたのに。
「なんで……なんで僕が、殺さなきゃいけないんだ……」
その問いに答える者はいない。
燃え盛る炎だけが、答えの代わりのように無情に揺れている。
その時、手にしていた剣が無機質な声で告げた。
『魔王討伐を確認。討伐条件未達成』
シリウスの心臓が跳ねる。
「……未達成?」
そう呟いた次の瞬間───
『世界を再起動します』
辺りが見えなくなるほど眩しい光が、すべてを飲み込んだ。
轟音が響き、大地が軋み、城が崩れ落ちていく。
「待って……!!」
倒れ伏している魔王ノクスも魔王城の仲間も、伸ばした手の先で、
炎も瓦礫と一緒に光へと溶けて消えていく。
「ノクス!!」
叫びと同時に、世界そのものが崩壊し───
──気づけばシリウスはすべてを忘れ、七歳の子供の姿になっていた。




