91_一緒なら、もっともっと頑張れる!
契約した途端、私の中におこげちゃんの魔力が一気に流れ込んでくる。
実を食べた時に微かに感じていた心地よさが全身を包んでいくような感覚に、私はこれが聖魔力なのだと自然と理解していた。
つまり、私はおこげちゃんの実を食べることで聖魔力を体に取り込んでいて、魔力の質が増えたのも、多分聖魔力だったんだわ。
おこげちゃんがすごく怯えたり警戒していたのも、瘴気の影響を受けていただけじゃなくて、きっと悪魔の存在に気づいていたからじゃないだろうか。
「おこげちゃん、ずっとずっと、苦しかったよね。これからは私がおこげちゃんと一緒に頑張るから」
『ルーツィア!ルーツィアと一緒なら、おこげも頑張る!』
キュッキュッと可愛い声をあげながら、おこげちゃんはそんな風に言ってくれる。
おこげちゃんが実を通して私に聖魔力をくれていたおかげで、契約は私が思う何倍も良い結果になっていた。
それを証明するかのように、おこげちゃんの怪我は全てすっかり治り、今までにないくらい毛もツヤツヤ光り輝いている。
おこげちゃん。ずっと可愛いと思っていたけど。本当はこんなにこんなに、もっともーっと可愛かったんだね。
(……よし!)
ひとつ深呼吸をして、気合を入れ直す。
今の私が持っているのが聖魔力なら、できることはたくさんある!
「おこげちゃん、力を貸して!」
「キュキュ~!」
おこげちゃんとの契約のおかげなのか、自分のやるべきこと、そしてそれを実行する方法がまるで体に染みついているかのようによく分かった。
私は苦しむ街の人達の方を向くと、大きく両手を広げ、魔力を使う。
「皆の怪我や苦しみが、ぜーんぶ消えますように!えいっ!」
「キュ~ン!」
私の側でおこげちゃんが飛び跳ね、くるんと一回転する。それと同時に魔法を放つと、街の人達の上に白くキラキラした淡い光が降り注いだ。
(やった!上手くいったわ!)
光に触れたところから、怪我がスッ……と消えていく。
初めてでこれなら、多分上出来だよね?
思い描いた通りの結果に満足していると、街の人達から驚きの声が上がり始めた。
「な、なんだ?体が……痛くない!」
「怪我が治ったわ!この光のおかげなの……?」
「温かい……夢でも見ているかのようだ……」
「息も苦しくないわ!むしろ、いつもよりずっと体が軽い!」
「ていうか、長年悩んでいた足の痛みも治っちゃったんだけど!?」
……思ったよりも上出来だったかもしれない!
皆の明るい声や驚きの表情に手ごたえを感じて、ふつふつと興奮が湧きあがってくる。
私、私……皆の役に立てている!
──ハッ!喜んでぼうっとしている場合じゃない!
まだまだ、やらなくちゃいけないことがある。
セルヒ様とグレイス様は今もまだ必死に瘴気だまりを抑えるために魔法を使い続けている。
ノース様も加わり、今以上に大きくなることはひとまず止められているみたいだけど、小さくすることはできていない。
聖魔法は、普通の魔法よりも、何倍も瘴気だまりに効果がある。私も一緒に魔法を使えば、瘴気だまりを消すことができるかも!
おこげちゃんと一緒に急いでセルヒ様達の方に駆け出すと、フワフワが私の元へ来てくれた。
『乗れ、ルーツィア!我の方が走るより早い!』
「うん!ありがとうフワフワ!」
一秒でも早く!
フワフワにのってあっという間に瘴気だまりの前に辿り着くと……私の前に、悪魔が立ちふさがった。
『まさか、お前、聖魔力持ちなのか?』
「あ、悪魔……」
すぐ近くに対峙した悪魔の威圧感と放たれる嫌なオーラに、冷や汗がでる。
そりゃそうだよね、悪魔が簡単に瘴気だまりを消させてくれるわけがない。
セルヒ様達を自由にさせていたのは、そうしても瘴気だまりを消せないと分かっていたからだったんだ。
悪魔は悪趣味だから、必死になる私達を面白がって眺めていたんだわ。
(だけど、それってつまり、今こうして私を止めようとするのは、このまま私の力も加えれば瘴気だまりを消せるってことの証明でもある)
怯みながらも希望を見出していると、おこげちゃんが私と悪魔の間に立つ。
『ルーツィア!ぼくが悪魔の相手をするから、その間にルーツィアはあれを消して!』
「!おこげちゃん……!」
『我もチビ……おこげと一緒に戦う!』
「フワフワも……ありがとう!」
私達を見たセルヒ様が、大きな声で助言をしてくれる。
「ルーツィア!おこげに魔力を渡せ!悪魔と対峙できるように、力を増幅させるんだ!」
「はい!」
そのやり方も、おこげちゃんとの契約が自然と私に教えてくれる。
元々私からは魔力マッサージを、おこげちゃんからは実を通して魔力の受け渡しをしつづけていた私達の間には、見えない魔力の繋がりができていて、それを通じて触れていなくても魔力を渡すことができるようになっているのが分かった。
(不思議。さっきも街の人達大勢にむけて一気に回復魔法を使ったのに、疲れるどころかどんどん魔力が湧いてくるみたいだわ)
これって、私とおこげちゃんの魔力の相性がすごくいいってことなのかな?
私はそんなことを思いながら、おこげちゃんに向かって一気に魔力を注いだ。
「キュキュ―ッ!」
私の魔力を受け取ったおこげちゃんがひと鳴きすると、体が少し大きく、そして毛が長く、今まで以上に美しい姿に変化していった。
『くそ!お前、本物の神獣か!?』
悪魔の焦る声を聞きながら、私はセルヒ様の隣に並び、瘴気だまりに向けて手を掲げた。




