剣を持って発つ
「国王ら家族を国に残して、一人このキャメロットにだろ?寂しいだろうなあ」
「しかしアルタリアも王都のすぐそばまで敵軍が迫ってるそうだ。疎開はしかたないことだろう」
「そりゃそうだけどよ……」
日は完全に暮れ、ろうそくの頼りない灯りだけが部屋を照らす。昼間は賑やかなキャメロットも、夜が訪れれば暗闇と静寂が支配する。
「そろそろ寝ようじゃないか、もうすぐ出征もある。私たちの活躍で、マリア王女もきっと帰れるさ」
ダニエルの号令に続けて、アンリたちは床に就いた。
キャメロットは西大陸の南半分を覆う南部山脈地帯のほぼ中央に位置する。キャメロットには山々の隙間を這うように走る幹線路のほとんどが接続し、そのために一都市国家でありながら各地の亡命者による都市に対し中央としてふるまえるが、それ以上に重要なのは、北に南部山脈地帯唯一の入口であるルバイカ峠と接続し、人族最後の砦の玄関口である、ということである。
「……これまではルバイカ峠北端の都市カレーから進撃する敵軍に対し南端の要塞ストーンフォークに配備された我がキャメロット騎士団の防戦一方であった。しかし、今日からは違う。我々反攻軍がカレーの街を取り戻し、人族は故地へ帰るのだ」
先日の豪勢な閲兵式と打って変わって、キャメロットの北門を抜けた先の平原で行われた出陣式はあまりに質素だった。ルビレの手短な演説の後、種々の鎧に身を包み、様々な模様の軍旗を掲げた兵士たちは、蹄や軍靴を踏み鳴らしながら背後の城壁に振り向きもせずストーンフォーク要塞に続く道についた。反攻軍はついに発った。彼らがまず目指すのは、敵中の都市カレーの奪還である。




