第3章6話 Bランク冒険者達
「そゆ訳だかんよぉ、ここはBランク冒険者の俺達先輩の言うことを大人し」
「何時までゴチャゴチャくっちゃべってんのよ、屑共が。Gの次に出て来たのは、それ以下の塵だなんてちっとも笑えないわ」
さっきまでへちょい顔をしていたアリスが紅と蒼のオッドアイを細めると、後ろに転がされている女性冒険者二人が生きていることを【鑑定】で確認したからだろう、時間を惜しむように問答無用で自称Bランク冒険者達の台詞をぶった切る。
「なっ、テメエ……ふざけた口きぃてくれんじゃねぇかよ」
「いいから、さっさとその安物の剣を抜きなさいよ。こっちは、絶好調に機嫌が悪いのよ」
面倒くさそうに手をヒラヒラ振って見せるアリスに、竜人族の男、虎人族の男、インプ族の女、ダークエルフの女そして人族の男達の計十三人のBランク冒険者達が、自身の得物――片手剣、シミター、大剣、槍、杖、短剣、細剣、エストック、南蛮刀、ハンマーにアックスなど――を抜刀すると同時に各種の魔法詠唱を開始する。
しかしBランク冒険者にもなると、【解析】や【鑑定】を阻害や妨害してくる奴もいるかと思ったが、これだけ堂々と個人情報を開示したまま襲い掛かって来るとは――意外と【隠蔽】スキルってのは、レアだったりするのか?
「上等だぁ! テメェからその偉そうな口をぐばっああああ!」
「口がきけなくなるほど、ヒイヒイ言わせてがぁあああ!」
地下二階に下りるときには既に【ソナー(探査)】で索敵完了していたので、『マルチタスク』の並列処理により起動待機させていた【AMW(ノイズ)】で、詠唱途中の魔法を片っ端からジャミングして強制的にキャンセルさせてやる。
すると中には本人の制御を離れた魔力が暴走してしまい、バックファイアを起こして逆流した魔素が神経系を焼き切ってしまった奴もいるようで、鼻と耳から血を垂れ流しながら頭を抱えて絶叫している。
「くそっ! 詠唱が解除されて、どうなってる?」
「俺の魔法陣が消えた! なぜ?」
「ふぅん、流石は上級冒険者のBランクと言ったところか。詠唱も魔法陣の展開も早い――けど、完成しなきゃ唯の自慰かきと変わんねぇからなぁ」
【魔力制御】スキルのレベルが低いくせに、魔力だけが生半可に高かったからだろう逆流してきた魔力をカットしきれずに、鼻と耳に加えてとうとう目と口からも鮮血を噴出し始めた二人の人族の男は倒れ伏してしまっていた。
ま、死んではいないようだが自業自得だろう。
それをを見て、すぐに異常に気がついた勘の良い奴らもいるようで伊達にBランク冒険者では無いのか――とか考えていると、ステータス情報で種族がインプ族の見た目にも妖艶な女が一人で突進してくる。
「あんたかい! 面白い、このあたしが直々に相手してやるよっ」
「ええー、いらねー」
あからさまに嫌な顔をしたからか、色気を無駄に発散させている淫婦としてのプライドがいたく傷つけられたらしいインプ族の女が、得意のスキルを発動させ始める。
それは良い手だ、純粋なスキルは魔法と違って【AMW(ノイズ)】じゃ完全にジャミングするのは難しいからな――でも。
◆◇◆◇◆◇◆◇
筋肉マッチョな虎人族の男はその巨体に物を言わせた高い機動力で、一足飛びに後衛へと迫ろうと瞬時に【加速】を開始していた。
「へへへ、まずは動けなくしてから、その身体に言うことを聞かせりゃいいのよぉ! うぉっと、あぶねぇ!」
タンッ、タンッ、タンッ、と反動の少ない軽快な射撃音と共に踏み出す足元に、まるで先読みするかのように確実に着弾する銃弾。
「ちくしょうっ。何だってんだ、こりゃあ!」
その時になって初めて、自分の行く先々に行く手を塞ぐように紅いレーザー光が舞っていることに気がつく。
『車椅子』に座り固定砲台となったユウナの持つレーザーサイト付きの魔法自動拳銃P226に、至近距離まで引き付けられた位置での狙いすました精密射撃で自慢の機動力を完璧なまでに牽制されてしまっていたのだ。
「ちっ、ジュネヴァン連邦国の魔法自動拳銃か!」
舌打ちをして一度距離を取ろうとしたところで、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、というさっきよりも大きな轟音を聞くが、紅いレーザー光は自分とは別の場所を照準している。
はずだったのに、待ってましたとばかりに狙い撃ちされて、今度は魔力が付与された9x19mmパラベラム弾を両手片足に加えて無防備な股間に被弾して、強靭なはずの外皮と筋肉に覆われた骨格ごと吹き飛ばされてしまう。
「がっああああ! ぐっぞぉっ! どうなってんだ?」
ユウナはレーザーサイトの照準光をワザとずらして別の位置に照射して囮にしながら、本当の照準そのものは自身の紫の瞳と【命中】スキルで確実に処理実行していたのだ。
血溜まりと股間を撃ち抜かれて漏れ出した糞尿の上に倒れたまま、愕然とするBクラスの虎人族の男は、本来であれば自分に致命傷を与えるほどの貫通力は無く、せいぜい掠り傷程度のはずなのにと理解ができないでいた。
それはユウナとの戦いに興じる余り、自身の【身体強化】や【防御強化】までがジャミングされて機能障害を起こしていることに、最後の瞬間まで遂に気づくことが無かったたというお粗末な結果故である。
「ふう……半殺しで生け捕りできたのは、クロセくんのおかげ、か」
そう静かにつぶやくと、ユウナは無表情のまま次の獲物に向かって照星と照門を流れるように合わせる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「あれ?」
突然、バインバインでボインボインの爆乳を無駄に揺らすインプ族の女が、目の前から急に反転して逃げ出してしまった。
「チェンジ、チェーンジ! 何よ~、【魅了】スキルも【淫夢】スキルもちっとも効果無いって。あいつ、不能じゃないの?」
猛烈に下品な色気を撒き散らして空気も読めない糞女な淫婦の女に、思い出したくも無い姉貴達六人を思い出させられた俺は、ついつい苛立ちまくってしまっていた。
そして、当面の標的である糞女が目の前から消えた次の瞬間に、後ろの方で腕組みをしてふんぞり返って笑っている、竜人族の男にアッサリと照準を変更する。
「ぎゃははは。上級冒険者のBランクの俺達四人に、見習い冒険者のFランク如きがかなうわけないだろ? しかも、俺は人類最強種の竜人族だぜっ!」
腹を抱えて大爆笑している自称人類最強種であるところの竜人族の男の背面に【チューブ(転移)】で転移すると、【AMW(ノイズ)】でジャミングしながら、直刀【カタナ】を一瞬で抜刀する。
「ふんっ、転移魔法ぐらいそんなもんぎゃああああ!」
流石はBランクということか、転移魔法そのものは直感的に察知したようだったが、全身の魔素にジャミングをかけられて、【身体強化】や【加速】といった通常のスキルが誤動作してラグったように逃げ遅れる。
その一瞬を、野生の本能なのか反射的に抜刀していたらしい魔剣を持つ腕ごと、狙いすました【抜刀術】で斬り飛ばされてしまっていた。
そして腕を斬られた衝撃で受け身も取れない混乱した状態の中、次の瞬間に右手に持った直刀【カタナ】とは別の軌道から全く別の、しかし全く同型の直刀【カタナ】の刀背打ちが閃光となって顎を打ち抜き粉々に砕いていた。
「ぐべらっ」
「これで余計な呪文も唱えんだろ?」
そうしてようやく地べたに倒れ込むことを許されて、溢れ出す鮮血で血溜まりを作り始めるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
時を同じくして、闇精霊達を繰り出して後衛に襲い掛かっていたダークエルフの女が、ルリを守護するように空中に立ちはだかる高位六精霊と正面から激突してしまっていた。
「な、何で、見習い冒険者でFランクの餓鬼が六精霊なんかを! し、しかも、高位精霊だとぉ? ちっくしょぉー! 聞いてねぇーぞぉっ」
高位六精霊の圧倒的ともいえる魔力量とその戦力差に、半泣きで喚き散らすダークエルフの女が接近することもできずに、ブンブンと振り回していた魔杖を持つ腕を、転移魔法で背面に現れた蒼い光弾がすれ違いざまに斬り飛ばしていく。
「ぎゃああああ! ちくしょう、ちくしょおぉ。痛い、痛いっ、痛いぃ~」
右腕を肘から失って血飛沫を上げて絶叫しながら地べたを転げまわるダークエルフの女性の横っ面を、ビーサンを履いた踵で蹴り飛ばして顎を外しておく。
「ぶがごぉおおおお」
すると叫ぶことも、隠れて詠唱することもできなくなってしまい、丸くなって震えて唸るだけになるのを見下ろして、隠している暗器をどうしようか考えていると、ルリが紅い瞳で覗き込むようにしてくる。
「ハクローくん、もしかして機嫌悪い?」
「いきなりKY糞女の相手をさせられて、姉貴達六人を思い出してしまっただけだ」
「あ~……」
ソッポを向きながら唇を尖らせて不貞腐れたような俺の台詞に、ルリは思わず視線を逸らして遠くを見ながらため息をつくのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「やっぱり、女の魔術師の方が殺りがいがあるよなぁ! ほら、接近されたら詠唱もできねぇだろお?」
ハクローの所から逃げ出して来た、お色気タップリのインプ族の女が魔剣シミターを抜いて、爆乳をワザと揺らして見せつけるように叫びながらアリスへと切りかかる。
「何それ、嫌味? 嫌味なの?」
ギィンッ、と激しい金属の接触音をさせて、アリスの抜刀した神話級【剣杖】の仕込み刃に阻まれてしまう。
「へえぇ、面白いモン持ってんじゃぁ~ん。それ、あたいが貰ってやんよぉ~」
ヘラヘラと嫌らしい笑いを浮かべたインプ族の女に、仕込み刃の背刃を肩にトントンと当てながら、ため息と共に首を振るアリス。
「はあ~、50レベル台のBランクって言うから期待したのに、こんなもんなの? これなら、まだあんたがさっきまで相手していたヘタレなハクローの方がずーっとマシよ?
もういいわ。ガックシよ、さっさとかかって来なさい」
「て、テメェ! そのお人形のような綺麗な顔を二度と見れぎゃああああ! ちぃいいぐぁああああ! なんでがぁああああ!」
激昂した勢いのまま魔法詠唱を始めたインプ族の女の術式構築が完成する前に、展開していた魔法陣ごと補助魔道具を付けた右腕を、【神速】でゼロ距離まで接近して来たアリスに斬り飛ばされていた。
何が起きたのか理解するより前に次の斬撃が、猛毒を塗った魔剣シミターを持った左腕ごと、流れるように美しいまでの軌道で斬り飛ばす。
その余りの衝撃で後ろに仰け反って倒れてしまう姿勢のまま、インプ族の女は信じられない物を見ることになる。
それは、斬り離された自分の自慢の大きく豊かな二つの乳房が、倒れ込む前のさっきまでいた空間をクルクルと舞っている光景だった。
ギョッとして倒れながらも自分の胸元に視線を向けると、そこにあるはずの豊満な胸の膨らみは無くなって、削り取られた絶壁のような赤い切断面だけがあった。
「騒がしいわね、五月蝿いのよ」
そうつぶやくと、アリスのくるっと回転した後ろ回し蹴りが、仰け反って倒れきる前の上がりきった彼女の顎を蹴り抜いて粉々にしていた。
「ぐびゃあっ」
べちゃっと地べたに落ちた二つの脂肪の塊と、ぐっちゃりと崩れ落ちて強制ダイエットでスレンダーになってちっとも淫婦とは言えなくなってしまって、唸っているだけの糞女を見下ろすと、ふんっ、と鼻を鳴らしてからアリスは残りの雑魚に向かって歩き出す。
アリスがふと辺りを見回すと、人族の男達がルリとユウナの直援をしている、抱っこ紐を付けてお腹の大きなコロンが振り回す【魔法のおたま】と【魔法のフライパン】と妖精フィの【睡眠】スキルに阻まれて、接近することもできずにいたようだ。
そこへ背面からのハクローの転移&抜刀の連撃とユウナの視界の外からの精密射撃により、武器を持ったままの腕を次々に空中へと放物線を描かせていた。
だが、腐ってもBランクなのか、竜人族の男は種族特有の驚異的な【自動回復】で怪我を回復させながら、無事だった二本の足でコソコソと逃げ出そうとしていたので、サクッと股間を上位火魔法【ヘルフレイム】で炭化させておくことにする。
と、もう少し魔法を駆使した魔術防御をしてくるかと思っていたのだが簡単に魔法防壁を貫通してしまい、膝を着いてうずくまってプルプルと小刻みに震えて動かなくなってしまった。
するとダークエルフの女も残っていた左手でポケットから魔道具のような物――ああ、呪術が組んである、呪いでもかけるつもりなのか――を取り出そうとしていたのでこっちもサクッと、はち切れんばかりの大きな巨乳と一緒に左手を上位火魔法【ヘルフレイム】で燃やしておく。
「じぃあぁああああ……」
「おお~、脂肪の塊だからか良く燃えるわ」
十三人いたBランク冒険者全員の武装が全て解除されたことを確認しながら、ついでにと上位火魔法【ヘルフレイム】でポンポンポンと未だに自分の脚で逃げようとしていた、人族の雑魚達の股間を消し炭に変えて動けないようにしておく。
そうしてから、壁際に転がされていた女性冒険者二人に【ハイヒール】をかけながらの様子を見ると、気を失ってはいるようだが命だけは無事――この場合、暴行されて折れた手足は治せるし、身体中の打撲痕や痣は魔法で徐々に消えていっているが、下種野郎達に強姦された心の傷だけは無事という訳にはいかないのだろう。
部屋着代わりの大きめのロングTシャツを二人に着せながらも、すぐにでも連れて帰ってやりたいところだが、身体の治療と回復が完了して定着するまで今暫くは妖精のフィの【睡眠】スキルでゆっくりと眠ったままでいてもらうことにしよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「アリスさんもユウナさんも、怖いっス」
結局全員で十三人いたが奴等のギルドカードを集めてみると、実際のところBランクだったのは竜人族、虎人族、インプ族女、ダークエルフ女の四人だけで、他の人族の男達は唯のCランクだったようだ。
で、女性冒険者二人を強姦した糞男共は一人残らず、アリスとユウナに男性機能を消し炭か粉々にされて、二人の糞女は立派だった自慢の爆乳が今は真っ平な更地に整地されてしまっていた。
いずれも、部位損傷なので神聖皇国にでも行って超位回復魔法でも使わないと、復元することはできないだろう。
おっぱい大好きでボイン大好きだったアホ平河がこれを聞いたら、人類の重大な損失とばかりに泣き出してしまうかもしれない――いや間違いなく、泣くな。
なんて馬鹿なことを考えつつ、内股になりそうになるのをちょっと堪えながら、転がっている武器と隠し持っているサブ武器に毒薬や回復薬などのアイテム類を【時空収納】に回収し終わって、ようやくみんなに振り返る。
すると何言ってんのよとばかりにアリスが俺を睨みながら、呆れたように肩を竦めて転がっている糞女二人を指差して見せる。
「そう言うハクローだって、女だろうと容赦無しじゃないのよ」
「女嫌い――って訳じゃない、んですけどねぇ~」
それを聞いていたルリさんが、ウ~ンと眉を寄せながらちょっと困った顔をすると、今度は続けてボソッと小さな声で無表情なユウナがつぶやく。
「やっぱり、不能?」
「おい」
「じょーだん」
無表情なまま真顔でそんなことをサラッとのたまうユウナさん。
「ユウナが冗談……って珍しいこともあるもんだな。これは今日のレアドロップか?」
「はっ! ぷいっ」
ちょっと失敗したとばかりに、ユウナが急に頬を赤くしてソッポを向いてお澄まし顔をする。
「あ、逃げた」
「うふふ、大丈夫でしゅ。ハク様は女の子に抱きつかれると、ドキドキするのでしゅ。コロンには匂いでちゃ~んと分かるのでしゅよ」
ふんす、とふっくらしてきた胸を張って、小さなコロンがタマゴを抱えたままドヤ顔をする。
それを聞いて何が気になったのか、ルリが俺のTシャツを掴むと襟口から鼻を突っ込んで来る。
「くんくん、ん~?」
「こ、こら、嗅ぐな」
「んん~?」
それでも納得いかないのか、ルリは腕組みをして小首を傾げてしまう。
「ま、まあ、それは置いといて。馬鹿なBランク冒険者達はいつも通り『釣り糸(タングステン合金ワイヤー)』でグルグル巻きにして、奴等が持っていた低級HPポーションをぶっかけて放ってあるから、女性冒険者二人がゆっくりと眠っている間にとっとと地下十階までクリアしようか」
「そうね、どうやったのか下の階層にいた魔物まで地下一階に集結させてくれたおかげで、後は地下十階のボス部屋にいるラスボスだけみたいだしねぇ。
さっさとかたずけて、その女性冒険者二人の怪我も治っているとは思うけど念のためにお医者さんには見せてあげたいし、早く帰ってお風呂に入りたいわね~」
はぁ~、と肩を揉み始める、なんだか婆臭いアリスさん。
「ギロッ」
うわ~ん、またバレて~ら。
上位回復魔法で治療されて眠っている、アリスのロングTシャツを着せられた女性冒険者達の一人を落ちないように注意してサーフボードに乗せてから【波乗り(重力)】で浮かせて、もう一人は背中におんぶして三階への階段へと向かって歩き出す。
彼女達のパーティーメンバーと思われる男性冒険者三人の遺体は損傷が激しかったができるだけ回収して【時空収納】に入れて連れ帰っていた。




