37話 暴食の妖精
16日目の朝、目を覚ますとルリとコロンの間に小さな『妖精』の少女が眠っている。身長は30cmぐらいだろうか、長いゴールデンブロンドの金髪でひらひらしたオフホワイトのワンピースを着ている。
やはり目を引くのは、背中の虹色に光る透明な四枚の羽だ。時々、ピクピク動くのがとても不思議な感じがする。たぶん、飛んだりするんだろう――おお、異世界ファンタジーもここまで来たか。
などとアホなことを考えているのは止めにして、普段通りに剣の朝練のため病室の外へと向かう。
今日からは完成したばかりの直刀【カタナ】を使った【二刀流】の精度を上げる訓練だ。早くこの直刀の【カタナ】の感覚に慣れないと、それこそ無駄に折ることにもなってしまう。
これまでの騎士団が使っていた両刃の片手剣と違って、『斬る』ことに主眼を置いた刃の軌道になるよう細心の精度で二本の直刀【カタナ】を振る。
その後は直刀【カタナ】一本を左の腰に差して、見よう見まねで【抜刀術】の練習。とにかく最も危険な人間の奇襲から、どんな体勢でも後の先を取れるようにと繰り返し抜刀する。
また、グリップのメリケンサックと寸鉄で拳闘の真似事もしてみる。先生がいるといいんだが、まずは我流だ。後で【格闘術】スキルを持っているらしい侍女のクラリスに聞いてみるか。
病室に戻ると、ちょうど『妖精』の少女が目を覚まそうとしていた。ルリとコロンは目を覚ましたときのために、ずっとそばに付いていたようだった。
灰色に近い澄んだ青色をした瞳がゆっくりと開き、ゆっくりと周囲を見回す。
「気がついたか? 身体に痛いところはないか?」
「……」
「もう大丈夫です、首輪もありませんよ」
「……」
「ここは安全だから、安心しなさいよね」
「……」
「ごはん」
「っ!」
おお、食べ物に反応したぞ。さすがはLv3の【料理】スキルを持つ、戦う【料理人】のコロンさん。確かコロンも奴隷の時は、碌に食べさせてもらっていなかったみたいだしな、そりゃ最初に気がつくか。
「みんなで食べよ」
「うん」
「「「「おおー」」」」
物凄い勢いでコロンの出す朝食を食べて、いや、飲み込んでいく『妖精』さん。その小さな身体の、いったいどこに消えていくのでしょうか。どうやら『妖精』のお腹の中は、異次元につながっているようだった。
「す、すごいわね」
「おねーちゃんも負けられません!」
あんぐりと口を開けて呆れているアリスに、ルリは負けず嫌いのスイッチが入ったのか気炎を上げている。
「ルリは元々食べる量が少ないんだから、無理はするなよ」
「おかわり、いる?」
「こくこく」
コロンが聞くと、すぐさま頷く『妖精』さん。まだ食べるのか……。
テーブルの上で女の子座りをして、背中の透きとおる虹色の羽を震わせながら、人間サイズのお皿にかぶりつく小さい人形のような、『妖精』のフードバトルは続く。
「……リリス=フィ。紛らわしいから、フィと呼んで」
いつまでも続くかと思われた朝食も終わり、ようやく自己紹介を始める。
「そう、フィちゃんと言うのね、妖精っぽい可愛い名前ね。私はアイカワ・ルリ。ルリおねーちゃんと呼んでね」
「115」
「え?」
何を言われたのかわからず、ポカンとするルリに、驚愕の真実を告げる『妖精』のフィ。
「フィは115才よ」
「ええ! フィちゃんって、115才なの? いや、フィ……おねーちゃん? がぁーん」
ああ、ルリが出だしからドツボにハマっている。そうか、食べ物は115年の歴史と言う名の異次元の彼方に消えたのか。
「ハクロー、あんたまた碌でもないこと考えてるでしょ」
「い、いや?」
「コロンはコロンでしゅ」
「コロン、ごはん」
いつの間にか、コロン=ごはんの方程式ができあがってしまったようだ。違うぞ、コロンを食べたらダメだぞ。コロンが食べるのがごはんで、あいた! アリスにつねられた。
「私はアリスよ」
「ハクローだ。よろしくな」
「ハクロー、助けてくれてありがと」
「怪我は治ってると思うけど、調子が悪かったり、気分が悪かったりしたら言うんだぞ」
「うん、わかった」
「よし、俺達はこれから裏庭まで散歩だから、フィはルリの膝の上に座っていてくれ」
「うん」
「おねーちゃんにまかせなさい!」
結局、100才の歳月を無なかったことにして、ルリの方がフィのおねーちゃんになったらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「きゃー、何て可愛い妖精さんなの! よろしくね、フィちゃん。ミラって呼んでね」
「姫様、本物の妖精さんに会えるなんて、長年生きて来た私でさえ――げふんげふん。可愛い妖精のフィ様、はじめましてクラリスと申します」
「ミラ、クラリスよろしく」
「「ぎゃー、ちょー可愛い!」」
午前中の魔法教室はのっけから、新入生の妖精フィの可愛さに教室の先生方がメロメロ、トロトロになってしまって授業にならなかった。
仕方ないので雑談ついでに昨日の午後の奴隷商とのいきさつを説明すると、どうもクラリスにはその公爵について心当たりがあるらしかった。
「その非合法な奴隷商に違法な奴隷の売買を依頼したのは、先王弟のブヌトー公爵だと思います。
これまでも悪い噂しか聞いたことがありませんし、私の知る以前の先王の時代から、年の離れた王弟として我儘放題だったと聞いています」
「ああ、もう何か先が読めたなぁ」
「それはそうと、フィちゃんにはもっと可愛いお洋服を用意しなくてはいけませんね」
「そうですとも姫様。ここはまず一着、パパッと作ってからまとめてお買い物に行きましょう、そうしましょう」
クラリスはミラが王城の外に出て行くことに、今までとは違う新しい何かを期待し始めているようだった。だとしたら、護衛の任務はきっちりと果たしてやらなくてはならないな。
さっそく、ミラの私室に行って裁縫教室をすることになった。やる気だけはあるルリが、いの一番に元気な声で手を上げる。
「はいはーい、私もお手伝いしたいです」
「コロンもでしゅー」
「では早速、針と糸を持ってやってみましょう。姫様、今日は【魔法のはり】と【魔法のはさみ】は必要ありませんからね」
「えー。けちー、いーじゃんかー」
「ダメです、姫様。ゴーレム仕様の服を着たフィ様がロボになったら、かわいそうです」
「えー、ロボなフィちゃんも可愛くない?」
この世界に、ロボットってあるのか――ゴーレムがあるから、あるのか。そうか、でも電子電気式というよりは、動力含めて魔法なんだろうな。
そんな横で張り切っていたルリが、もう泣きそうな顔をしている。
「クラリス先生、……できません」
「ああ、ルリはどうして料理といい裁縫といい……なぜ」
「うう、どうしようクロセくん。ぐすん、私、女子力が低すぎるよぉ」
大きくぱっちりした綺麗な紅い瞳にウルウルと涙を浮かべて、薄い桜色をした唇をへの字に曲げて――ああ、見えないはずの白くて長いウサ耳も、へにょりと垂れてしまっている。
これはどうしたらいいんだ、などと現実逃避しながらも考えていると、コロンが。
「コロンにもできまちた!」
「ぐはぁ! お、おねーちゃんの立場が……」
おおぅ。できた娘のコロンさんが、へっぽこおねーちゃんに止めを刺しました。これは……もう。
「ルリ、どんまいな」
「クロセくんが冷たいです」
「そうは言っても……人には向き不向きがあって」
「うー、ううー、うーうー」
とうとう唸り出してしまった、我が家の残念おねーちゃん。はあ~、しょうがない。布を四角く切って、額縁縫いだけなら何とかなるか?
「ああ~、ルリさん。俺のハンカチでも作ってください」
「わーい、まかせて!」
「ハクロー……。あんた、本当にルリに甘いわよねぇ」
呆れた顔で肩を竦めていたアリスに向かって、拳を握りしめて見せるルリさん。
「アリスちゃんのハンカチも作ってあげるね!」
「え? いいの? ホント?」
「じー……」
アリスだってルリにはよっぽど、ダダ甘だと思うんだがなぁ。
「な、何よ、ハクローはちょっとあっち向いてなさいよ」
「えー」
とか、役に立たない戦力外がガヤガヤやっているうちに、目的の服をサックリ完成させるプロ級のミラとクラリスの二人。
「きゃー、フィちゃん可愛い!」
「さすが姫様、裁縫だけはお上手。フィ様、とてもよくお似合いですよ」
「クラリスはいつも一言多いですよ」
結局、ルリからは布を四角く切っただけの、縁取りの無いハンカチもどきの唯の布切れをもらった。額縁縫いも、ルリさんにはまだまだ難易度が高かったようだ。
アリスはそれでも何だか嬉しそうにして、いそいそと丁寧に折り畳んでいたかと思うと、口元をニヤけさせながらスカートのぽっけに大事そうにしまっていた。
「うふふ」
はぁ~。まったく、ホントにアリスはルリに甘い。
「ああ、大切にするよ」
そうつぶやいて、俺もその【女神■■■■■■■の祝福】の超レア付与効果がついた、ハンカチっぽいものを【次元収納】に大切にしまうのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
出来立ておニューのミルキーホワイトなワンピースを着た、フィの身の回りの物を買いに、暇そうにしていた礼拝堂のフランにも声をかけて大通り商店街までお買い物に来ている。
みんなで昼食を屋台で買い食いしながらで、ぬいぐるみのビーチェも一緒だ。買い食いはしないけれど。
やはり妖精は珍しいらしく、ルリの膝の上に座り込むフィを見ると、特に女性と子供が寄って来て大変なことになった。
念のためフィにも【ドライスーツ(防壁)】をかけてあるので心配は無いのだが。中には拝み始めるご老人まで出る始末だったのには、流石に参った。
あまりの人だかりに、コロンとビーチェに黒サングラスを【時空錬金】で錬成して装着させて、ルリとフィの両脇をSP(セキュリティポリス)として固めさせた。
「すちゃっ」
「おー、コロンさん。かっけーです」
「えへへ~」
コロンの小さな顔にピッタリフィットしたアーバンカットのサングラスで、角度によってはブラックカラーではなくレインボーカラーにも見えるミラー仕様を装着して、ニコォ~と笑う可愛い銀狐の少女。
すると、それを見て腕組みをしたアリスがフンフンと頷いて見せる。
「確かに、コロンに何故か似合って、凄く格好いいじゃないのよ」
「ちなみに、そのグラサンは瞳に優しいUV99%カット仕様です。しかも【ソナー(探査)】に連動して、マップ上に敵マーカーを表示させる自動マッピングシステム機能付きという優れモノで――残念ながら、現時点では通信機能の実装は実現できていないが、近い将来には」
「ハクロー、話が長い。コホン――わ、私にもひとつ頂戴よ」
「言うと思っていました。こちらをどうぞ」
いつものことなので、あらかじめ用意していた黒サングラスをアリスに渡すと、はいはーい、と手を上げるルリ。
「あー、クロセくん。私も、私も~」
「え? ルリさんもですか?」
「仲間外れは嫌だー」
「はいはい、ちょっと待っててくださいね」
「いーなあ、クロセ様。じゃあ、私も欲しい!」
「あー姫様、ずるいですよ」
両手を上げてアピールするミラに、ちょっと恥ずかしそうに欲しいアピールをするクラリス。おまけに何故か、シスター・フランまでが控え目に手を上げているじゃないか。
「ハクローさん、ルリ様とお揃いで私も欲しいです」
という訳で、フィを取り囲む謎の一団は黒サングラスのSP部隊にジョブチェンジしていた。
ええ、その後は当然、いつものジェラートの屋台に並ばせていただきました。お昼時ともなると、長蛇の行列というものになっておりましたが。
フィはルリの膝の上でジェラートをコーンではなくカップに入れてもらって、それに顔を突っ込むようにして食べていた。もちろん、次の店までに完食し切っていたのは流石だ。
その後、アリスのいつもの洋服屋さんで、ようやく本来の目的である、妖精フィの普段着やら下着やら靴やらを買う。
このサイズを普通に置いているのは何故だ。それよりも、店員さんは黒サングラスのSP部隊に何やらインスピレーションを受けたらしく、ダッと奥に走って行ったっきり今日は帰って来なかったのも気になる。
ああ、フィの服を選んでいるときの六人の女性達には決して近づいてはいけない――そう、女神の神託が告げている――『汝危うきに近づくべからず』と。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「あんた達、何だいその格好は?」
お買い物ツアーの恒例となった、肝っ玉ドワーフ母さんの鍛冶屋に来ている。店の前を取り囲んだ黒サングラスのSP部隊に、流石の肝っ玉ドワーフ母さんも何事かと店先まで出て来てしまった。
「『アリスと愉快な仲間たち』あらため、『お姫様と謎のSP部隊』だ」
「あんた達はいつでも楽しそうで、ホント羨ましいねえ。
おや珍しい、妖精さんじゃないかい。妖精さん、悪いこたぁ言わない、こんな人たちの真似しちゃダメだよ」
「わかった」
「フィちゃん、酷い。おねーちゃんは悲しい!」
素直なよい子の妖精フィは淡々としているが、黒サングラスをかけた怪しさ満点のルリさんは、そうも言ってられないらしい。
「あ、あれは」
そんなルリは放っといてフィは店内に展示されている、小さなコップとスプーンのセットに向かって飛んで行く。
取り残されたルリは、がーん、と『車椅子』に座ったままで突っ伏してしまった。
「ああ、それは【魔法の小さなカップ】と【魔法の小さなスプーン】さね。付与効果はレアの【暴食】と、いつもの【物理強化】【自動修復】が付いてるよ。
そのサイズだと、誰も買ってかないんだよ。買ってくれるよ、な? な?」
「やっぱりあるのね、小さな【魔法シリーズ】」
アリスが諦め顔で肩を竦めて見せる。しかし、おねーちゃんなルリとしては、そうも言ってられないらしく。
「クロセくん、フィちゃんが腹ペコキャラにならないといいのですが……とっても心配です」
「既にフードファイターとして、キャラが立ってしまっていると思うけど」
「コロンの料理もいっぱいたべる?」
思わず窓の外の遠くの空を見てしまったが、同じように遠くを見据えるコロンさん。しかし、その拳はしっかりと握り締められていた。
「きゃー、あの小さなカップとスプーンのフィちゃんとのコラボは、絶品です!」
「はい姫様、不思議の国に一歩前進です」
ワクワクといった様子で、買え買えと熱視線を向けて来るミラとクラリス。と、意外なことに、ツボにはまったのかシスター・フランまでが拳を握りしめている。
「これは絶妙なサイズバランスですね、まさに女神様の御業です」
はいはい、買いますよ。買うけど、ホントにこれでごはん食べるのかな。
でも、ぬいぐるみのビーチェでは活性化されていない【暴食】のスキルが、いったい妖精のフィにどう影響するのかがとても心配なんだが。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ついでに、昨日のクエスト報告のため冒険者ギルドへ。ちなみにギルド会館でこれ以上アリスに変な噂が立っても困るので、黒サングラスは外している。
このフルメンバーで冒険者ギルドに来るのは初めてなので、特にお姫様へのいつものテンプレを警戒しつつ、慎重にギルド会館の扉を開けて中に入る。
すると、前回同様にざわめきがピタリと止まり、ひそひそと小声が聞こえてくる。
「あれは、巨人殺しの【紅の魔女】だ」
「うわ、しかも【紅の魔女】に手下が増えてるぞ」
「妖精まで【紅の魔女】は手下にしてるのか」
「こら、指を差すな」
「美人ばっかりなのに、何と勿体無い」
……なんだか、『二つ名』が噂と一緒に、独り歩きし始めているような気がする。
「なあ、アリス。さらに酷くなってないか?」
「くそっ、なんでよ」
ひそひそ話をする冒険者達を、その魔眼の視線だけで殺せるのではないかと思うほど、紅い長髪を逆立てながら睨みつけるアリス。
「わわ、美人って言われましたよ。クロセくん、聞いてましたか? ねえ、聞いてます?」
そしてそんなことよりも漏れ聞こえてきた『美人』という単語に、耳ざとくも頬に手を当ててテレテレしながら反応するルリさん。
「はいはい、美人美人」
「ぶー。クロセくん、何か投げやりです」
「コロンもびじん?」
「ああ、美人さんだ。お父さんは、とっても自慢だぞ」
「わーい。コロン、ハク様大好きぃ~」
ひしっ、と抱きついて来る可愛いコロンに、横で真っ白な頬を膨らませて、ブー垂れている残念ルリさん。
「ぶーぶー。クロセくんがいぢわるです、ぶーぶーぶー」
「わかった、わかったから。ルリさんも美人さんデスヨ」
「きゃー、そんなあ。クロセくんったら、女神のように神々しくも美しい理想の女性だなんて~」
「言ってない、そんなこと言ってませんよ。ルリさん、そんなクネクネしてもダメです」
そんな頬を両手でおさえたままテレテレしているルリに、余計な事を言い出すぽんこつシスターのフラン。
「ああ、ルリ様の美しさは女神様そのものの、真実の美を体現されていますぅ!」
「流石は『二つ名持ち』のアリス様です。昨日の偉業がもう王都じゅうに知れ渡っています」
「しかし姫様、私達も仲間に数えられていますよ」
「え? それは……困りましたね」
周囲をキョロキョロと見回していたクラリスのつぶやきに、一気に嫌そうな表情をするミラさん。
すると、誰もが近づかないこの恐るべき【紅の魔女】の集団に、音も無く寄って来て腰を折るスラムの親分。どうもアリスの前では、『ボス』よりも『親分』と呼ぶ方が通りが良いらしい。
そしてアリスに向けて小さな声で、しかし、ギルド会館の誰にでも聞こえる低くよく通る声で話しかける。
「確かな筋の情報ですが、姐さん達を狙っている、恐れ知らずな馬鹿上級貴族がいるようなので、まあ必要はねぇでしょうがお気をつけてくだせぃ」
「こら、【賢者】で【聖女】な私を、姐さんと呼ぶなと何度言えば分かるんだ」
ガッ、と掴んだ親分の額をアイアンクローで、ミシミシ言わせ始めるアリス。
「ああ、痛い、痛いです、姐さん痛いです」
「わざとか? わざとなのか?」
ああ、だから『ボス』じゃなくて『親分』なのか。そのうち『舎弟』がスラムの裏路地にずらっと並んで、アリスに向かって「姐さん、お疲れさんっす!」とか言って出迎えるようになったりするんだろうか。
「ギロッ」
うわ、アリスさんレーダーに引っかかったようだ。怖いな~。でも、そんなに白目むいて睨むと、本当に一般人じゃないみたいですよ。
ゴチン
「あいたぁ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
そうして、王城の病室での夕食のテーブルに、フィが買って来た【魔法の小さなカップ】と【魔法の小さなスプーン】がついに堂々デビューすることになる。
そして、後世において伝説となる、『【暴食】の妖精』が今ここに爆誕したのである。
目の前には【魔法の小さなカップ】に取り分けられた料理を、まるでわんこそばを掻っ込むようにして【魔法の小さなスプーン】で小さな口に放り込んで平らげ続ける、レア付与効果【暴食】を最大限に発揮した妖精フィの姿があった。
「あぁ、やっぱりこうなってしまったか」
「ハクロー、ちょっとこれは……でも可愛いんだけどね」
「もう、おねーちゃんではフィちゃんには勝てません!」
「戦う【料理人】としてその勝負、いくらでも受けて立ちゅのだぁ!」
こうして、結果的にコロンの【料理】スキルはLv4にまでレベルアップすることになる。
ちなみに現時点でレベル4のスキル持ちは、最初からLv10ばかりのアリスとルリの【鑑定】以外ではパーティーに誰もいない、最高位で誇って良いはずなんだが。
「そ、それではフィさん、【魔法の小さなカップ】と【魔法の小さなスプーン】を両手に持ってぇ、ハイチーズ」
パチリコ、と伝説が生まれたその記念に、みんなでいつものスマホによる写真撮影を忘れない。
見ていただけで少し胸やけがするのでさっぱりするためにも、女性はみんなでフィを連れて初めてのお風呂に入っている。
今日は大丈夫……だと思っていたんだけどなぁ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
湯船にプカプカと浮いているフィに、ルリが羨望の眼差しを向ける。
「フィちゃんってあれだけたくさん食べても、実はボンキュッボンのナイスバディーだよね~」
「そう?」
「そうですよ、またおねーちゃんは負けてしまいました」
ガックシと項垂れてしまったルリの横で、自分の少しだけふっくらしてきた胸を持ち上げてつぶやくコロン。
「いーな、ばいんばいん」
「くっ、胸囲の実寸では負けてない……だが、しかし、違うだろ……それは」
ああ、アリスさん、115才のミニバストにやられちゃったようです。大丈夫、アリスさんもあと100年ぐらいすれば、きっと、いつか、たぶん……どうにかなる、かも。




