表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AKIBAALIVE -overture-  作者: 一々葉(PSYCHOFRAME)
第2話 『アドベントソウル』
25/27

15 戦いと決着と




「桜井……葦人ォッ!」


 蝶の羽に人型を貼り付けたような姿の華京院がその身に纏う薔薇の蔦を鞭のように叩きつけてくる。


 間合いが読みにくいが、後ろ2メートルを飛び退り避ける。

 バシィッ!という音とともに蔦が廊下の床を抉った。


(……こんなのガードするの無理だろ)


 避けててよかった。

 一瞬、蔦を掴んで相手の動きを制限しようかと考えたけど、実行しなくてよかった。


「ちっ」


 華京院は凛音や真砂たちにも蔦を伸ばしている。

 真砂は言うまでもなく、凛音もまた危なげなく避けていた。


 警察官ということである程度動けるのだろうと思っていたが、これなら心配することもなさそうだ。


 どちらかというと心配なのは自分自身だ。

 華京院のヘイトを買っているのは俺だし、こちらに向けてくる蔦の量はかなり多い。


「うっおっ……とっ……」


 それを丁寧に避ける作業はまさしく綱渡りである。


「桜井葦人、どこまでもうっとうしい……」


「いいからもうやめろ! こんなことしたら大騒ぎになるどころじゃないぞ!」


「うるさい……桜井葦人は消えてなくなりなさい」


 華京院上下覇はいくつかの蔦を纏めて1つの太い縄のように突いてきた。

 鞭の軌道に慣れていたところに直線的な攻撃だ。


「っ!?」


 腕を重ねて華京院の攻撃をうける。


「……ぐがっ」


 筋肉が圧迫されることに悲鳴を上げ、骨へかかる圧力にミシミシときしむ音がする。

 踏ん張って耐えれるものではなく、衝撃とともに俺は吹き飛ばされた。


 後方のバリケードに突っ込む。


「きゃあああ!」


 がしゃあああんと大きな音を立ててバリケードが崩壊する。

 バリケードに使われていた椅子やら机やらに埋もれる。


「葦人君っ!!」


「かっはっ……」


 背中から突っ込んだため肺から空気が吐き出され、呼吸困難に陥る。


 それよりも感覚のなくなっている腕は無事か……っ!?

 腕は……折れてないっ!


 動く……よしっ。


 すぐに現状を認識し動こうとするが、叩きつけられた衝撃で意思とは無関係に体が動くことを拒否する。


「とどめよ」


 やっべぇ……!


「桜井様っ!」


 見ると俺に集中していた華京院に対して、真砂が蔦をかいくぐり正拳突きを食らわせる。


「……ぎっ……よくも……」


 華京院もやはり吹き飛ぶが、

 俺とは違い羽を羽ばたかせて浮遊することで衝撃を和らげていた。


 反撃とばかりに華京院は蔦を振ろうとする。


「甘いわよっ」


 凛音は廊下の壁を利用し、三角飛びの要領で飛び上がる。

 浮いている華京院の頭部に打ち降し気味の強烈な回し蹴りをお見舞いしていた。


「ぎっいいいいいいいっ」


 昆虫の断末魔のような耳障りの悪い悲鳴を吐き出し、廊下に叩きつけられる。


「ぐぅ……よくも……よくもっ!」


 ふらふらと立ち上がり華京院が憎しみの篭った目で俺たちを見る。


「あんたたちなんか……いらない……っ!!」


 華京院が手を一振りする。

 毒々しい色をした鱗粉が俺たちにまとわりつく。


 意識が……奪われるような感覚がある。

 華京院に対して絶対服従したくなるようなそんな気持ちが止め処なくあふれてくる。


 彼女のためなら這い蹲り足を舐めることすら厭わない。

 彼女のために俺は何ができるのだろうか。


「葦人君っ!!」


 鈴音が俺に近づいてくる。

 そういえば、こいつは華京院の反対派だったな。


 彼女を邪魔するモノは排除しなくては。


「……え……あし……とくん……?」


 俺の目を見て違和感を覚えたのか、鈴音が戸惑いながら問いかけてくる。


 この目。

 前にも、似たようなことが……


「ああああああっ!!」


 ごんっ!!と盛大な音を出し壁に頭を叩きつけた。


 頭が割れどろりとした血が流れる。

 じんじんとした痛みが走るが、それでいい。

 意識ははっきりした。


 意思を強く持て……!

 また鈴音を怯えさせるつもりか、俺は!!


「私に……姉さんを攻撃させるつもり……っ!?」


「ふんっ!!」


 他の2人は無事かっ!?と見ると、真砂と凛音は自力で普通に華京院の『魅了』を解除してた。


 真砂はまだわかるけど、凛音の鈴音が関係したときの意志力凄いな。

 1人だけ怪我を負った俺だ。


「何なのアンタたち……何で揃いも揃って魅了が効かないのよ」


「姉さんよりも魅力のある存在がいるわけないでしょう?」


 ああ、うん、そうな。


「精神系攻撃には多少耐性がございますので」


 真砂は物理攻撃にも耐性ある。


「ならば、アンタたち私の言うことを聞きなさい……!」


 華京院が鱗粉を拡散する。


 TRPG的に言えば、抵抗判定に成功したからか俺たちはもう魅了に惑わされることはなかった。

 しかし華京院の狙いはそこではなく……。


「「「…………あ、あああぁぁ」」」


 周りで倒れてる教師や生徒たちがゾンビのように起き上がってきた。


「あいつらを捕らえなさい。桜井葦人は私が裁きを下すわ!!」


 ああ、そういう……。


 この騒ぎで学院にいる生徒や登校してきた生徒たちが集まっていたことが俺たちにとっては不運だった。

 廊下を埋め尽くすほどの人の群れが雪崩をなして俺たちに詰め寄ってくる。


「うおああああああああああっ!」


 立ち向かおうという気は全くない。

 すぐに背を向け逃げ出す。


 普通の一般生徒だし下手に怪我させれないぞこれ!


「ちっ……めんどくさいわね」


「下がってくださいませお嬢様、姫様!」


 崩れたバリケードを越えて一時撤退する。


 バリケード側のやつらは基本的には最初の騒ぎで逃げ出していたので、こちら側からなら俺たちも逃げられる。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「桜井様、このままですと……」


「ああ、そうだな。時間をかければかけた分俺たちを追ってくる人数は増えるな」


 いくら始業が始まる前とはいえ、この学院にいる生徒たちは学院の規模を考えると追いかけてくる人数よりもっといるはずだ。

 華京院が残った生徒やこれからやってくる生徒に対して何もしないということはないだろう。


 いったん逃げたが、すぐにでも決着を付けなければ厳しくなる。


 そのためには……


「仕方ないわね。あんまりやりたくないけれど囮になってあげるわ」


「いや、華京院が固執してるのは俺だ。囮になるなら俺がやるべきでは」


「ぜっはっ……た、たぶんなのですけど」


 走りながらの会話だからか鈴音が息切れをしながら答える。


「上下覇ちゃん、最後に葦人君を裁くみたいなこといってたのです。

だからきっと葦人君が現れたら直接倒そうとするとおもうのですよ」


 そういえば言っていたな。

 直接対峙できる可能性でいうなら俺が一番高いのか。


「それにあまり考えている時間はございません」


 向かい側の校舎にも操られていると思われる人の群れが見えた。

 このまま突き進んでいくと合流する形だ。


 もう十分、華京院と操られた生徒たちは離れたか……。

 ならば仕掛けるなら今がいいタイミングでもある。


「わかった。頼む!」


「承知!!」


 真砂は後ろからやってくる群れを待ち構える姿勢をみせる。


「真砂!?」


「桜井様、大丈夫です。ここは絶対に通しませんので」


 自信のある様子で真砂は答える。


「ここより先行く道はないとお知りください。『絶対防壁』!!」


 瞬間。

 世界が虚構に侵食される。


 真砂を中心に青い光が走ったかと思うと、彼の手を中心に青いオーラの壁が出現した。


 そこに雪崩れ込む人の群れ。

 彼らはまさに壁に阻まれたようにべたべたと手をつくしかできていない。


「『絶対防壁』は完全なる物理防壁です。たとえ核兵器だろうと、光学兵器であろうと、放射線だろうとこの壁を通ることはできませんゆえ、安心して先に行かれるとよろしいでしょう」


「じゃあ私はあっちの校舎の群れを誘導するわ」


 そう答えて、凛音はスピードを上げて駆け抜けていく。


「では俺は華京院のところへいってくる。鈴音は真砂とここで待っててくれ」


「あー……一緒にいきたいけど確かに私はここで待ってたほうがよさそうなのです。葦人君、気をつけてくださいね」


「ああ!」





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 校舎をぐるりと迂回して元いた場所に戻ると、華京院の他には操られている生徒は誰もいなかった。

 華京院は倒れていた愛姫を介抱するように膝枕している。


 今しかないか。


「わざわざこちらに向かってくるなんてどういうつもりなの、桜井葦人?」


「お前の暴走を止めにきた」


「私は暴走してもなければ、間違ってもいない!」


 俺の言葉にかちんときたのか華京院は否定を叫ぶ。


「それはそのアドベントソウル状態を解除してから言え」


 今の華京院の状態はどうにも攻撃的になりすぎている。

 それほど面識があるわけではないが、ここまでのことをするように見えなかった。


 会議のときもあくまで言葉による展開をしていた。

 ……多少感情的ではあったけども。


「もういい。アンタが消えればそれで解決なのよ」


 愛姫をそっと横たえて、華京院は愛姫から離れる。


「桜井葦人……1人で私を止められると思ってるの?」


「止めなきゃならんなら止めるだけだ」


「アンタも私を間違ってるというのね……っ!」


 例の蔦を複数一斉に伸ばし俺を攻撃してくる。


「ぐぁ……がっ……!」


 多角的に攻められるが、まともに食らわないのであればそれでいい。

 遠心力を利用する武器は内側に潜り込めればその威力は半減する。


 スワロウテイルにもらった剣アルカナであるインペリアルシールドの効果が適用されているのか、思ったよりダメージは少ない。

 これなら……!


 文字通り身を削りながら、多少のダメージにはかまわず華京院に肉薄する……!


「バスタードソード!」


 A能力によって剣アルカナを具現化する!


「……なっ……!」


 剣を振るう直前、華京院の驚いた表情が見えた。

 普通の人間には耐えられない密度の攻撃だと彼女も思っていたのだろう。






 ぎぃん……ッ!!






 しかし、俺の剣は弾かれ華京院に届かなかった。


「な……ん……」


 続く鞘による棒術で俺は体勢を崩され、うつ伏せに倒される。

 そのまま鞘を上手く関節に噛ませる。


 体重差があるにも関わらず、愛姫が器用に俺を拘束していた。


 その瞳は意思を感じさせない。

 愛姫はいつも刀を持ち歩いていたし剣術を修めているというのも知っていたが……、操られた状態でもこれほどの動きができるのか。


「……ありがとう、みかん」


「華京院……お前……」


「なによ」


「愛姫を操ってまで何してるんだ……」


「みかんには友達として協力してもらっただけよ」


「あえていうぞ」


「……なによ?」


「お前は間違っている」


「……また……っアンタは私を否定する……っ!」


「さっきまでは別に否定しようと思って言ってたわけじゃない」


「そんなのうそよ! あんな風に言われて否定されてないと思えるわけないじゃない!」


 さっきの話は俺も流されて言ってた部分があるし、そのまま華京院の人格否定に近いことを言ってしまった。


「確かに、あれは言いすぎだった。それについてはすまない」


 だが、


「それでも今のお前がやってることは駄目だろう。自分の気に入らないことを力でどうにかしようとしたあげく、友達すら利用し操る。そんなものお前の望んだ世界に無理やり変えようとしてるだけだ。誰の賛同も得られない」




「お前は本当にこうしたかったのか?」



 淡々と諭すように。


「うるさい!」


 癇癪を起こし、華京院は頭を振り乱す。


「もういい! もうこれでいいのよ! こうすれば少なくとも世界はよくなるんだから!」


「お前にとっての世界がな」


「あああああああああああああっ!!」


 華京院はもはや俺の言葉を聞くつもりはないのだろう。

 耳に手を当て叫びながら、すべての蔦を1つに纏め上げる。


 纏め上げた蔦はぐるぐると蠢き、定形を保とうとしない。

 それは巨大な1つの槍のようなものだ。

 そこに何のエネルギーが加わっているのかバチバチと放電現象も始まっていた。


 放電とその大きさで廊下や壁が焼け付き、がりがりと削られていく。


「桜井葦人っ、もう、死んで!!」


 明確な殺意が向けられ、蔦の槍が解き放たれる。

 それは愛姫が俺を拘束していることを忘れているかのように、周りの被害を度外視した一撃だ。


「――――悪いな」


 結局、説得もできなければこんな手段でしか解決できなかった。


 ――――運命交換。




……――ザッ……ザアアア――アア――――……――




 運命は交換され、槍に蓄えられたエネルギーはすべて華京院に向けられた。


「ぎ……あああああああああああああああああああああっ!!」




 蝶の羽が散る。

 はらはらと鱗粉を散らし、華京院は光の皮膜に包まれた。


 そうして一瞬強く発光した後、するすると光の皮膜が解かれていく。

 そこには異形の姿を失い、学生服に身を包んだ華京院が横たわっていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ