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AKIBAALIVE -overture-  作者: 一々葉(PSYCHOFRAME)
第2話 『アドベントソウル』
20/27

10 初心者と揚羽蝶と




 その後メイド喫茶に戻った俺たちはメイド喫茶を後にし、またゲーセンに来ていた。


 鈴音が最後にアポカリプス#0をやって帰るというので、ならば全員で行くかということになった。

 凛音はアルターカードを持っていないため鈴音のプレイを見ているつもりらしいが。



『アバターカードを登録してください』


 とりあえず、前回使ったアバターカードというものを挿入口に挿入してみる。


『アバターネーム:SAKURAI=ASHITO 性別:男』


 画面上には俺の名前が表示されているし、現実と同じような姿のキャラクターが映し出されている。

 前回のプレイ後に聞いた話だが、このゲームは自分のキャラクターについて自由にエディットできるらしい。


 俺はそんなことをした覚えは無いので、恐らくあの2人の仕業だろうと思っていたのだが、アバター作成は本人にしかできないことだという。


 にもかかわらずこうして出来上がっていることは不思議に思うが、作成にあたってデフォルト素体となるのは本人の身体であるためそれをそのまま持ってきてしまったのだろうと推察した。

 本名で登録されたことは気に入らないが、まぁこうなってしまっては仕方ない。


『以上のデータでゲームをプレイしてよろしいですか?』


「ぜったいにNO」


 絶対にノゥ。姿も変えたければ名前も変えたいのですけど?


『申し訳ございませんがこちらのデータをお使いにならない場合、完全にデータを削除し新規データからはじめることになります』


「そうなのか……」


 そういえばこのゲームは脳波パターンの解析による仮想現実ゲームであるためか、1人1アカウント1キャラ制限があるというのだ。

 やり直すには完全にデータの削除がいるわけで初回に引いたウルトラレアもリセットされるということになる。


『問題がないのであれば、ただいま認証しているカードでのプレイをお勧めします』


「せめて名前を変えたい。可能だろうか?」


『1度登録を済ませてしまいますと、プレイヤーネームの変更は致しかねます。ヴィジュアル面での変更は誤差範囲内であれば修正可能です。


「そうか……。仕方ない」


 どうしようもなさそうなので、そのままやることにした。


『では、サクライさんのアポカリプスへの旅路が幸多からん事を』


 アナウンスの言葉をどこか遠くに聞きながら、不意に意識が途切れた。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「戻ってきたようだな」


 例の曖昧な空間で俺は黒騎士と対峙していた。

 ちょうどいい、疑問に思っていることを聞いておこう。


「……聞きたいことがある」


 前回、黒騎士が運命といったこのカード。

 それはいったいどういうことなのか。


「ああ、貴様の運命のことか」


「なら話が早い。このカードはいったい何なんだ? このゲームはただのゲームではないのか?」


「その答えならばこのゲームはあくまでゲームだ」


 本当だろうか。


「ではなぜこのカードであんなことが起こせるんだ? 現実でなぜ能力が使える?」


「それを聞いてどうしようというのだ?」


「どう……って、アンタが渡してきたんだろう。自分の持ち物で解らないことがあるならそれを理解したいと思うのは当然だろう」


 わけのわからないものを使うということに抵抗感もある。


「私はゲームのことにしか答えられんな」


 あくまでゲームのキャラとしての制限があるのだろうか。


「ただ1つだけ言うなら……。来るべき時がきたとき……それは自ずと理解できるだろう。その時が来るまで、抗い続けるがいい」


 だがそう言った黒騎士は全てをわかっているかのような反応だった。


「今はただ、運命を見極めろ……」





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「ここは……?」


 意識がはっきりする。


 見覚えのない……ということはなく、やはり出てきたのは例のゲート付近だった。

 ただ前回とは違う場所のようだ。


 今度は周りに黒騎士もいない。


「…………」


 結局、黒騎士からはなんの情報も得られなかった。

 このゲームが普通のゲームでないことは確かなのかもしれないが、それがどういう原理でどういう意図で作られたのかなどわからないことは多い。


 機械などを調べた限りではいたって普通のゲームであるらしいのだが。

 黒騎士の反応や運命交換のカードを見る限り普通のゲームであるとは思えなかった。


「ここはアキハバラ。基本的に、プレイヤーはここからはじめるものです」


「アシト君やはー」


 と、声がかけられる。


 黒騎士はいなかったが、代わりというように真砂と鈴音と思しきキャラたちがそこにいた。

 黒い執事服のようなものを着た男のキャラと露出度の高い服を着た女のキャラだった。

 イメージに近いと言えば近いので戸惑いも少ない。


 遊びに来ていることを思い出し、意識を切り替える。


「そんなふうなキャラにしてるのか。普段と違って新鮮さがあるな」


 戸惑いは少ないが、やはり異世界っぽい場所で異世界っぽい服装で知り合いと話すと違和感が新鮮だった。


「アシト君もあんまり変わってないのにアシト君じゃないみたいなのです。どことなく目つきが優しく感じるのです」


「目つきが悪いのは俺のせいではないんで」


 そもそも姿かたちが同じ状態でプレイってアレだな。


「そういえば桜井様はアバター作成をしないままインしたのですね。無意識のうちにアバターを作った状態でインしているというのも不思議な話です」


「ですが、プレイヤーネームがそれで姿かたちがそのままではあまりロールプレイの意味はありませんしね。多少のごまかしですがこの衣装をお貸しします。あとはこのアイテムを使用なさるとよろしいかと」


 指輪と何かの布装備らしきものを手渡される。


「これは…………装備品? もらってもいいのか?」


「ええ、もちろん。このゲームには生産職というカテゴリーはありませんが、熟練すればモンスターの素材などから装備品の生産が可能になります。これは私が作った装飾品などです。

買ったものではありませんのでどうぞ気になさらず」


「普段の服と変われば多少は異世界で冒険している気分になるかと思いまして。ちなみにこのアイテムは外見を色々と変えられるものです。

永続的なものではないですが、しばらくはこれで新鮮な気分を味わえるかと」


「何か色々至れり尽くせりだが、ありがとう。ありがたく使わせてもらうよ」


 この服ならば多少の変装にもなるし、印象は結構変わりそうだ。

 本名プレイで姿も一緒というのはちょっとつらいものがあるし。


「いや、しかしこうしてゲーム中で会話すると奇妙なものですね」


「あ、そだ。私のキャラの名前はレイン=クロスリバーなので、A0のときはそっちで呼んでください」


「私の事はどうぞ、セバスチャン=バトラーとお呼び下さい」


 レイン=クロスリバーにセバスチャン=バトラー。

 鈴音をレインと呼んだのか。

 真砂のほうは執事らしいネーミングだ。


「オーケー、わかったよ。レインにセバスチャンな。時間も勿体無いことだし、さっさと何かしよう……って何すればいいんだ?」


 俺はこのゲームの予備知識が全くない。

 そのまま放り込んでそのままゲームオーバーになった記憶しかない……って酷いファーストプレイだ。


「詳しい説明は後で知ってもらいましょう。要はこのゲームのプレイヤーは人類の最後の希望として天獄界の者たちと戦ったり、各地を放浪してそこでのクエストをクリアしたりするものです」


「ふむ、なるほど。では、今回俺たちは何をするんだ?」


「亜人関連で何かの問題が起こっているようです。もしかしたら何かしらのクエストが発生しているかもしれません。近くに亜人のコミュニティがありますので、そちらの方へ参りましょう」


 あじん……なるほどファンタジーだ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 ゲートを使い、亜人たちの本拠地であるイケブクロへ。


 崩壊した街の合間に大木が軒を連ねている。

 ここは他よりも植生が豊かであり、亜人の中心地というのならなるほどと思う場所だった。


「もし人間たちが私たち亜人族との共存を望むのならば、魔界種や不死属の恐怖を取り除いて欲しい」


「魔界種は我らにとって天敵といえる存在。その恐怖がなくならぬ限り、我らに安息は訪れない」


 亜人の中でも一番の有名どころであるエルフのコミュニティに訪れた俺たちはエルフの女王からこのような話を聞いていた。

 この世界では亜人たちが脅威に晒されており、その最大要因が魔界種と呼ばれる種族だと言う。


 それ以外にも不死属、幻獣種といった存在がいるらしいが。


「だが、魔界種ではなく人間の3人組みに襲われた者がいる。ゲストとの小競り合いはあるものだが、これはここ最近集中的に亜人を狙っているゲストによるものだ。この世壊は弱肉強食。強くなるために他者を糧とせねばならない事情はゲストだろうと亜人だろうと同じなのだが、その狩り方がえげつないのだ」


 金髪の美しい髪を纏め上げ、長い耳が露出している。

 こうしてVRMMOとして目の前でエルフを見るとやはり感慨深い。


「そういったこともあって、私たちの中では人間と友好関係でいることに懐疑的…………否定的なものもいるというのが現状。亜人も一枚岩ではないため、ゲストもまた様々な者がいるのもわかっている。だがゲストと関係の悪い亜人もいるのは事実であり、このままだと大きな問題になりかねない」


「……?」


「ふふ。私がゲストに対して友好的なのが不思議か?」


 俺が疑問に思ったことを察したのか、エルフの女王が問いかけてくる。

 この美しき女王も独自のAIがあるのだろう。反応も受け答えも完全に人のそれと同じだ。


「ああ、そんなことをされてもゲストにこうして会ってるというのは……」


 女王というのだからどこの誰とも知らないようなやつにぽんぽん会うのもどうだろう。

 たしかに周りに護衛はついているけど。


「私個人としてはゲストとは友好関係を築いていくべきだと考えているのだ。過去の白焔の王のこともあるゆえな……」


 女王は俺をまっすぐに見つめてくる。さすがに女王というだけあって雰囲気ある。


「そうなのか。だから俺たちの話も聞いてくれてるのか」


 少し気圧され気味に納得したことを伝える。

 設定か何かか知らんが、過去にゲストに助けられたか何かがあったのだろう。


「そういうわけでな。この問題を穏便に済ませようとするならゲストはゲストでどうにかしてもらうのが一番いいのだ。他のゲストにも頼んでいるのだが、貴方たちにも頼みたい」


「なるほど、事情は分かりました。私たちの中にそのような者たちがいるのでしたら私たちが始末をつけるのが道理。引き受けさせてもらいます」


「どうかよろしく頼む」





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 女王から一通りの話を聞き、俺たちはアキハバラに戻る。


「私たちだけでやってもいいのですけど。さすがに効率が悪いので、ギルド街によって有志を募りましょう」


「ギルド街?」


「ギルドというのは私たちのような人間のプレイヤーが相互互助組織として作ったものなのです」


「それぞれのチームで作られたものをギルドと呼ぶのですが、『ギルド街』と呼ぶのは野良プレイヤーもギルド所属のプレイヤーも集まる場所やその斡旋を請け負っている場所のことです」


「ゲーム内で知り合いがいないときやソロで行動していて仲間が欲しい時などに目的に合致した人たちでパーティを組むように取り計らう場所でもありますね」


「基本的にこのゲームはソロで動くのはかなり厳しいのです。だからなるべくパーティを組もうとする人が多いのですよ」


 なるほど。




 そこは仲間を募るというだけあってか、ベタだがファンタジーの酒場とイメージするような場所だ。

装備も格好も様々なプレイヤーたちがいる。

 目的がないプレイヤーとか仲間を募っているプレイヤーなのだろう。


 そう思って仲間の募集を始める。




「え……レベル1……がいるのか……。今回は遠慮するわ」


「あんたら2人と組むならいいが、初心者のお守りはごめんだぜ」


「えー、レベル1? レベル1が許されるのは小学生までだよねー」




 確かにレベル1は紛うことなき初心者だ。

 やはり低レベルとPTを組みたがる人は少なく、俺がいることで仲間集めに難儀していた。


 そもそもギルドの目的からして弱いやつより強いヤツと組みたがるのは当然と言えば当然だった。


「悪い。俺がいることで思うようにいかないな」


「気にすることは無いのですよ。むしろ低レベル1人いるからって組むのを躊躇うような雑魚はこっちから願い下げなのです。持ってるアルカナカードを聞きもせずにレベルだけで判断するようじゃまだまだなのです」


「仕方がありません。私たちだけでやることに致しましょう」


「いや、2人は先に行っててくれ。俺は俺でもう少し仲間を探すことにするよ」


「いや……しかし、1人では仲間を見つけることは難しいかと……」





「そんなことでいいわけないでしょう!」


 ギルドに大きな声が響く。


「いや……そんなこといわれてもなぁ。オレたちはボランティアじゃないし」


「不真面目な人たちがいるのよ!? それを正さないでどうするの!!」


 見るとロングコートを着たグラマーな女性がギルドにいる人たちに突っかかっていた。


「…………? 一体どうしたんだ?」





 話を聞いてみた。

 彼女はどうやら俺たちと同じように、エルフを襲う3人組を討伐しようとギルドに仲間を募ろうときていた。


「だったら俺たちとパーティを組まないか?」


「あなたたちも例のクエストやってるの?」


「ああ、そうなんだ。だからよかったらと思ってな」


「ふうん……。まっ、やってあげてもいいわよ。こっちも人が欲しかったところだしね」


「オーケー。よろしくな」


「私は、スワロウテイル=バタフライ。呼ぶときはスワロウでもテイルでも好きに呼んでもらってかまわないわ」


スワロウテイルがなかまになった。




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