裁縫ギルド2
ソフィアの後を追って路地を抜けると、ギルドの裏庭に出た。
テニスコートほどの敷地には、井戸があって、小川が流れている。
敷地内には桶と盥が無数に並んでいて、多くの裁縫職人がそれを使って何かしていた。
「ここは染め物をするところだ」
ソフィアが説明すると、ああ、なるほどと合点がいく。
「織物を染めるのは普通にやるんだな」
俺が感想を述べると、
「一般的な染め物とは違うけどな」
とソフィアは俺に桶を手渡す。
「手伝えってことか」
「水を汲んできてくれ」
俺が小川に足を向けると、
「違う、井戸から汲むんだ」
と注意された。
「井戸か」
「小川は染め物をさらすところだ」
「ああ、なるほどね」
俺は両手に桶をぶら下げて井戸へ行き、水を張って戻ってきた。
ソフィアは既に盥へ染料を入れてスタンバっている。
「汲んできたぞ」
「ご苦労」
俺が桶を置くと、ソフィアは柄杓で水をとり、盥にかけた。
しばらく手で水と染料を混ぜて、頃合いを見ると、まっさらな布を投入して、
「良し、いいぞ」
とキララに合図を出す。
「わーい」
キララはビョンと盥に飛び込むと、盥の中で踊り出す。
「マサムネは桶にもう一セット汲んできてくれ」
「ああ」
俺はもう一度井戸に向かって水を汲んできた。
現場に戻ると、丁度最初の布を染め終わったところらしく、ソフィアはキララの長い耳を掴み、ヒョイと引き上げると、もう一つの桶に体ごと入れて、ジャブジャブとゆすいだ。
綺麗になったところで、今度は別の盥に入れて踊らせた。
「そっちの桶の水は川に流しておいてくれ。あ、真ん中の旗の下流にな」
ソフィアに言われたとおり、小川に水を捨てに行くと、指示通り旗が立っていた。
上流で布をさらして、下流は汚水を流す、という決まりか。
こうして5セットの布を染めると、真っ白だったキララの体はまだら模様に染まってしまった。
「どうするんだ、それ?」
俺が尋ねると、ソフィアは、
「ああ、大丈夫」
と言うと、白い粉を乱暴にキララの頭の上からぶっかけた。
そしてパンパンとそれを叩くと、キララは元の白ウサギぬいぐるみに戻ったが、果たして根本的解決になったのかどうかは不明だ。しかし、
「よし、白くなった」
「しろくなった」
ソフィアはドヤ顔で認定し、キララはニッコリ笑っているので、まあ、よしとするか。




