バステト2
良く髪の毛がボワッとした人物を『ライオン丸』と称する。
俺は実際その特撮番組を見たことは無いが、今時ググればライオン丸とは何か、すぐに判る。
バステト男は、まるきりライオン丸そのもので、顔もライオンそっくりだ。
ではバステト女のミケは、というと、ネコ科の特徴はあるものの、人間の女に近いし、多少産毛が多いが、フサフサと言うわけでも無い。
ところがバステト男は全身フサフサで、シロウトが見れば、とても同じ人種とは思えない。
「あんちゃん!」
ミケはバステト男に駆け寄った。
二人はバステト語で話し始めたのだが、さすがにファンタジーの世界とは言え、これは何を話しているのか、さっぱり理解できない。
「兄貴なのかね?」
俺はソフィアに訊いた。
「違うよ」
即座に否定された。
「あれ?あんちゃん、って言ってたぞ?」
「きょうだいと言えばそうなんだろうけど、実際の血縁関係は薄いよ」
「どういう事?」
「バステトってのは母系社会で、一族の最年長の女が族長になるんだ」
「ほう」
「その部族の集落で生まれた子供は、皆きょうだいになるんだ」
「それは?」
「子供は親のものじゃ無くて、部族全体の所有になるんだ」
「ああ、集落全体で育てるって事か。ライオンの生態みたいだな」
「ライオンって何だ?」
俺はソフィアから逆に質問された。この世界にライオンはいないらしい。
「いや、気にするな」
「そうか」
「続けてくれ」
「ああ、で、子供がある程度成長すると、男は集落から追い出されるんだ」
「やっぱりライオン・・・・いや、続けてくれ」
「女は残って共同体を形成するんだが、まあ、ミケくらいの年齢になると、社会勉強のために冒険者になる女もいる」
「なるほど」
「男は問答無用に冒険者になる。で、ある程度の知名度を得ると、どこかの集落へ立ち寄った際に、長老からクエストを受けるわけだ」
「ああ、それをこなしたら交尾する権利を得られる・・・・おっと」
ちょっと迂闊な発言だった。
「その通りだ。物分りが良いな」
ソフィアは華麗にスルーした。
「じゃあ、あの男はミケと同郷ってわけだ」
「そうだな。バステト男は常に放浪しているので、メッセージマンになる」
「パシリか・・・・おっと」
「その通りだ。何かメッセージをミケに伝えるたるに来たんだろう」
彼は何を伝えに来たのか・・・・ミケは何か丸めた表彰状みたいなものを渡された。
おっとバステト男は行ってしまったぞ。




