昼寝の後
昼寝から目覚めると、まだ日が高かった。
これで変な夢から目覚める、目論んだ俺の企みはもろくも崩れていた。
「なんだこいつ、勇者のくせに昼寝してるぜ」
寝起きの俺を囲んで、白人のガキが好き放題言ってやがる。
そのうち、一人のガキ・・・・カルキン坊やそっくりのヤツが、
「おまえ、勇者なのに城にいかないのかよ」
などとほざいてきた。
「何で俺が城に・・・・大体城なんてパンピーが入れる場所じゃ無いだろう」
「おまえは勇者だから入れるんだぞ」
カルキン坊やが俺を指差しながら囃し立てる。気に入らない。
「どけどけ」
俺はガキどもをかき分けて城門へ向かった。
大体俺は・・・・俺は城門に向かいながら思考してみた。
俺は誰なんだ?
名前も年齢も、何処に住んでいたのかも思い出せない。
アメリカって国があった。
インターネットって仕組みがあった。
プーチンと言うどこかの王様だか大臣がいた。
太平洋というでかい海があった。
俺は・・・・家族や交友関係は?
思い出さない。
いや、多分思い出さないんじゃ無くて、思い出したく無いんだろう。
たいした人間じゃ無かったはずだ、多分。
だからこんな異世界に飛ばされちまったんだ、多分。
あ、待てよ・・・・コレはネットゲームの中の世界で、ラスボスをクリアすると元の世界に戻れるタイプなんじゃないか。
そうだ、間違いない・・・・はずだ。
俺は得体のしれないプレッシャーに押しつぶされそうになるのを紛らわせながら、城門を潜った。