2-3 ジモティーズ(3)
準備運動をして、軽い練習を綾や絵里ちゃんとこなす。
さっきの騒動は二人ともやりすぎたと思っているみたいで、お互いに謝りあいっこをしてからはじめた。
バレーの腕前は、二人とも僕よりうまい。
綾は持ち前の運動センス。
絵里ちゃんは練習の成果。
今日も、それを存分に発揮していた。
けど、一通りの練習が終わって、今日来てくれた相手との試合。
その試合で『ジモティーズ』の大敗してしまった。
唯一、竹内さんだけが大車輪の活躍。
竹内さんは、中高と厳しい環境でバレーに打ち込んでいたため、かなりの上級者。しかしその反動として、楽しくバレーをする機会を設けたかったという。
だから竹内さんは、負けてもにこにこの笑顔だった。
「さあ、打ち上げ」
そして無事バレーを終えて、楽しみな打ち上げ。
近くのファミレスに入り、みなとおしゃべりを交わす。
今日は直もいるため、帰る時間を気にしなくてもいい。
「綾」
「ん?」
「ちょっとトイレに行きたいから立ってくれる」
「うん。わかった」
綾が席を開けてくれる。
僕はそこをすり抜けるようにして通っていき、トイレに行く。
そして帰り際、高校生の岩崎さんと一緒になる。
「今日のおたくさ、とんだハーレムだったな」
「僕がですか?」
おもわず立ち止って聞き返す。
「あの、綾って子と絵里がおたくを取り合いだったじゃないか」
「まさかそんなことは」
「まさかじゃないよ。私は結構遠巻きで見ていたけれど、なかなかの迫力があったさ。あれが女同士の戦いってやつか」
「そうですか。でも、綾にかぎってそんなことはないと思いますよ」
そう、綾にかぎっては絶対ない。
「ふーん。そんなこと言うんだ」
「ふーんって」
「おたく、そのうち刺されるんじゃない」
「何を言っているんですか?」
「いや、いっそ刺されちまえばいい。なんてーな」
にやにやと笑いながら言う岩崎さんは、けっこうな皮肉屋であることを知っている。
なのでこういった言動はよくしてくる。
もう慣れてしまったけど、最初のうちはとても苦手だった。
「ところでさ、おたく高校はどうすんの?」
「高校ですか?」
「そうだよ」
「そうですね。一応、直と僕は岩崎さんのいる学校を目指しています。あ、後、綾もです」
「そうかい」
「はい」
「まあ、知っている後輩もできるし、私としてもそれはよいな。でも、おたくと直ちゃんには頭の出来に違いがあるんじゃなかったかい?」
「直がレベルを下げるので」
「ふーん」
「それに学校は近い方がいいらしいですし」
僕がそう言うと、岩崎さんが満足げにうなずく。
「たしかに学校は近い方がいいな。私の友達には、電車などを使って通うことに憧れていた子がいた。けど、今ではラッシュの愚痴を聞かされるくらいだ」
「そうですか」
「まあ、それにうちの学校は面白いぞ。マンモス校特有の華やかさがあり、行事は豊富だ。それと、いろんな部活を自由に濫立できるのがいい」
「あ、それ前も言ってましたね」
「たしかにな」
「そして、岩崎さんは屋上部の話をしました」
「違う。屋上の平和を愛する会さ」
屋上の平和を愛する会。
とにかく、直が好きそうな部活だ。
無事、高校へ入学できたなら、まっさきに興味を示しそうである。
「ともあれ」
「はい」
「おたくは勉強をがんばらないとな」
そしてぽん、と肩を叩く岩崎さん。
僕を気遣ってか、めったにない励ましをしてくれる。
が、岩崎さんの顔はだんだんと笑みの形に変わっていく。
「笑ってますね」
「あはは、心にもないことを言っちゃったからだ」
「それはまた酷いですよ」
「ま、気にすんな。さて、そろそろ戻らないと大の方だと思われる」
「……」
下ネタもOKな岩崎さんだった。




