2-2 ジモティーズ(2)
体育館に着くと、もうみんなが待っていた。
ポールやネットなどの準備も出来ていて、あとはこちらがスタンバイするだけ。
今日は、手合わせをする相手が十人。
こっちは直と僕、綾、竹内さん、絵里ちゃん、違う学校の山口さん、高二の岩崎さん、そして、竹内さんの知り合いでもあるイケメンの長谷川さんの八人。
「人数足りている?」
体育館の中に入って開口一番、直が言う。
「まあ、足りているね」
「だったら私、見ている」
「やらないの?」
「ん。スケッチする方がいい」
「うん、わかった」
早くも直が戦線離脱。
どうやら非常事態と聞いて来ただけらしい。
結局、七人になり、ギリギリの人数となった。
「春、こっち」
「先輩、早く来てください」
幼馴染の綾と、後輩の絵里ちゃん。
二人が競い合うようにして僕を呼ぶ。
二人とも運動しやすい格好だけど、細部には違いはある。
綾はいつも来ていないせいか、体育着という格好。絵里ちゃんはロンTと短パンという自前の格好。
どちらがよりバレーに適している格好かは定かではない。
でも、目の保養には確実になる姿。
「春、どう?」
「え?」
まさか体育着の格好について聞かれているのか。
そう邪推してしまったが、綾にはそんなつもりはないみたいだ。
「んー」
僕の目の前でわたふたとする綾。
僕が黙っていると、綾が口を開く。
「私、髪くくってきたんだけど」
たしかに綾は、ミディアムの髪をくくっている。
「そうだね」
だからそう言ったら、問答無用でつねられた。
人前で猫かぶっているせいか、誰にも気づかれないくらいこっそりと。
「春、最低」
「え?」
「そうだねってさ」
「でも、そうだと思ったから」
「じゃあ、私の髪型なんかどうでもいいの?」
「そんなことないよ。綾はどんな髪型でも似合っているから、べつに言う必要ないと思ったんだ」
そう言うと、綾は押し黙ってしまった。
「いきなりずるい」
「?」
そして変な雰囲気になっていく。
綾と僕がどうしようもならなくなってきたところで、絵里ちゃんが割り込んできた。
「先輩達~、なにいい雰囲気になっているんですか」
「いい雰囲気?」
「はい、そうです」
これをいい雰囲気と言うのだろうか。
「いい雰囲気になんかなっていません」
綾も絵里ちゃんを諭すように説得している。
しかも、お嬢様モード。
「そうですか」
「ん?」
「だったら私にもチャンスが」
なにやら絵里ちゃんがつぶやいていたが、こっちまで聞こえない。
「絵里ちゃん。なんか言った?」
「あ、いえ」
「そう」
「あ、それと私の髪型はどうですか?」
「絵里ちゃんも似合っているよ」
絵里ちゃんは、いつもと同じくサイドにくくっている髪型。
活発な彼女らしい髪型で、やはりよく似合っている。
「わぁーい。ありがとうございます、先輩」
喜ぶ絵里ちゃん。
けど、なぜだか綾の機嫌が悪くなったような気がする。
「それよりも春」
「ん?」
「私と練習しよ」
「あ、うん」
いつもより不気味なくらいとりすましている綾が、僕の手をやんわりとにぎってくる。
お嬢様モードもいまだに継続中だ。
「え、先輩。私と練習するんじゃないんですか?」
「えっ?」
「だって、一緒に来れなくなったから、てっきりそうだと思ったんですが」
「そうだったっけ?」
僕は首をかしげる。
「春、絵里ちゃんと一緒に来る予定だったの?」
「そうですよ」
「春、どうなの?」
「い、いや」
なんだか得体の知れない二人の勢いに、飲み込まれてしまいそうになる。
「春、とにかく私と一緒に練習しよ」
「あの、綾先輩。ここは譲ってくださいね」
バチバチと火花が散っている。
これでは、まるで僕を取り合っているみたいだ。
「どうしたのさ。二人とも」
「春は黙ってて」
「そうです。先輩は黙っててください」
なんだかにっちもさっちもいかない状況になってきた。
しかし、そんなときである。
「三人でやったらいいんじゃない?」
一斉にふりむく僕達。
「七人で奇数だしね」
その竹内さんの鶴の一声で、騒動はやっと収まった。




