2-1 ジモティーズ(1)
鍋パーティーから三日が経ち、週末がやってきた。
今日は竹内さん主催のバレーボールの集まり、『ジモティーズ』の会に参加する日。
前日に直、それと綾も参加するという。
綾はバス通学なので、距離が遠く、あまり参加することがない。
だから綾が参加するのは、とてもめずらしいことだった。
ともあれ、直と僕は、雨が降る中、徒歩三分の場所にある地元の小学校へと一緒に向かって坂を上っていく。
雨が降ったこともあり、結局、後輩の絵里ちゃんとは別々に行くこととなる。
彼女はいたく残念がっていたが、自転車も乗れない状況で遠回りさせるのはしのびない。かといって、こちらから迎えに行くのもナンセンスだ。
「直」
「ん?」
直がこっちを向く。
「バレーするの久しぶりだよね」
「えっと……」
「どうしたの?」
「まだ、やるかどうかわからない」
「そうなんだ」
「ん」
直はうなずく。
傘をくるくると回しながら、歩を進める。
「直、そんなに回していると髪に水がはねるよ」
「ん」
案の定、髪に水がはねる。
「はねたよ」
「ん」
返事をしたあと、直は手櫛で髪を整えていく。
ついた水滴も取り払った。
「これで大丈夫」
「そうだね。元通りになった」
そして改めて、直を見る。
この湿気の多さにも負けない直の髪は、あまり手入れをしなくてまっすぐに整っている。
これは、一重の奥ゆかしい瞳とともに直の魅力の一つだ。
「ところでさ」
「ん?」
「どうして参加することにしたの」
話をさっきの続きに戻す。
「なんとなく」
「なんとなく?」
「ううん」
直は傘を傾げて、雨空を見る。
「雨だったから」
「そっか」
その論理性に納得はできない。
けど、まあ直ならあり得るだろうなと思う。
なにせ直は、僕の知らない賢さであふれている。
「春」
「何?」
「明日は晴れるといいね」
直がこっちを見て言う。
「そうだね」
「あさっても晴れるともっといいね」
「うん」