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ガルディオンNO.046

権力、金、そして有象無象の果てなき欲。

サイラス帝国が引き起こした戦争により、世界は混乱を極めていった。

帝国が戦場へ解き放った生物兵器の存在は、荒れ狂う二カ国の戦場に新たな絶望をもたらすこととなる。


「っ……!」

もがき苦しんだ末に、ラルクーザ兵の命の灯火が消えていく。

周りを見渡しても、もう動くものは何もなかった。ただ、実験を重ね完成した生物兵器の列だけが、屍の上を闊歩していく。


敵国であるラルクーザ王国は、『束縛の民』と呼ばれる大国だ。自然豊かで広大な土地を持つ。しかし、他の国にその資源を分け与えることをしない。

あの国さえ手に入れば、帝国の民は皆、飢えから解放され、豊かな資源の恩恵を受けることができる――誰もがそう確信していた。 


だから、人だけを殺せばいい。

ガルディオンの見た目は普通の人間と何ら変わりはない。特殊な装備も必要ない。

真の強みは、屈強な肉体でも戦闘技術でもない。その体内に宿した「毒」そのものだ。

戦場の空気を「毒霧」へと変える。

まさしく彼らは、対人用に特化した大量殺戮兵器だった。


「こちらNO.046、これより帰還する。」

ガルディオンNO.046は、壊れかけの通信機を手に取り勝利を報告する。

今日もこれで、やっと眠りにつける。

静かな隔離ポッドの中で、次の戦いに備えて身体を休める。それがいつもの日常だった。


――そのはずだった。


「構ええええーーー!!」

遠方のすでに半壊した砦から、タイミングを見計らったかのような怒号が響き渡った。

視線を上げると、見たこともない菱形の飛行物体が、無数にガルディオンたちの頭上へと飛来する。

上空で不気味な黒い粉を撒き散らし、直撃を受けた前線のガルディオンたちは、瞬く間に制圧されていく。


「くそっ…何が起きている…!」

ほんの少し吸い込んだだけで、喉が焼けるように痛い。

視界の先で、前方の仲間たちが次々と崩れ落ちていくのが見えた。


「ここを離れないと、まずい…」

通信を終え、本隊から少し離れた位置にいたNO.046は、咄嗟に身をかがめその場から逃げ出すことに成功した。


ふらつく足取りで、薄暗い森の奥へと身を潜める。

振り返ると、ラルクーザの火矢が戦場へと降り注ぐのが見えた。黒い粉に引火したのか、戦場は瞬く間に、炎に包まれてゆく。

炎は轟々と唸り、すべてを消し去っていった。


(ラルクーザも、ただでは負けないか……)


早期終結のために投入されたはずの生物兵器。まさか、敵がこれほど早く打開策を打ち出してくるとは。

それはサイラス帝国の思惑を根底から打ち砕く、ラルクーザの決死の反撃だった。


NO.046は、薄暗い森の奥へ進むが、徐々に世界が歪んでいった。激しい鼓動、頭の中が心臓の煩さに支配されていく。

ついに立っていられなくなり、その場に力無く倒れこんだ。


毒物兵器として完成されていたはずの肉体が、内部から破壊されていくような激痛。

指先から急速に体温が奪われ、冷えていくのがわかる。

ふと自分の手元に目を落とすと、血管に沿って、右腕に不気味な黒い紋様が浮かび上がっていた。


ああ、これは、見たことがある。

――俺はもう、死ぬんだな。


そう悟ったNO.046の意識は、抗う術もなく底知れぬ混沌の中へと沈んでいった。

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