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四人でいることが、日常だった ――名前のない楽園――  作者: いもたにし
第六章 檻を抜け出した獣、狂気を溶かす甘き許容
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第六章・エピローグ

――side. 井神 凉――


深く沈み込むような微睡みの中から、ふと意識が浮上した。

時刻は、深夜の二時を回ったところだった。


寝返りを打つと、すぐ隣から規則的な、甘い寝息が聞こえてくる。

カーテンの隙間から差し込む青白い月明かりが、俺のベッドで身を丸める美琴の滑らかな背中を照らし出していた。


「……んっ……」


俺がそっと頭を撫でると、美琴は心地よさそうに身をすり寄せてくる。

彼女特有の百合の香りと、先ほどまで交わしていた生々しい熱の匂いが混ざり合い、部屋の中に濃密な空気を生み出していた。


美琴の艶やかな髪を指先ですきながら、俺は静かに暗闇を見つめた。


修学旅行での四日間。それは俺にとって、ただの非日常の思い出にとどまらない、決定的な転換点だった。

他校生に向けた、あの抑えきれなかった暴力性。自分の中に巣食う"獣"の存在に気づき、それを白日の下に晒してしまった時の恐怖は、今でも肌が覚えている。


だが、俺はもうそれを恐れない。

俺が俺自身の歪みを見つめ直し、受け入れることができたのは、玲茄が、茉依が、悠希が、それを否定せずにすべてを"許容"してくれたからだ。


この身に宿るどす黒い感情も、覚悟も。

すべてはあの三人のおかげであり、そして、あの三人を守り抜くためだ。


「……」


指先に伝わる美琴の体温を感じながら、俺は小さく息を吐いた。

こんなにも賢く、隙のない女性である美琴が、今、無防備な姿で俺の腕の中にいる。

彼女は俺を試しながらも、最終的にはこの歪な箱庭に足を踏み入れ、俺の"手駒"として甘んじる道を選んでくれたのだ。


そして、それは、海の向こうにいる"あの人"――母さんへと伝わっている。

俺たちが今、どんな関係を築き上げているのか、母さんはすでに察しているはずだ。


年末。おそらく、クリスマスが終わった頃か。父さんと母さんが、この家に帰ってくる。


以前の俺なら、彼らの顔色を窺い、ただ怯えてやり過ごすことしかできなかっただろう。

だが、今は違う。


「……待ってるよ」


俺はぽつりと呟き、美琴の肩を抱き寄せて、もう一度目を閉じた。


完全に腹を括った俺の姿を、真正面から見せつける時だ。

俺たちが創り上げたこの名前のない楽園は、誰にも――絶対に壊させはしない。

第六章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

幕間エピソードを挟んだのち、第七章を公開します。

少しでも楽しんでいただけましたら、感想やブックマーク登録、評価などをいただけますと、執筆の大きな励みになります。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!

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