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四人でいることが、日常だった -境界線のない放課後-  作者: いもたにし
四人でいることが、日常だった

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1/16

変わらない、という前提

――side. 井神 凉(いがみ りょう)――


俺は今日も、家から少しだけ歩いた先にあるコンビニの前で立ち止まっていた。


「おっはよ、凉」


背中に、軽く体重が預けられる。


宮藤玲茄(みやふじ れな)だ。

ナチュラルなセミロングの髪、薄い褐色の肌。

170cmという女性にしては高めの身長に、

年齢以上に大人びたスタイル。


俺の右肩のすぐ横に顔を寄せ、

彼女のわずかに細められた目元は、

こちらの反応を確かめるように、静かに見つめてきた。


距離が近い。

けれど、それは今に始まったことじゃない。


「正面がいいな」

「それはあさってまでおあずけ」


俺は小さく息を吐いて、その距離を受け入れた。



「おはようございます、凉くん。玲茄。」


中里悠希(なかさと ゆき)が、丁寧な声で挨拶をする。

中里姉妹の妹の方、色白で清楚な印象。

正式名称はわからないが、本人はぱっつんロングです、と言っていた。


「りょーくん、れなっち、おはよー!」


少し遅れて、茉依(まい)が手を振りながら挨拶する。

中里姉妹の姉の方。

一卵性の双子だから顔立ちは瓜二つだが、

ブラウンのミディアムボブとギャルな見た目のせいで、印象はまるで違う。


今日の茉依は朝から機嫌がいい。

まぁ、その理由はわかっているのだが。


この姉妹、身長は同じ160cm。

体型も整っているが、細部は意外と違う。

なにがとは言わないが、妹より姉の方が大きい。


……双子でも違いはある。


それを知る機会が、

人より少し、いや大分、多かっただけだ。



四人で、自然とまとまって歩く。


校門をくぐるとき――

すれ違った上級生の男子生徒グループが、ちらりとこちらを見た。


「……あれ、また一緒だぞ」

「例の四人だろ」

「すげえよな、逆に」


聞こえるか聞こえないか、そのくらいの声。

混じっているのは、好奇心と、少しの警戒。


俺は特に気にしなかった。

今さらどうこう言われるようなことでもない。


中学の頃から、ずっとこの形だ。

変わらないまま、ここまで来ただけ。


――だから今日も、同じように歩いている。



――side. クラスメイト――


また今日も、四人一緒だ。


井神、宮藤、それから中里姉妹。

教室に入ってくるその並びを見ると、

なぜだか空気が少し落ち着く。


「おはよー」

「今日もいつも通りだな」


誰かがそう言って、軽く笑う。

そこに、棘はない。


一年の頃は、正直言って奇妙だった。

距離感も、雰囲気も、どこか普通じゃなかったから。

噂も立ったし、ひそひそ声もあった。


でも――

二年になっても、その関係は変わらなかった。

揉めることもなく、誰かが傷つく様子もない。

むしろ、四人でいるときの方が自然に見えた。


気づけば、誰も茶化さなくなった。

疑う理由も、指摘する理由もなくなった。


クラスの中では、

あの関係性はほとんど“完成している”ように見えた。


「いいよな、ああいうの」

「うん……見てて、なんか気持ちいい」


そう感じている生徒は、実際多い。


普通じゃない、という認識は全員が持っている。

友達とも違う。

恋人、と言い切るにも当てはまらない。


じゃあ何なのか、と聞かれると、

誰もはっきり言葉にできない。


少しだけ羨ましくて、

少しだけ遠くて、

でも――


それ以上に、

壊れていないことが伝わってくる。


誰かが無理をしている様子もなく、

誰かが我慢している気配もない。


だから、

理屈より先に思ってしまうのだ。


(……推せるんだよなぁ)


そんな軽い言葉でしか、

この気持ちは表せないけれど。


だからこそ、

他クラスの視線や、上級生の噂、

一部の教師が眉をひそめる理由も、理解できなくはなかった。


――自分たちも、そこを通ってきたから。


でも、距離がある以上、

その良さが伝わることはないのだろう、とも思う。


それでも。

この教室にいる限り、

あの四人の関係は、確かに尊いものだった。


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