第二百三十四話*すなあらし
ウィーは考えもなく迂闊に近寄るから、遠くに見えている謎のジリジリと同じようにジャリジャリした見た目になって、変な格好で止まっている。
──て、ウィーの見た目をジリジリ、ジャリジャリと言っているけれど、そうとしか表現が出来ない見た目なのだ。
砂嵐のような見た目。
ザ……ザザァ……と音がしてきそう。
眩しいほどの白い空間に、異質なモノ。
そもそもあれはなに?
近寄りすぎたらウィーみたいになるから距離を測りながら近寄り、ギリギリのところで止まって観察する。
ウィーは驚いて遠ざかろうとして変なひねりが入った格好で止まっている。
「ウィーがいなかったら、きっと私がこうなっていただろうから、大変に尊い犠牲であった……」
手を合わせてナムナムと拝んでいると、ジャリジャリなウィーの外装が剥がれて、中から本物のウィーが飛び出してきた。
「もう! なにが『大変に尊い犠牲』よっ! 生きてるわよっ!」
「あ、生きてたんだ」
「もー! ほんっとあなたって失礼な人よね!」
そういえば、前の影の世界、浄化作戦……名前を思い出しただけでダサさが浮かび上がってくるのだけど、そのときもさんざん、失礼って言われた。
「なにがどう失礼なのよ。あなたに対して失礼ではない態度ってなんなのよ」
「そういうことを聞いてくるところも失礼なのよ」
……失礼らしい。
「言っても理解してもらえなさそうだし、時間の無駄だからそこはいいわよ。それで、今、この変なヤツ、なにか分かったわよ」
「……ひっかかるところがところどころあるけれど、まあいいわ。で、分かったってなにが?」
「あのね、この変なの、トニトとかいう名前の――ってちょ、ちょっと! なにするのよ、つかまないで! わたしを握りつぶす……うぎゃあ、振らないでえええ」
え、トニトって、あのトニトっ?
だってキースが連絡して返事が返ってきてたのにっ?
「本当に、アレ、トニトなのっ?」
「とおおおおおにいいいいいいとおおおおぉおおぉぉ」
荒ぶる気持ちのままウィーを振りまくっていると、急にぷつりと声が途切れた。
「ウィー? どうしたの、ウィー? しっかりしてえええ!」
さらに強く振ると、がしりと手のひらに強い力がかかったので手を止めた。
「リィナリティ! そんなに強くわたしを振ったら死ぬでしょうが!」
「あー……。うん、ごめんね?」
「きいい、そんなにかわいく言ったって、許さない……。ああああ、……なんなの、あんた。ほんとけしからんかわいさだわ」
そういうと同時にウィーは大きなため息を吐いて、私の手の中からするりと抜け出た。
「とにかく。そこのジャリジャリしてるのはトニトみたいよ。なんでも、時の狭間に落ちちゃってるとか本人が言ってたわ」
「トニトとしゃべったのっ?」
「しゃべったというか、思考? 思念?」
「思考? 思念? じゃあ、精神だけってこと?」
「そこまで細かいところは分からなかったけれど。なにかよくわからないけど、強い思いがあるみたいね、トニトには」
「強い、思い……」
強い思い、ねぇ……。
「リアルは知らないけれど、フィニメモでは悩みがあったらしい、ってことはわかってる」
「悩み?」
「うん。トニトが盟主をやっている血盟が乗っ取られそうになっているとか、ないとか」
そういえば、前にトニトに装備を大量に売ったけれど、それを境にしてない?
「ねえ、ウィー。知っていればでいいんだけど。フィニメモの装備って呪われているものがあったりする?」
「んー? 呪いの装備なんてそんなもの……。――あー……。あるかもね。なんだっけ、なんか迷惑な人がいたじゃない?」
「ミルム?」
「そうよ、その人! アイツ、わたしのことを消そうとしたのよ! だからこっちに逃げてきたの!」
それは思ってもいなかったことだった。
「もしかしなくてもなんだけど。トニトにその呪いの装備を売ってしまったかもしれないのよ!」
「……なるほど? その結果として、ここでジャリジャリになっている、と?」
「うん、あり得るのよ、それ」
ウィーは短い腕を必死に組んで、うーんとうなっている。
「リィナリティ、いい機会だわ。あなた、この人たちを浄化して回りなさい」




