EP:13-Fulfilling days. 〜③〜
ここから始まる彼女の崩壊。
その夜、同じくマハロ。
今度は対面にチェリムが座っている。
本日はどうも知人に会う...特に女性に。
何の様かと尋ねようとするが。
突如彼女はテーブルを勢いよく叩き。
「認めよう!」
「何をだテーブル壊れんだろうがぶっ殺すぞ。」
「す、すまない...」
姿勢を正して丁寧に座り直すチェリム。
そして口を開き。
「お前と妹の仲を認める...お前になら任せられるかもしれない。」
「どういう仲だと思ってんだ、俺とあいつはただのダチだダチ。」
と、切り捨てる様に返すと。
"お˝ぉ˝お˝お˝お˝お˝お˝お˝ん˝"
と、突如フロアに響く怨念の様な声。
「ひぃッ、何だ今のは!?」
当然と言うべき反応か、怯えを見せるチェリム。
「あぁ気にすんな、ある女刑事がトイレとベーゼ交わしてるだけだから、3時間程。」
「気になるワードが多すぎる!?」
パワーワードの合体事故。
「大丈夫だって、この店ではよくある事だ、現に客も気にしてねぇ。」
周りの客も「あぁ、クラナちゃんか。」「また飲み過ぎたのね。」だの実に慣れたリアクション。
これでも昔は生真面目な堅物エリートだった筈なのに。
時とは残酷なのだ。
それは置いといて、チェリムは。
「この間のエスコートは完璧だった...今までのお前の不真面目で唯我独尊が過ぎる暴虐なイメージが払拭される様だった!」
「誉めてんのか貶してんのかどっちだ堅物シスコン生娘。」
「きッ...」
そんな彼女の気にしてる言葉は"行き遅れ"...まだ19歳だというに。
本年齢より大人びて見られる彼女の悩みの一つだ。
「てめぇに認められなくても、あいつの隣にいる限りちゃんと守るよ。」
そう答え、本日何本目かの瓶ビールを煽った。
そんな彼に。
「…ソニアは川が苦手なんだ。」
「…あぁ。」
かつて彼女は不慮の事故でランカー承認試験の見学中に川に落ちた。
そして試験の障害物役のワニに食われかけた。
咄嗟にブレードが救い出したが。
その時の事は部分的にしか覚えていないらしい、恐怖故に。
ブレードの事も覚えていない。
覚えているのは、川とワニが苦手という事だけ。
泳げなくはないのだ。
けれど、どちらかといえば水が苦手で。
川には極力近づきたくない。
あの日のトラウマを徐々に思い出すから。
「あの時、お前が間に合わなかったらと思うと…ゾッとする。」
「…」
あの時はブレードも無我夢中だった。
目の前で失われるかも知れない…そんな彼女を見て。
「どっかのクソガキに重ねちまった、それだけさ。」
「え…?」
「すまん、忘れてくれ。」
再度酒を煽った。
「お前も飲むか?」
「ギリギリ未成年だ…。」
「あぁ、顔が顔なんで忘れてた。」
「貴様ッ…気にしてる事を…」
だがジュースで夜遅くまで付き合った。
後に迎えを呼んで帰ったが。
翌日。
スサノオから誘いを受け、再びジパングへ。
今回はアニマも一緒だ。
静かにする様、言っておいて劇場へ。
今回もスサノオの計らいで特別席だ。
前回はこの劇場でシスカと遭遇したが。
今度はチェリムだ。
「よぉ、今度は俺をストーキングかシスコン。」
「ち、違うっ...ソニアがこれの主演の男に関わっているという情報を...」
シスコン情報網によるものだった。
だがスサノオが女性という事は掴めなかったらしい。
彼女なのに。
「そこで母がチケットを用意してくれて...」
「成程な...しかし今回はソニア来てねぇらしいぞ。」
「何、そうなのか。」
スサノオ情報である。
何はともあれ、劇の始まり始まり。
面子を見ると、前にここで観た劇のメンバーと同じだ。
つまり、スサノオの正体を覗こうとした者達の。
...これは終わったら何かある。
ともかく、今回は侍が義賊を名乗って様々な問題を解決する痛快アクションストーリー。
そう銘打つからにはアクションも豊富で。
高い所に飛び上がるのも、ワイヤーを使わずにやってのけるスサノオ。
元からスサノオの動きに魅せられているブレードは勿論。
チェリムも堅い顔を崩し、目をキラキラ光らせる。
それはまるで、モルツに初めて特撮ヒーローを見せてもらった時の自分の様。
つい、クスッと来てしまった。
まぁ、即座に劇に集中。
アニマは言いつけを守ってジッと劇を見つめていた。




