せや京都に行きまっせ⑤
「あれは夕方に測った体重でしょ。人間は夜が最も体重が重くなるのよ」
「医学的にも朝、起床時に体重を測るのがベストと推奨されているのよ」
無理筋な話である自覚が裕華にもあったので、落ち着いた口調で説得を試みる。
無理やりこの場に連れてこられ、変なアピールをする裕華に怒り心頭の歌織が口撃する。
「あたしは夜と朝で500グラムしか変わらないですよ。普通は朝と夜で、1キロ位しか体重差なんじゃないですか?」
「アラサーにもなると、3キロも変わるんですか~」
「あんたもアラサーでしょ。ふたつしか変わらないのに、年齢イジリやめてくれない?」
小声のドスの効いた低音で裕華がマジギレする。
手にますます力が入ってブサイクな顔になる。
「ちょっと、隣に座りなさいよ。色々はなしをしましょう」
「いえ、先輩の隣の席、空いてないんでしょ。売約済みの席に座れませんよ」
2人が腕を綱引きのように全体重をかけて引き合っていると横から声がかかる。
「隣の席空いてるんで、宜しければ使ってもらってもけっこうですよ」
見かねたイケメンが親切心から提案する。
歌織がイケメンのイケボの意味を理解する前に裕華が隣の席に移動する。
イケボが途切れた瞬間、刹那の間にイケメンの隣を陣取る裕華。
「ありがとう~ございま~~す」
居合の達人以上の速さで手を取り、顔を近づけお礼する裕華に、イケメンは石像のように固まる。
裕華の肩越しにイケメンの後悔を歌織はひしひしと感じ取った。




