カナン①
「緑蘭会へようこそ、井ノ瀬様、佐崎様」
「本日、担当させていただきます、主任相談員の富松有紀です。よろしくお願いいたします」
深々と見覚えのある女性がお辞儀する。
「初めまして、よろしくお願いします」
裕華のお辞儀と挨拶に歌織も続く。
「初めまして、よろしくお願いします」
歌織は強い目ヂカラと強い口調で挨拶する。
豪華なインテリアにフカフカの綺麗な絨毯の廊下を進むと、見覚えのある、中世貴族のお屋敷のような部屋に案内される。
椅子をひいてもらい、腰を掛けるとアンケート用紙が渡された。
主任相談員が歌織の分のアンケート用紙を渡すべきか、躊躇すると、歌織が手を差し出し、アンケート用紙を要求する。
コンシェルジュは察してにこやかにアンケート用紙を歌織に渡す。
2人がアンケートを書き終えて、正面に座ったコンシェルジュに渡すと面談が始める。
「お二人とも、当社は初めてとのことですが、本日は何をご覧になっていらっしゃいましたか?」
「スマホで見て、近くにいたから、すぐ来てみました」
井ノ瀬裕華の返答に歌織が大きくうなずく。
「そうですか、良い心がけですね。井ノ瀬様のような行動力のある方はすぐに結婚なさる人が多いんですよ」
「そうなんですか?あたしすぐ結婚できそうですか?」
立ち上がり、ガッツポーズする裕華を歌織は見上げて注意する。
「ちょっと落ち着いてください、ゆーぼう先輩。いつもすぐ付き合って、すぐ別れての繰り返しじゃないですか」
「今すぐ結婚したってすぐ離婚するだけですよ」
「大丈夫、結婚したら別れないから」
歌織は小さくため息をついて、反省しない先輩を見守る決意をした。




