食堂で初友
日が空きました・・・
食堂の場所を聞いていなかった冬弥だったが、なんとなく寮を歩いていたら着くことができた。食堂は寮に隣接する様に一階にあったのでたまたま着いただけなのだが、そこら辺は気にしない事にしない。中には人が少なくとても静かだった。
無駄に広い食堂の多分受け付けらしいところに行って、冬弥は硬貨を渡して注文をする。かなり適当である。
「えーと、パンとスープと飲み物のセットで」
エプロンを付けた恰幅の良いおばちゃんが慣れた手つきでトレイにパンとスープを入れた皿を乗せる。飲み物はコップ一杯のミルクだった。
「見たことのない顔だけど、騎士科の転入生かい?」
「いや、なんていうのかな?一応下僕らしいです」
トレイを貰う時におばちゃんに話しかけられたので冬弥は答えた。
「そうかい、私はママーレードっていうんだ。使用人同士仲良くしようじゃないか」
「俺は冬弥って言います。よろしく、マーマレードさん」
冬弥自身以外に思うのだが、冬弥は自分が目上と思う相手には敬語を使うことができるらしかった。それじゃあリラの事は目上と思ってないのかと考えてみるとあーなるほどと冬弥は納得するのであった。
「ところでなんで俺が騎士科だと思ったんですか?」
疑問に思った事を冬弥がたずねるとマーマレードさんは当然のように答えた。
「そんなの決まってるじゃないか、貴族様はこんな飯食わないだろ?」
「まぁそうだろうけど・・・」
答えてはもらったものの冬弥は上手く理解することができなかった。その様子を見たマーマレードさんは話を追加してくれた。
「この学園は平民も入学することができるんだけどね。貴族は魔法専修科、平民は騎士科って風に決まってるのさ」
「なるほど、そういうことね」
貴族の学生は魔法専修科、平民の学生は騎士科、分ける理由とかはよくわからないがなんとなくは冬弥は理解した。
「話し込んでしまってすみません、スープが冷える前に頂きます」
「そうだね、さっさと食べてしまいな」
そろそろ空腹の限界を超えそうな冬弥はテーブルの方へと向かった。
誰も座っていないテーブルを見つけて座ると、冬弥は早速食べることにした。まずはミルクを一口飲む。少し甘味があって飲みやすい。スープもしっかり味が出ている。次にメインであるパンを食べるのだが・・・
「なんというか、硬いな」
日本人好みのふわふわもちもちの食感とは真逆のかちかちもそもその食感に冬弥は顔をしかめる。それでも残すのは勿体ないので冬弥はミルクと一緒に食べてみる。程よく湿って美味しい。
そのままパンをかじってミルクを口に入れるのを繰り返して食べていると隣に誰かが座った。誰だと冬弥が隣を向く。。
「おう、お前はミルク派なのか?俺はスープ派だけどな」
冬弥の隣に座った男は意味のよくわからない事を言うとパンをスープに浸して食べ始めた。なんだこいつはと思った冬弥は男を見る。軽く立つ程度に短い明るい茶髪に、程よく日焼けした肌。いかにも元気が取り柄ですという感じの風貌をしている。
「わりぃ、自己紹介がまだだったか。俺はダン、騎士科のダンだ」
「これはご丁寧に。俺は冬弥、下僕の冬弥ね。騎士のダン様」
ダンは爽やかに自己紹介をする。冬弥はわざとふざけた様に自己紹介を返した。冬弥としてはその方が上手くいくと思ったし気が合いそうだと思った。
「あははっ、お前おもしろいな。俺は人見知りしねーからよくわかんねーけど、普通初対面でそれはないぜ!?」
「そうか?俺もあまりごちゃごちゃ気にしない方なんだ。面倒だろ?」
「それもそうだな!いや気が合いそうな奴で良かったぜ」
「俺もそう思う」
冬弥の思った通りダンとの相性は良かった。冬弥が意識が戻ってから普通に喋れるのはダンが初めてだ。ちなみにダンの最初のスープ派、ミルク派というのはセットのパンをミルクで食べるかスープで食べるかということだった。試しに冬弥がスープにつけて食べると結構美味しかった。
「ところでダンは学校に行かなくてもいいのか?」
「それは俺のセリフだぜ。トウヤは仕事しなくてもいいのか?」
「あ~仕事ね、そういえばなんも聞いてないな」
冬弥はダンに今までの事を話した。大ざっぱにだが記憶が無い事、リラに拾われたこと全てだ。一応、地球の話はしないで置いた。
「そいつは大変だな~、記憶喪失ってどんな感じなのよ?」
「他人事だな、おい。どんな感じって言われてもな、こんな感じよ」
ダンは二カッと笑うと軽く返してきた。冬弥も自分を指さして軽く答えておく。まぁ他人事なのでそんなものかもしれないが、とてもあっさり返された。
「他人事だしな、それに気にしてるようには見えねーしな」
「確かにあまり気にしてないけどな、ところで学校は?」
一通り自分のことを話した冬弥は疑問に思っていたことについていろいろ聞いてみることにした。
「あーまぁ、お前はわかんねーか、昨日門の前に兵士が立ってたろ?ほらお前がビビッてたやつ」
「ビビッてないぞ?というかなんでそんな事知ってんの?」
「昨日の兵士、俺だから」
冬弥は取り合えずビビったことを否定しておく。最初から舐められるとよろしくない、心の中で言い訳をして話を続ける。そしたらダンからのカミングアウトだ。冬弥はめちゃくちゃ驚いた。確かにダンは昨日の兵士が持っていたものと同じ直剣を腰に下げている。
「マジかよ。って事は夜に仕事して今から寝る感じか?というかなんで仕事してんの?」
「おう、記憶のないトウヤの為にちゃんと答えてやるぜ。あれは騎士科の仕事なんだよ」
冬弥の質問にダンはしっかりと答えてくれた。冬弥は記憶が無い、というか記憶があってもわからないのだがそこら辺を踏まえて教えてくれた。
まず、トリトニア王国学術院のは魔法専修科と騎士科の二つの科がある。学院規則としては特には入学規定は無いのだが、トリトニア王国の法律では貴族若しくはそれ以上の身分の者以外の魔法の習得、学習は禁止されている。そのため魔法専修科には貴族の子女が、騎士科には平民が在籍するという形になっている。
「なるほど、マーマレードさんが言ってたのはそういう意味だったのね」
「おいおい勝手に納得するなよ、まだ続くぞ」
「すまん、続けてください」
さっきのマーマレードさんの言葉を理解した冬弥は続きをお願いした。
先ほどの続きになるが、基本的に平民ばかりの騎士科は何事においても軽視されることが多い。その中には身分の差などもあるのだが、それ以外にも金銭的な問題が絡んでいる。具体的に言えば平民の学生より貴族の方が学園に支払うお金が高い。これは貴族が平民の学費を一部負担するような形になっているからである。というのも、騎士科で支給される鎧や剣等は平民が簡単に購入できるようなものではなく、もし全部払うならば学費だけで平民の年収が吹っ飛んでしまう。そこで貴族から寄付金として受け取った金を備品の購入に充てているのだ。
「ほほう、よくできてるのな」
「それだけなら良いんだけどな」
しかし、寄付金を払う側(貴族)としては、払った金が平民に流れるのはあまり気分の良いものではない。そこで軍が行う仕事を実地演習として騎士科の学生に行わせ報酬という形で補填されている。これならば、文句も言いづらいし貴族とは見えを張るものなので結構な額の寄付を入れてくれるというわけだ。
「それで、学園の夜間警備は騎士科の生徒で交代でやってる仕事ってわけ」
「なるほど、なんとなくわかったわ。でも大変じゃないか?学校にも行かないとだろ?」
冬弥には学校に行った後に夜働いてなどできる自信はない。記憶がないのでなんとも言えないのだが冬弥は多分、バイトをしたら学校では寝てバイトの時間に起きるタイプだと思った。
「そうでもねーよ、実地演習の時は授業サボれるし、夜間警備の時は次の日休めるしな」
「それはいいかもな、じゃあ今日は休みか」
「おう」
話的にも食事的にも切りが良かったのでここら辺で終わらせようかなと冬弥は思っていた。ダンも食事が終わったあとだったので二人で食器を片付ける。
「それじゃあ、しっかり休めよ。おやすみ」
食堂の外に出る扉の前で冬弥はダンに手を振りながら言った。貴族寮からは寮から出入りできるが寮の人間以外は外から出入りする。
「いやいや、何言ってんだよ。俺は夜まで酒場で飲むぜ。それじゃあな」
そう言ってめちゃくちゃ嬉しそうなダンは走って行ってしまった。よっぽど飲むのが好きなんだろうなと冬弥は思うと同時にこう思った。
「あー、あいつめっちゃ若いわー」
冬弥(16)は自分の年齢は置いておいてそう感じた。ところで20歳以下の飲酒はオーケーなのかと疑問に思った冬弥であった。
この後冬弥はリラの部屋に引きこもる事になる。街に出たいところなのだが銅硬貨8枚では多分何もできないのであきらめた。この時リラの洋服が入っていると思われるタンスを見て冬弥は見るか見ないか(主にブラジャーとかパンツとか)悶々とするのだが性欲より生存本能が勝ってしまったので大人しくしていた。
突然冬弥は床に手をついて悔しい表情で床を叩く。
「くそぉ~俺のヘタレが!どうして見れないんだ!」
ただ、性欲は満たされないと解消されないのでいつか絶対見てやると誓う冬弥だった。




