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8.早速お荷物になる

マリオンは乙女である。紛うことなき乙女である。

しかし現在は男装し、男として振る舞っている。

理由は簡単。自らが蒔いた種、というだけのことである。


けれど、それを初日にして後悔する事とになるとは思わなかった。

彼らに素直に女だと言っていればこんなに焦ることもなかったのに、と今更ながらに後悔している。


「あ、あのっ! 」


思いのほか切羽詰った声を出してしまったことを後悔しながらマリオンはユーリ達に声を掛けた。


「マリオン? どうかしたんですか? 」


心配そうに覗き込むユーリと目を合わせるのが恥ずかしくて、つい逸らしてしまった。


「……マリオン? 」

「どうしたの~? 何か問題でもあった~? 」


相変わらず軽薄な印象のクロードがにへらと笑いながら尋ねてくる。


「い、いえ。あの……その…… 」

「どうした? 顔色が悪いような…? 」

「ええ。汗までかいているようですが、どこか具合が悪いのですか? 」


どう答えればいいのかわからないマリオンに今度はミカルやアルも声を掛けてきたから余計に焦った。

でも、言わなければ始まらないのだ。

というか、マリオンはそろそろ限界だった。


「あ、あの!! 私、ちょっと小用に行きたいんですがっ!! 」


俯いてしまったマリオンにイケメンエルフ達は顔を見合わせている。

恥ずかしくて顔を上げることが出来ないマリオンにクロードは「ああ。そうだよね~ 」と何でもない様な声をあげた。


「たぶん一人旅したことないって言ってたもんね~。それじゃあ小用に行く時の声掛けもしらないはずだよね~ 」


そう言ってクロードはうんうんと頷いている。


「ああ……。そういうことだったんですね 」


安心したように笑いかけるユーリに笑顔を見せたい所だが、如何せん状況は切羽詰っている。

頷くだけで精一杯だった。

そんなマリオンを特に気にした様子もなくクロードが「じゃあ僕が説明してくるから~ 」といってマリオンを引っ張っていく。


「ここら辺は安全だと思うけど、獣には気をつけるんだぞ 」

「は、はい! 」


ミカルの言葉に頷いてマリオンはクロードに連れ去られていく。


「えっ、クロードだけじゃ心配なんじゃ……私も一緒に――― 」

「ユーリ様、マリオンは旅に慣れていない様子です。小用くらい一人きりにさせてあげたほうがよいのでは? それにユーリ様になにかあったらどうするんですっ 」


何処までも心配するユーリに、アルがばっさりと切り捨てる。

そんな様子を目の端で捕らえながらマリオンはアルに感謝した。


(アルさん! どんな理由でも、一人きりにしてくれてありがとうございますっ )


街道を逸れ、少し森に入ったところでクロードが手を離した。


「手短に説明するね~。旅の最中で小用はこれからもあるだろうからしっかり覚えててね 」

「はいっ!! 」


そういうとクロードはマリオンに手のひらサイズの巾着を手渡した。

どうみても、ただの袋であったため首を傾げてしまった。

そんなマリオンを他所に、クロードは袋の中からいくつか物を取り出している。


「えっ!? あれ? ク、クロードさん……今、なんか不思議なことが…… 」


クロードが手に持っていたのは小さい紙が二枚と、袋より大きい、小用を足した後に使う柔らかめの紙だった。

その紙が明らかに袋よりでかいのは何故だろうか。


「ああ、気にしないで~。これ僕特製の魔法の袋~。小用足す時に必要なものを収納する袋に使ってるんだ~ 」


才能の無駄遣いのような気がしたが、そこは今はどうでもいい。とにかくマリオンは焦っていた。


「あ、ごめんごめん。それで、説明なんだけどね。この茶色い紙を土の上に置くと穴が開くんだよ~ 」


木の側にある茂みの裏側にその紙を置くと、確かに地面に用を足せるほどの穴が開いている。


「で、用を足したあと、こっちの柔らかい紙で拭いて穴の中に入れちゃって。その後でこっちの赤い紙を穴の中に落としたら終わりだよ~ 」


あまりに簡単すぎる説明に戸惑うマリオンだったが、クロードはさっさとその場を立ち去って行った。

穴は既に出来ているので、急いで用を足し、最後に赤い紙を穴の中にいれる。

すると、赤い紙から急に小さな炎があがり柔らかい紙が燃え尽きたかと思うと、今度は穴の周りの土が動き、その穴を完全に埋めてしまった。


「す、すごい……! 」


乙女的には外で小用を足すなどあまり好ましくないのだが、魔法のお陰で難なく出来たことにホッとした。


「これならいつでも大丈夫そう 」


独り言を呟きながら茂みからでると元来た道を戻る。

が、一向に街道に出ない。

歩き出した時は特に気に留めなかったが、よくよく考えてみれば来た方向とは逆に足を踏み出していたようだった。

気づいたところでハタと足を止め、後ろを振り返って嘆息する。

何処にでもあるような木と茂みがそこいらへんにある為、道がさっぱりわからないのだ。


(どうしよう、どうしよう、どうしよう )


半ばパニックになりながら元の場所へと足早に向かうが、似たような茂みや木はあるもののもう何処が先程の茂みかなんて分かるはずもなかった。


「ユーリさまーーー! アルさんーーー! ミカルさーーーーん! クロードさーーーん―――― 」


何の答えも返ってこないことに肩を落とす。

周りから聞こえるのは鳥の囀りと、どこかで流れている水の音だけだった。


「どうしよう……折角、一緒に旅してくれることになったのに 」


申し訳なさと心細さが胸に押し寄せてきた。

マリオンは自分の間抜けさに大息をつくともう一度呼んでみる事にした。


「ユーリ様! アルさん! ミカルさーーん! クロ―――― 」


呼びかけたところで、突然背後の茂みがガサリと音を立てた。


「ユーリ様ですかっ!? ―――ッ!! 」


マリオンは慌てて振り返るとそのまま息を呑んだ。

自分の目の前にいたのは愛くるしい瞳をもつ可愛い兎だった。額に角があるというところが普通ではないけれど。


(一角兎っ! 一匹ならいける )


マリオンはそっと剣を抜くと前に構えた。

遠距離攻撃タイプでもいれば簡単に片はつくだろうが、如何せん今は一人。少し面倒だがなんとかなるだろう。

一角兎はただの獣ではなく、魔獣といわれている。一見ただの兎に見えなくもないが特徴は額の角だ。

普通の兎より素早く、跳躍力も高い。そしてなによりも見た目の可愛さとは裏腹な凶暴性を持つ魔獣だ。

基本的には近づきさえしなければ襲ってはこないのだが、既に相手はこちらを敵と認識して攻撃態勢に入っている。

耳をと角をこちらに向け、今にも飛び掛りそうにうずうずと尻尾が動いていた。

その瞬間――――、一角兎がマリオンに向かって飛び掛ってきた。

マリオンは瞬間的に剣を薙いだ。


腐ったような匂いと、鉄のような匂いが鼻に付いた。

足元には一角兎の屍が転がっている。

マリオンは刀身の血を振り払い剣を鞘に収めると、いつもの癖で腰につけたナイフを取ろうとしたがその手は空を切った。


「ああ……、修行の時はナイフつけてないんだった 」


クレド村では森に入る時、いつも帯剣して腰にナイフをつけている。

いつ何処で獣にあうか分からないし、獣を狩った後に肉や素材を採取するためにはナイフが必須なのだ。

しかし今は修行の格好のままこの時代に着てしまった為、ナイフは携帯していなかった。


「うーん。肉はともかく角はいい材料になるんだけどなぁ……。でも仕方ないか 」


一角兎の角は薬の材料になるので採取したかったが諦める。


「そんなことより、ユーリ様たちを探さないと 」


大きくため息をついて名残惜しそうに屍を一瞥すると周りを見回した。


「マリオン!! 避けろ! 」


どこからかユーリの声が響いた。

その声にホッとして後ろを振り返った時、その言葉の意味に気づいた。

背後には一角兎がもう一匹いて、避けようにもすでに跳躍していた一角兎は真っ直ぐマリオンに向かっていた。



恋愛要素がまったく出てこず、その前にトイレの話って……

あ。あと戦いの書き方が難しく、どうしようもできませんでした…



お待たせしてすみません。

どんどん亀投稿になりつつあります。

いつも見てくださる皆様(神)ありがとうございます


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