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若干呆れ気味ではあったが、ゆゆは自ら放った言葉どおり、蜜愛を心も体も受け止めた。
お互い、温かな気分になっていることだろう。
蜜愛はすっかり元気を取り戻し、ご迷惑をおかけしましたと、心配して集まってくれた面々に頭を下げた。
集まってきていたほうも、こちらこそ大声で騒いでご迷惑をおかけしましたと頭を下げ返すという、日本人らしい光景が展開されていた。
いや、頭を下げているうちの半数以上が、宇宙人だったのだが……。
蜜愛は二階から飛び降りたが、ゆゆがしっかりと抱き止めたおかげでまったくの無傷だった。
傷はなかったが、被害がなかったわけではない。
状況を見ていた母親から、こっぴどく延々と怒涛のごとく叱られ続ける羽目になったからだ。
もっとも、それは自業自得というものだろう。
そんなこんなで、蜜愛はそのあとすぐにブログを再開した。
散歩に出かけたのは翌日からだったが、まずは日記部分からの更新の再開に、喜びのコメントが多数寄せられた。
もちろん、宇宙王子も手放しで喜んだ。
他の人から、「こいつ、いくらなんでものめり込みすぎじゃね?」とツッコミを入れられてしまうほどに。
今では痛姫様に恋する王子として、コメント欄でからかわれる対象となっている。
対する宇宙王子は、「痛姫様は地味で胸も小さいから、恋愛対象になんてならない!」といったコメントをしてしまい、
「お前、会ったことあるのか!?」「もしかして、ストーカー!?」「こいつなら、やりそうだよな!」
などと総攻撃を食らう結果となっていた。
慌てて「いや、想像だけど!」と返してはいたが、からかいの対象という役割は、完全に定着したと言える。
蜜愛は内心、怒りに震えていた。
「地味で胸も小さいって……宇宙王子さん、ひどい……」
「いやいや、事実じゃん」
隣でノートパソコンをのぞき込むゆゆから、冷静なツッコミが飛ぶ。
「ううう……そうだけど……」
「ま、あたしが揉んでやるから、安心しな!」
ゆゆはそう言うと、すかさず蜜愛の背後から腕を回した。
「あんっ! ちょっと、ゆゆちー! やめてってば~!」
「しぼめ~、しぼめ~!」
「はうっ、呪いの言葉をかけないで~!」
どうやらこのふたり、なんの問題もなく、完全に仲直りできたようだ。
蜜愛が日課である散歩に出ると、いつものごとく宇宙人たち三人と遭遇する。
彼らが宇宙人だということを、親友のゆゆは知ってしまった。
蜜愛には内緒だと言われていたが、ゆゆはそれを忠実に守っている。
言う必要なし、との判断だろう。
言ったところで、普通は信じない。
蜜愛は普通ではないから、信じてしまうかもしれないが。
ゆゆ自身、半信半疑のままなのだから、上手く説明などできるはずもない。
窓から見下ろす蜜愛に向けて宇宙人たちが語っていた話を思い返すに、べつに害はない。
それどころか、蜜愛を守る立場にあるとも言える。
ゆゆはそんなふうに考え、放置しておくことに決めたらしい。
外国人であろうと、宇宙人であろうと、大した違いはない。
侵略目的で地球を取り囲んでいるというわりに、そんな素振りを見せないことも、安心材料となっているのかもしれない。
実際には、それぞれの部隊が睨み合い、こう着状態が続いているだけなのだが。
沙羅双樹、獅子春人、瑠璃月の三人を見る限り、それほど強大な力を有しているとも思えない。
宇宙に待機している部隊の力は凄まじくとも、スパイである彼ら個人の力は怖れるほどでもない。
宇宙人といえども、一介の生命体に過ぎないのだ。
「おっ、お前! 今日も貧乳だな!」
「貧乳言うな~!」
なぜか沙羅双樹たち三人と行動をともにすることが多くなっているまーちゃんも、特殊な空間を発生させる力があるなど、未知数な部分はあるものの、今現在はなんとも友好的だ。
相変わらず蜜愛に対して高圧的な態度を取ったりはするが、基本的に笑顔で甲高い声をまき散らしている。
「今日はいいお天気ですわね」
「絶好の散歩日和ってやつだな!」
「蜜愛さん、更新、お疲れ様。続きのイメージは、もう浮かんでるのかな?」
三人の宇宙人たちも、以前と変わりなく、散歩中の蜜愛に合流しては、なんやかやと会話を交わしている。
こうやって会う前には、やはり喫茶店で会議が行われているのだろうが、どう考えてもその必要性が感じられない。
もしかすると、あの喫茶店のコーヒーやクリームソーダや大盛りの品が、それぞれ好きになっているだけなのかもしれない。
「そうですね~。次はレオさん……じゃなくて、小説内のレオンさんを活躍させてもいいかな~って思ってます」
「なるほど。たまにはいいですわね。実際のこの人は、なんの役にも立ちませんが……」
「おいこら! それはひどいんじゃねぇか!?」
「はははは、じゃあ小説の中では、レオンが勝って、蜜愛さん――じゃなくて『私』を妻にするのかな?」
「いえいえ、まだですよ~。『私』はみんなのヒロインなんです! 誰かひとりのものになっちゃうとしたら、それは最終回かな~。最終的にどうなるかなんて、全然考えてませんけどね」
「わたくし――ではなく、ルナさんが勝ったら、どうなってしまうのでしょうか?」
「はははは、百合展開を求めるコメントなんかも、結構あったけどね」
「ここはアタイが勝って、漁夫の利をいただくって展開がいいと思うのだ!」
「それはありえないかな~」
「なぬっ!? 先の話は考えてないんじゃなかったのか!? 卑怯なのだ!」
「卑怯って……。だいたい、まーちゃん――じゃなくて小説の中のマガマガちゃんは、死ぬ予定だし……」
「こ、こやつ! アタイを殺す気か!?」
「っていうか、『私』以外、全員死ぬよ?」
「ええっ!?」「なん……だと!?」「なんですって!?」
「なんてね、冗談! 私としては、みんな仲よく、平和な結末を目指したいな~」
宇宙人たちは、ほっと胸を撫で下ろす。
なにせそんな展開になったら、実際に改変が起こり、本当に自分たちが死んでしまう可能性が高いのだから。
「とにかく! これからも頑張って、『かこまれたちきゅう』のお話を書き続けていきます! 楽しみにしていてくださいね!」
ムフー! と荒い鼻息を漏らす蜜愛。
蜜愛が書くのをやめるという、最悪の事態からは脱することができたわけだが。
それは単に、以前の状態に戻っただけでしかない。
これからも蜜愛が頑張ってブログに小説をアップするたび、改変が起こって悩まされてしまうに違いない。
宇宙人たちにとっては、気の抜けない日々が続いていくことだろう。
その日々は、「楽しみにする」というよりも、「ハラハラドキドキする、しかも悪い意味で」といった感じになるはずだ。
だが、三人は気楽に構えている。
「ま、なるようにしかならないよね」
「そんなもんだな!」
「やはり未来は、『神』のみぞ知る、ですわね」
こんな適当な宇宙人ばかりだからこそ、地球はいまだ侵略されずに済んでいるのかもしれない。
そして地球は今日も、たくさんの宇宙人部隊によって完全に包囲されている。
以上で終了です。お疲れ様でした。
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