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SOS 070 岐路

「やあ、よく来てくれたね、

質素な部屋だから面白味もないけど、

まあ気を楽にしてよ」


『と、言ってますね』


「は、はい、わかりました」


 膳とカイケンが連れて来られたのは、

ギルドマスターの執務室だった。


 恰幅の良い青年であるベントリ・バーズが

二人を歓迎する。年は若いが、歴史のあるカルマリで

しっかりとギルドマスターを担っている。


 それは、実力もさることながら、

状況の機微に聡いという才能があるからだ。


 明らかに好意的な応対を受け、

膳は先のカイケンとの会話を反芻していた。




『-――そうそう、今は二人だけですので、

何か聞いておきたいことは有りますか?』


 同じ部屋にピースとサティがいるが、

膳はカイケンの言いたいことを理解できた。


「えと、その、カイケンさんは

僕のことをどこまで知っているんですか?」


『難しい質問ですね。ですが、

まあそうですね。あなたの思い出せない

前の世界での記憶については、

ある程度知っています』


「あの、それですが、その、

僕は、死んだんですか?」


『はい。でもそれは、

今のあなたなら感覚的に納得しているのでは

ないですか?』


 確かにそうだった。死んだと聞かされても

膳にさほどの動揺は無かった。

むしろ、自分の直感に間違いが無かったことでほっとしたぐらいだ。


「もしかして……自殺、ですか?」


 膳は恐る恐る聞く。


 カイケンはしばらく間を置いて、

尋ねるように答えた。


『思い出された、のですか?』


「いや、なんとなくの勘、ですけど……」 


『そうですか。一応、そのように伺っています』


「えと、誰にですか?」


『あなたを召喚した御方です。

……それ以上は、今の私の口からは

お伝え出来かねますね』


 その言葉は静かで重い。

覆しようもない意志を感じた。


「……僕を、いえ、僕に、

何をして、いや、何をさせたいのでしょうか?」


『選んで頂きたいのですよ。

あの二人、ソアラ・サングリッドと

シルビア・セイレン。

彼女達と共に生きるか。

それとも、私達とともに生きるのかを』


 唐突、でもないが、

膳はその言葉に困惑する。


「そ、それは前に聞きましたけど、

直ぐに答えるのは、ちょっと……」


 理解出来ない事が多すぎるこの状況で、

膳は回答に戸惑う。


『ええ、ですから、あなたの先の回答を

私共は尊重させて頂きますよ。

私共と彼等、どちらがあなたにとって

大事なのか。

よくよく見極めて頂ければ構いません。

誓約に触れない限りで、

お手伝い致しましょう』


 カイケンはそう答えた。

含む所は、何も感じられない。


「あの、仰いましたよね。

世界が良くも悪くもなると……」


『ええ、言いましたね』


「どういう意味何ですか?」


 カイケンは少し時間をあけ、

ゆっくりと答えを告げる。


『言葉通りの意味です。

我々は、生きているだけで、

良いことも悪いこともします。

問題はそれが、誰にとって良いことで

誰にとって悪いことであるかということなのです。

我々とあの二人は、

どうしても分かり合えない、そういう関係性の

先に存在しているということですよ』


 膳は戸惑う。どうしても、核心的な部分を

ぼやかされているように感じてしまうからだ。


『しかしまあ、喫緊の課題としては、

少なからずあの二人……というより、

このギルドへ降りかかっている災厄を

振り払う手助けをどうするか、考えるべきでしょうか』


「え、と、それって、あの

《宝銘》とかいう、おじいさんのこと?

あれ? 何というか、倒した? んじゃないの?」


 膳が思ったことを口にする。


『いえいえ、あの程度では死んでませんよ。

腐っても《宝銘》ですから。

生きる伝説と呼ばれる方々を、あれぐらいでどうこうは出来ません。

それに、あのイカレ女……失礼、変態女もついていることですし、

気は抜けませんね』


 珍しく、カイケンがやや感情的な態度を見せる。


「え? と、誰のこと? ですか」


『いえいえ、こちらの話です。まあ、そろそろ呼び出されそうですし、

結論だけ確認させていただきましょうか。

膳さん。もし、あなたが全てを知りたいと願うなら、

まずはこの世界で、あなた自身を確立してください。

そのためにはまず、彼らを手助けして、敵では無いことを証明するのが

得策だと思いますよ』


 いつもの口調で、カイケンがそう締めくくった―――




「……なるほど、つまり、ソアラ君のお父様とあなたがお知り合いで」


『はい。それで、ソアラ様の容姿に思い当たるところがありまして、

丁度ミラのギルド支部でお見かけしたことも、幸いでございました』


 ほぼカイケンとバーズがやり取りをしながら、

膳はところどころで相槌を打つように頷いた。


 最初は膳に気を使って視線を投げていたバーズも

段々とカイケンだけに話を薙げるようになっていた。


 言葉が通じないのだから、それはそうだろう。


「わかりました。それは災難でしたね……」


『はい、膳くんの言葉が私の故郷の言葉と同じだと分かったときは

大変驚いたものです』


 しばらく会話した後、ベントリはこう切り出した。


「それであれば、是非お二人ともこちらのギルドで滞在してください。

もちろん、滞在費はわたくしが持ちますので」


『そんな、それはご迷惑というものでは?』


「いえいえ、困ったときはお互い様ですので」


 とても上辺な会話により、膳とカイケンの滞在が決まった。



 







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