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SOS 248 心

「……今は、謁見のことを考えていましたよ」


「んー…………嘘でしょ」


 ゼンの言葉をソアラは平坦な声で

けれど、とても強い意志を含んだ言葉で否定した。


「私もそうだったから、わかるけど、

ゼンくん、考えることをしてないっていうか、

諦めてないかな。

何ていうか……全部どうでもいいやって、

思ってない?」


 ゼンはその言葉に反応せず、

黙って聞いている。


「それに、シルビアちゃんも。

言いたいこと、ずっと我慢しているんじゃない?

最近、特にそんな顔をしてる」


 シルビアを顔を逸らした。

後ろめたい事があるとやってしまう

いつもの癖、みたいなものだ。


「そういうあんたはどうなのよ?

ゼンに言いたいこと、あるんじゃないの?」


 シルビアはソッポを向いて、

吐き捨てるように言った。


 また、静寂が訪れる。

鳴っているのは、空気を清浄する神導具の

シュンシュンという音だけだ。


「……あるよ」


 ソアラは覚悟を決めたように言う。

シルビアは目の端っこでチラリとソアラを見た。

 顔は、真剣そのものだ。


「私も、白雪ちゃんと同じように

《融合》してほしい。

そうやって、この力を使いこなしたい」


 シルビアは歯噛みする。嫉妬か侮蔑か

はたまた共感か、どの感情かは分からない。


「使いこなして、どうするのよ?」


 シルビアの言葉には棘がある。


「《宝銘》になって、みんなを見返したい」


 ソアラにしては珍しい、自己顕示欲の

塊のような言葉だ。


「もう、馬鹿にされたくない」


「……良いんですか?

僕の力でそれを手にしても、

虚しいだけじゃ無いですか?」

 

 ゼンが淡々と言う。

その言葉に善悪は無く、正邪も無かった。

 文字通り、言葉通りの意味だ。


「それでも構わない。

わたしは、強くなりたい。

強くなって、認められたい」


 ソアラの家は貴族だ。しかし、ただの貴族では無い。

一族が全員、戦術ギルドにおいて中枢を担う役割を持った

生粋の戦士達の家系だ。


 そこにいて、ソアラは落ちこぼれだった。

お情けで卒業させてもらったものの、

本来は入るはずだった戦術ギルドから外され、

付き合いのある冒険者ギルドへ入職することとなる。


 ソアラはただ、その評価を覆したいだけだった。


「……シルビアさんは、どうなんですか?

何か言いたいこと、あるんですか?」


 ゼンが聞く、シルビアはまだ向こうを向いている。


「……あんた、あたしたちのこと、どう思ってるのよ?」


 シルビアがゼンの質問を質問で返す。


「どうって?」


「見下してんじゃないの? あんたは――」


 シルビアはゼンを見る。とても冷たく、怜悧な視線だ。


「必死に生きているあたしたちを、

無様で滑稽だと思ってるんじゃないの?」


「……そんなことは――」


 ゼンの言葉に、シルビアが被せて言う。


「じゃあ、どうしてそんなに他人事なのよ?

どうしてそんなに冷静――いや、無関心なのよ。

それだけの力がありながら、どうして何もしようとしないのよ!」


 シルビアが、怒りに任せて机を叩く。

ガタリと壁の飾りがずり落ちた。



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