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SOS 228 シュリとシュラ1

「――さーて、どっちっかなー?」


「シュリちゃん! 

絶対シュリちゃんで決まり!」

「外せ外せー」

「はい終わったー」


 やいのやいのと愉しげな声が聞こえてくるのは

健全で一般的な酒場からだった。

 シュリとシュラは昼間の仕込みを手伝い、

今は帰るまでの時間を接客で潰している最中だった。


 最近入った双子の看板娘、シュリとシュラは

ここら辺一帯の人気者になっていた。


 その理由の一つが、彼女達は

特定の店の専属ではなく、

この界隈の酒場全部に関係していた点である。


 彼女達目当てで、新参や古参もみんな

馴染み以外の店にも通うようになった。


 現れる時間もまちまちで、現れた瞬間から

その店の新規入店は制限される仕組みが

いつの間にか出来上がっている。


 この一帯の売り上げに大きく貢献している

彼女達は、店主からも絶大な信頼を獲得していた。


「はーい、残念。シュラちゃんでしたー」


 ぺろりと紅い舌を出し、

あざとい仕草で男に笑いかけるシュラ。


「くそー! 何でだー!」

「いえー! ざまー!」

「次は俺だぜ! 俺!」


 見せたのは耳の付け根にある

星形のほくろ。シュラは後ろから見て右に、

シュリは反対の左に付いている。


「ざーんねん。また来月でも挑戦してねー」

「ちきしょー!」


 シュリシュラとサシで遊べるのは

1ヶ月1回と決まっていた。

 別にお金がかかるわけではないが

一応負ければ何か注文する決まりに

なっていた。


 なお勝った場合は難易度にも

よるが、握手から始まり、抱きつき、

頬に口付け、最後は二人で遊びに出掛ける

というご褒美も待っていた。


 年頃の男も、年嵩の男も

みんなして二人に夢中だった。


「あれ? お客さん見ない顔ねー?

カルマリはお初?」


 シュリが目ざとく男に声を掛ける。

新規顧客を増やすと、ちょっと良い

お給金を貰えたりするのだ。


「……ああ、そうだ」


 やや不遜な物言いをする男は、

いい装備をしており、

お金には不自由していない空気を

纏っていた。


「どうするー?

遊んでみるー?

負けたら何か追加で注文して、

勝ったらご褒美があるよー?」


「えー! 次、俺だってばー!

シュリちゃーん!」


「はいはい、どうどう。

新しい人にも、案内は必要でしょ?」


 しかし、その男はシュリのことを

一瞥してふん、と鼻を鳴らした。


「……下らん。お前もお前だ。

こいつらはみんな、下心を持って

お前たちを見ているんだぞ?

それをどうしてそんなに嬉しそうにしている?

寧ろ、嫌がって然るべきだろう」


 空気がピシリとひび割れた。

常連の連中が、ガタリと椅子を引いた瞬間、

シュリは大きな声で笑い出した。


「あっはっは。面白いこと言うねー、

お客さん。まあ、確かに確かに、

そりゃそうかもねー」

「ホントホント。

間違いじゃあないかなー」


 シュラも一緒になってクスクス笑う。


「でもさあ、それでも、てゆーか

だからこそ嬉しいんじゃないの?

女として女に見られるって言うのは

いいもんだよ?」

「そうそう。つまり好きだってことでしょ?

最高に気持ちいいじゃん。

ねー、みんなー!?」


「おう! その通りだぜ!」

「シュリちゃんシュラちゃんサイコー!」

「俺と付き合ってくれ!」

「結婚してくれ!」


 どさくさ紛れに色々言われているが

シュリもシュラもどうよ? という表情で

その男を見つめた。


「……ふん、下らん!」


 居心地が悪くなったのか、男はさっさと勘定を

すませると店を出て行く。


「まったねー!」

「待ってるよー!」


 シュリとシュラは更に大きな喝采を浴びて、

おおいに笑った。


 男は店の外に出ると

「最後の戯れだ……精々楽しめ……」と

吐き捨てるように言う。


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