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SOS 182 欠勤

「あ、ヒナギク管理官。お疲れ様です」

「んー、お疲れ様ー…………」


 朝番のシルビアとソアラが遅番のヒナギクと

入れ替わる。通常、役付きであるヒナギクに

遅番の義務は無いが、あの事件の後で

そもそもの人手と追加人材の不足が

慢性化している状況もあり

管理官としての仕事が激化しているのだ。


 昨晩も地方から出稼ぎに来ている

冒険者集団の階級分けを行ったところだろう。

 

 もちろん他国であろうと地方であろうと

ある程度の階級分けは既にされており

通常は確認程度であるが、

人材不足を良いことに、難易度の低い地域で

階級を底上げした奴らが、現在は高難易度を擁する

カルマリへ来るようになった。

 

 それは箔付けのようなもので、

階級証明をもらってすぐ、

トンズラするような連中も多い。


 管理官であるヒナギクは今、そういう

連中を全て自分で検分していた。

 ちなみに殆ど手加減してあげる余裕が無いため

カルマリの審査は一部で《鬼門》

と言われるほど厳しくなっていた。


 審査前はヒナギクを軽んじていた連中が

審査後に平伏している様はもはや

見慣れた光景になっている。


 しかし流石のヒナギクも

疲れが顔に出ていた。今も仮眠室へと

フラフラ入って行く所だ。


「あ。あの」

「ん? ……どったの? サンサン?」

「あの子、元気ですか?」

「ああ、アルのこと?

元気元気よー。元気いっっぱい。

最近、大家のパルコさんに任せっきりだけどねー……」


 疲れた表情ながらも

ヒナギクは柔らかく笑った。

 アルとは、ソアラが見つけたあの

山猫の子供のことだ。


 どういうわけか、あの事件の後

山猫の子供はヒナギクにしか

懐かず、他の人間では触れることも

出来なくなっていた。


 結果として、ヒナギクが面倒を

見ることになったのは道理だろう。

 ソアラは残念がっていたが、

仕方がない事だった。


 大家のパルコさんはヒナギクと

付き合いが深く、アルも早くに馴染んだらしい。

 しかしまだ他の人間には馴染まないらしく

家の中で育てているらしかった。


「ソアラ、そろそろ行かないと。

……迷惑ですよ」

「あ、す、すみません、ヒナギク管理官。

お疲れのところ、申し訳ありません…………」

「ん? いいのいいの、大丈夫大丈夫。

何かあったらまた起こしてねー……、

お休みー……」


 シルビアとソアラは一礼して、

ヒナギクを見送った。


 取り敢えず、ゼンの歓迎会については

他の人に相談する事にする。


「……やっぱり、オズマット教務官?」

「オズマット教務官も忙しいはずです。

それに、あまりに高い所は行けませんし」


 平の職員と役付きでは給料が違う。

出来れば生活水準が近い方が望ましかった。


「あー、ならピース先輩とか」

「……まあ、妥当な線でしょうか」


「ピースなら居ないわよ?」


 通りすがりのサティが会話に乗ってきた。


「え? 今日非番でしたか?」

「いいえ、無断欠勤よ」


 サティは呆れ顔で、一方のシルビアとソアラは

お互いの顔を見つめた。

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