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SOS 180 狭量

 共同生活の規則は比較的単純だった。


 1・お互いの私的領分を侵さない。

 2・炊事・洗濯・掃除はシルビアが行う(有償)

 3・力仕事はゼンが行う(無償)

 4・その他はソアラが行う(破壊時は弁償)


 不公平が無いわけでは無いが、

生活能力に乏しい二人はシルビアの要求を

飲み込むことにした。


 ゼンは学生として生活することも出来たが、

その能力の特異性、監視態勢の難度が上がることを

理由にして、早々に職へ就くことになった。


 幾ばくかの公金を目当てに

働かないことも選択肢には存在したが、

諸々の会議を経て、今の現状に着地する。


 ゼンは太陽が頂上に来るまでは語学を修め、

それから夕方まで装飾ギルドからの

下請け仕事を黙々と繰り返す。

 子守の女がするような単純作業であり

半日頑張っても子供のお小遣いに

色が付いた程度しか貰えない。


 それを知ってもなお、ゼンは真面目に

黙々と取り込んだ。

 もちろん、慣れない語学の習得にも

励んでいる。

 《融合化》での真言を使えば意志疎通は容易だが

それではいざというときに問題があった。


 そのためゼンはウルメリアでの公用語と

併せて、念の為ガーファングルとピノスの

言葉も勉強させられた。

 なかなかの重さだが、今のところ

ゼンは弱音を吐かずに頑張っている。


 それを知ったグレースは

「いい子じゃないの。

王族にしておくには勿体ないわね」

 と言った。


 ソアラは共同生活において完全に戦力外だったが

こと貴族文化の講師としては重宝した。

 ソアラ自身が苦労をした経緯もあり

教え方は丁寧で分かりやすい。

 その意外ともいえる適性を見て、

シルビアは言いようのない

モヤモヤとした感情を持った。


「行って来ます、ゼンくん」

「行ってらっしゃい」


 ソアラとゼンは自然なやり取りをする。

ソアラが他人に対して無防備な面があることを

差し引いても、二人は年頃の男女らしい

仲の良さを見せる。

 それもモヤモヤする原因かもしれないが、

シルビアは明確にその感情を言語化出来ない。


「……あ、あの。行ってらっしゃい」

「……行って来ます……」


 ゼンはシルビアにもおずおずと言う。

シルビアは自分の態度が相手にそうさせることを

自覚しているが、ソアラほど素直にはなれない。


 別にいい女のフリをするつもりは無いが、

あんな無防備な顔は到底できる気がしない。


 シルビアは難しい表情のまま、

今日も定刻通りに出勤する。



「ねえ、シルビアちゃん」

「……何ですか?」


 道すがら、ソアラがシルビアに話しかける。

 大きな屋敷に囲われていた時は

いつもギリギリだったソアラも、

シルビアと住むようになり

余裕を持って出勤するようになっていた。


「そろそろゼンくんも慣れてきた頃だし、

どこかで歓迎会でもしない?」

「……家ですれば充分でしょう」

「でも、ゼンくんずっと家だと

つまらないんじゃない?」


 シルビアはソアラの言葉にそれもそうか

と思った。同時に、自分が冷たい人間だと

いわれたようで少し落ち込んだ。


「ギルドマスターに言えば、

大興飯店で食事も出来ると思うし。

一回聞いてみようよ」

「……そうね、任せるわ」

「うん、決まりー」


 シルビアからすれば三人で暮らすには

やや大きいと思える家だが、

ソアラからすれば小屋に近い新居。

 加えて、使用人という立場の扱いなのに

貴族出身のソアラにはまるで屈託がない。


 シルビアはそういう態度のソアラを

見るにつけ、ますます心をこじらせた。

 自分が狭量な人間だと、

嫌でも自覚させられるからだ。

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