SOS 155 拳銃
「あなたあの時の災厄宝銘さんですよね?」
『(……余裕あるな)まあな』
ヒナギクの一閃を防ぐべく、
アルマは両手剣である《宝剣》を
片手持ちに変える。
どうせ抑えられるなら、
負担は軽い方が良いからだ。
そうして空いた手で、防護術式を展開させる。
「その術式展開、見覚えがあります」
『構築癖を読めるとは化け物だな』
「じゃ。もいっかい殺しときますか」
『動揺ぐらいしてくれよ……』
自分の殺した相手が生きていたというのに、
ヒナギクはブレない。
調子の悪い身体とは思えない厄介さだ。
『(逆に言えば、だからこそこの平凡な
王の身体でも捌けているのかもな)』
「どうやって逃げ出したんです?
というか憑依術ですか? それって」
『俺に勝ったら教えてやるよ』
『……その状態を何と言いましたかね?』
『デュラハンでしょ? 若様がそう言ってた』
キチョウとサイエンが言葉を交わす。
サイエンの小脇には自分の頭が抱えてある。
『キチョウさ、さっき言ったよね?
私は数値に拘り過ぎるって』
『ええ、言いましたとも』
『じゃあ、見せてあげるよ、
あたしの拘りがあんたを上回っていることを。
……証明してあげる』
サイエンは小脇に抱えた頭を力いっぱい上空に
放り投げた。
天高く、その頭部はぐるぐる回転しながら
舞い上がる。
『?』
キチョウは知らない、
サイエンがどれほどの手札を隠し持っているのかを。
『《擬先》』
この術式の発動条件に『頭部と本体を分離』
する事が必要であったのは、
単なる偶然だろう。
『来なさいよ、キチョウちゃん』
両手をクイクイとする首なしのサイエン。
声は不思議と
どこからともなく聞こえてくる。
『では遠慮なく』
その言葉を受け、キチョウは足を踏む。
『《凍波》』
大地すら凍らせる力の波が、
地を這いサイエンに襲いかかる。
しかしサイエンは慌てること無く、
懐から得物を抜く。
ゼンが見れば一目瞭然だったが、
それは所謂ひとつの拳銃だ。
サイエンは無言でそれを撃つ。
大した音も無かったが、
その弾丸が接地した場所に、
局所的な結界が発生する。
そして氷熱系を防ぐ防壁が展開された。
バキンと音を立て、キチョウの攻撃が
二手に別れる。
丁度サイエンを避けるように、
その波は通り過ぎた。
『《震波》』
キチョウは直ぐに次の術式を発動させる。
その構築速度はとても速いが、
サイエンの弾丸はそれを上回る。
発動した瞬間、その弾頭がキチョウの
足元に接地する。
そうして発生する筈だった震動の波は
あっさりと掻き消される。
『(先読み? でも、
対処が早すぎる気が―――)』
キチョウが次の術式を躊躇する。
その隙をサイエンは逃さない。
『ぐっ!』
サイエンの弾丸がキチョウの左肩を
真正面から捉えた。
弾丸の音はほとんど聞こえない。
『ほらほら?
考えてる暇はないよー?』
サイエンがさらにもう一丁、
拳銃を懐から取り出した。




