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閑話 王の戯言 親子の会話

 やれ、上手く事が運んだか、やはりアレは持っておったようじゃ、あの時どうなるかと案じたが、上手く賽の目が出た。それにしても何をしておるのやら、早くにここを出たいというのに………


「王、お待たせしてすみません」


 ふぅ、やっと来たか………それにしても后よ、何じゃ?その浮かれ女の様な衣は、もちっと年を考えろ、年を、じゃからここに来るのは嫌なのじゃ。


「いや、構わぬ、後に関する事を知らせに来たまで、直ぐに行かねはならん、われは忙しいのじゃ」 


「来たばかりでは、ありませぬか、ごゆるりと致して下さいませ、三にはよう参られていると、お聞きしておりますわ」


 色気も何も無いな、いや?それだけか?蜜の様に喋りおってからに、あらかさまに聞いてきおるわ、ふぅ、早うに美しき花園へ行きたい。手短に、話すか。


「…………それより話なのじゃが、病に伏せておった、一の妃が、死ぬる前に寺に入ると言い出してな、アレも早うに子を亡くしてから、弔い三昧しとるし、なので許しを与えた」


「まあ。それは、神のお側でお仕えされるのですか、一の妃様は徳高いお心でしたから、はい、私は、王がお決めになられた事ならば、依存はございません。でもどうされますの?新しき妃を?我が勧めまする妹分等は、如何でしょうか?王」


 何を、ぬけぬけと………われにも好みがある、好みが………それにこれ以上は、もういらぬ故、王子が多いのは良いが、多いと他国に国力が有るとみなす場合もある故に、そろそろ決めねばならない。


「いや、それには及ばぬ、三の妃を、一に据える。もう決まった事だ、それに合わせて、王子を一人外に出す」


 ほ、え、あ?とな、何じゃ?その豆鉄砲くろうた顔は、考えたら、当たり前の配置だと思うがな。名跡だけならば、三のはお前の身内じゃろう、母上とは縁を結ばれておる。何を考えておるのやら。


「だ、誰を?王子は…………三人ですわ!」


 そこか!妃の話なのじゃが………、それに、座っておった椅子から、はしたなくも急に立ち上がり、われにつめてくるとは、ほんに愚かな………じゃから息子も馬鹿者に育ったのだろう、全く、死んだ二番もそうじゃが、もちっと何とかならんかったのか?


「落ち着け、あちらは()()()()()がご所望でな、それと引き換えに、サリアの代わりを、貰い受ける事にまとまったのじゃ、依存はないだろう」


「ま、あ、それは………私は、存じ上げて御座いませんわ、ええ、依存はありません!ありがとうございます。お心遣いに、感謝いたしますわ。王はそこ迄お考えに………そうですわね、王子は三人もいりませんもの、ニの王子ならば、きっとあちらで、上手くやっていけますわ」


 ふ、ん、やはり二を推して来たか。そして、何を考えておるのやら………コヤツは死ぬまでなのかも知れんな、まぁとにかく、一応二番の母代わりのコレの言質は取れた。


「という事だ。ではわれは政務に戻る故、そなたも忙しくなるが、心得ておいてくれ、()()()()()()()に、任せておけば安心じゃのう」


 出されていた酒盃を、形だけ唇をつける。そうでないとうるさい故、そして席を立ち、物言いたそうなそれに、期待しているとさらに言葉を重ね黙らせると、われは部屋を後にした。全くあの女………


 母上が、病んでおらねば一番最初に、しておいていたものを………われは輿に乗り込むと、三の妃の元へと行くように命じた。


 ゆるりと左右前後にゆれ、やがてくらりと上に立ち上がる。進む流れに身を任せつつ、とろりとした眠気が訪れる、イカンな少し酔ったか………あれが、少し濃く炊いてあった。


 なんじゃ、クシャルの事を思い出した。やはり、われは良い父親じゃ、そうじゃ、そう………と、うつうつとしながら、あの日の事をゆるりと思い出していた。



 ―――母上様の喪中も開けた。主な殯の儀式も、終えたことだし、次はアレか、しかし少し間をあけるか、本来ならば手打ちにしたい所だが、


 今は時が悪い、母上様が亡くなり、アレを無くし、迎えてまなしの后がなんと愚か、なのでどうにかつてをたぐり、縁者を妃にと………そのむかえた一のは、后に目を付けられ、子を亡くしてからは病についとる。


 そう、三のは母上が動いてくれた故、籍はあるが、何とも薄い。もうしばく置かねばならぬ。口惜しい事だが。


 その間に、別の方法を考えるか…………、方法はあるのだが、そうだな、生かして上手く使う方が、良いかもしれん。


 そうなれば一度に二つ、なりよりの結果。しかしそれには、アレが動いて欲しいのだが、未だに病に臥せっていると聞く、年若いから仕方ないが………そうは言ってはおれぬ、手駒はもう、アレしか残って無いからな、


 やれ、出るか………、最近どうにも疲れる、早く退位をして、ゆるりと花達を愛で、音に酔うて暮らしたいものだ、そうだな、今日は久しぶりに、今から見舞いに行くとしよう、こう見えても、われは父親故、愛情はある。


 それにしても、后は枯れるまでとな?、アレは王子も成人しておる、雌を棄てれば良いものを、未だにわれに媚をうり、それを買わぬものだから、遊びに手を染めておる、真の阿呆、母上の身内だが嘘であろう。その辺りの浮れ女を、拾うたのではないかと思うぞ、


 少しはアチラを見習って欲しい。三のは、われ好みの者を部屋子にしておる。あそこへ行けば、賢く優美な、物言う花達と、楽しき時が過ごせる。足が向くのは仕方が無い。


 何がワタクシめの元に、だ、若い花を集めております故…………身体の薄い、それか厚い、骨や肉の様な部屋子達を集めおって、どう見てもアレの引き立て役だろう、そして話していても、才知も何もなく、アレに遠慮をする面白くも無い者ばかり、后もよう探してくる。どうしようもない。


 母上様が先の道を、引かれておられるから、それに乗ればいいが、その為にも、クシャルにはもうちっと強くなってもらわねば………サリアか、アレは惜しい事をしたな。バムから詳しくは聞いたが、親子共々、色に阿呆とは思わなんだ。


 一のに、そろそろ后をとせっつかれておったが、まさかアレが、横恋慕するとは、その挙げ句に………、クシャルが動いてくれ、どうにか揉み消したが、あの姫との婚礼、それが我が国にとって、どれ程の意味をなすのか、年上のアレが気がついておらぬとは、何と情けない。




「バム、人払いしておけ、どうだ、気分は、少しはようなったか、この前つかわした、あれは食べたか?滋養がつくと思ったが」


 ふむ、バムがわれに従いつつ、首を振っておる、まだ食べれぬというのか……、我が子ながらに情けない、大体皆少し甘いと思うのだ。まだ成人の儀式は終えてはおらぬが、本来ならば母上様の喪中が無ければ、とうに済ませておった。その事を忘れておる。


「すみません、父上にご心配をかけてしまって」


 こういう時にでも、きちんと、われに応じて来るのは、いい事だ。ふむ、前はよほど悪かったのか横になっていたが今日は、顔色は悪いが起きて着換えておるな、それならば少し話をするか。


「いや、良い、われも忙しい、なので聞くがこの絵はどう思う、答えろ」


 われは青い顔のクシャルに、市中で広まっている、風刺画を取り出し手渡した。どういうわけか、われに関することが、面白おかしく描かれた物がたまに流行る。


 まぁ、他愛もないものばかりなのだが、中には気を引く物もあるので、密かに手に入れ見るようにはしているのだ、そして今回のそれも、なかなかに心をひかれる一枚。


 さて、と、椅子に座り、バムが運んだ茶を口にしながら待つ。全くここには花がおらぬ、寺みたいな場所だなと何時も思う。むさ苦しいとはこういう事なのだろう。早く、あちらに行きたいものだ。ん?見おおえたか………


「………何の意味なのでしょうか、面白い物があるのですね」


 父上、われを慰めるご配慮ありがとうございます。と、それを平然と折り畳むと返してきた、ほう、そう来たか!面白い、では入るか………


「この絵は面白かろ、醜い妃と見目麗しい王子が、恋に落ち禁を破り、夫と親を裏切り交わり、そして城を出るという、誰か広めたか、クククク」


「………ふふ。そうですね、良くできています、父上」


 良い、これはおもしろいのぉ、気丈にふるまいおって、ならば、もうひと押しで壁を敗れるか、コレを乗り越えれば、コヤツは大きくなれる故、われも安泰になる。しかし………アレらをどうするか。



 アレがよりもよって年若のコレに、しかもわれの息子に、ちょっかいかけるとは………われに似た目の色が入れば、部屋に引き込んでいる事は知っておったが、阿呆にも程がある。しかし、遊びだと思っておった。


 人の口にのぼった時は、どう始末つけるつもりじゃ、きと、あの女狐、恐らくはクシャルを他国へと質に出して、事なきを得ようと考えていたのじゃ、だがとんだ駒が出たもの。まさか惚れるとは………、年若のコレに、クククク人とは何と愉快な、退屈せん生き物じゃ。


 三のに聞けば、王と生きうつし、なので忘れられぬご様子と、とんだ、深情けになってると、呆けていると、教えられたわ。そして、気位が高いアレが、アレが!よりに寄って、醜いと、われを誑かす醜女と、嫌っていた三に、頭を下げて来たそうな………


 見舞いに訪れたいが、断られる、どうにかして会えないかと、頼み込んで来たそうじゃからのぉ、クククク、われに似て、見目麗しく育った故の苦労だな。



「これを見て、何を思う、何かに使えると……思わないか」


 こうなってしまえば、こちらから動いた方が良い。利用しなければ、足を救われてしまう故。色を使うのは何も女だけではないからな。男も我が娘やら、姪やら、妹やら、差し出してくる。それに今に始まったことでは無い。さて………どう答えてくるか、父親として、教えてやったが。


「…………間違いは………『美しい后』が恋に落ちた、お后は薬を盛って王子を誑かした。手に入れたかの様に思えた。しかし王子は恋などに呆けてはいない。そして、城を出るのは、お后だけです」


 ほほー、わが意を読んだか、自身で考えたか、正解を言ってきたのぉ、アレに、スキを見せたのはコヤツの落ち度。しかし、それを利用するのもコヤツ才覚、寝ておる間に大人になったのか、それともサリアを亡くした事で、変わったか。


「それも面白い、一興じゃ、民も喜ぶじゃろう、ならば、早速新しい物をと、知らせておこうか」


「そうですね、娯楽になればなにより。父上のよしなに」


「后が見舞いに来たいと申している、どうする?」


「お后様には、気をかけて頂いて、われは、かまいません」


 腹を据えたか、自ら手を汚し、泥水をすする事を選んだか、これは先が楽しみになった。ならばどう、アレを扱うか、ここは任してみるのも良い。


「そうか、では参るように伝えておくとしよう、今後この事は、お前の裁量に任せる。われは知らぬ故、好きにしろ」


「はい、寛大なご配慮ありがとうございます、父上」


 大きくなりおって、これは内々に、サリアの後をアチラと話しておくとするか、決まれば全て収まる故。ふう、それにしてもここは、殺風景じゃのぉ、紅白粉、香の匂い一つせん。残香すらない。アレがいた頃は、そりやぁ、優しく華やかな………、いかん、四を思い出してしまった。もう行くか。


「そうか、期待している故、また来る」


「ありがとうございます。父上、ご期待に添えるよう尽力をつくします」



 生真面目に答えおる、もちっと色気が出れば、そう、そう…………。



「到着いたしました」


 とさりと下りる感覚で、われは目が覚めた、どうやら少し寝ておったか、最近色々と、忙しく疲れておる。


 そう、あの時、任せたのじゃ、そのままでは、まだ心配故に、父親として手伝ってやった故、あとは好きにすれば良い、どう使うかは、クシャルの才覚一つ…………。



 さて、面倒は任せたことだし、何やらひどく疲れた。最近調子が悪くて困る。どれ………今日は休むか、シャタールの音色が、聞きとうなった故に、酒を飲み、美しき花と戯れ、ゆるりと休む事にしよう。




 アレは、クシャルが………好きにするだろう、われは見ておれば良い。



 ………それもまた一興。





















































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