貴方には知られたくないこと3
当初、リアンは三番目に主人公と合流するヒロインでした。二番目はかなり後半にずれこんだ。
誰かが近づいてくるのは少し前から気付いていた。
足音を隠そうともしていなかったし、草をかき分ける音もしていたからだ。
逃げないの? 視線で問いかけるも彼は反応しない。
逃げるか迎えるか、判断は難しい。逃げたら罠があったなんて展開もあり得る。
彼が逃げないのなら従うべきだろう。
あらわれた大男は二言三言彼と話すと大剣を振りかざし襲い掛かってきた。身構えていたし、大男も当てる気がなかったみたいだから簡単にさけられた。
なにやら大男は嬉しそうに笑うと彼と切り結ぶ。
明らかに彼が押されている。助太刀しようにも付け入る隙がない。いくらステータス値が高く、スキルを所有していても経験が圧倒的に足りていないことを自覚する。
剣術スキルはどう動けばいいか教えてくれる。だが、身体がその通り動いてくれるかというとまた別の問題だ。
高ステータス、高スキルなら多少失敗したところで挽回できるのだが、私の戦闘能力はまだ高くない。
せめて、錬金術スキルで何か作っていれば足手まといにはならなかったのに。錬金術は設備がなければ使えない。この時代において、果たして設備が存在しているだろうか。
大男はレイの死角から掬い上げるように大剣を振り上げた。
彼は反応できていない。
何かしなければ彼は死ぬ。
けれど、何かしたところで間に合わない。もっと彼の近くで肩を並べて戦えていれば結果は違っていただろう。
私にできたのは、無意味に無言の悲鳴をあげることだけ。
だが彼は違った。
ぐりんっと彼は首を動かして大剣の動きを把握すると剣の腹で大剣を受け止めて吹き飛ばされた。
木に衝突して頭を打ち、それでも覚束ないながらも立ち上がる。
もはや満身創痍。戦える状態じゃない。
私が、守らないと。
大罪の牢獄に転移された時、私は抵抗しなかった。それどころか戦おうとしたアイビーをとめた。
あの時の私にはアイビーしかいなかったから。愚かな選択だったと、後悔だけが残った。
結局、私は奪われたのだ。
アイビーも。
人生も。
命さえも。
戦わなければ奪われる。
とどめをさすつもりか、いつの間にかあらわれた女性がレイとの距離を縮めていく。
咄嗟に彼の前にでて短剣で女を威嚇した。女の一挙手一投足を見逃さないよう集中する。
知らず、呼吸が乱れた。視野が狭くなっていって意識が曖昧になってくる。
私がやらなくちゃ。アイビーだってもういない。もう、戦えるのは私しかいない。
聞こえるのは自分の脈動のみ。何時間もナイフをかまえたままの気がする。
永劫に間延びする時間は、肩に何かが触れたことで終わった。
緊張が瞬時に恐怖に塗り変わった。後ろからなんて想像のらちがいで本能的に振り向きつつ、ナイフで切りつけた。
目に飛び込んできたのは頬を切られたレイの姿。
急速に頭が冷えてくる。私は何をした。なんでレイを傷つけてしまったのか。
決まっている。私が弱かったからだ。恐怖で判断を誤ったからだ。大罪の牢獄に閉じ込められたあの時のように。
ごめんなさい。
思わずこぼれた言葉。自然に身体が動いてあとずさる。レイの側にいたらまた傷つけてしまう。どこか遠くに逃げたい。
「リアン!」
大声で名前を呼ばれて身体が固まる。すると彼はぐっと身体を寄せて私を抱き締めた。
抵抗しても彼は放してくれない。それどころか更に強く抱き締めてくる。やめてほしい。彼のぬくもりはもう知っている。これ以上、私にわからせないで。
涙が溢れる。身体から力抜けてもう抵抗する気にもなれない。
私が落ち着いたのが分かったのだろう。彼は私から離れるとじっと顔を見てくる。
酷い顔になってるんだからあんまり見ないでほしいんだけど。冷静になってくると恥ずかしくなってくる。
存在を忘れていたが、襲い掛かってきた男や女はとっくに戦意をなくしていたようだ。
つまり、完全な一人相撲をしていたわけだ。
ほんと、私はなにやってんだろ。




