7-6 勇者は、みなさんの目の前にいる!
7ー6 勇者は、みなさんの目の前にいる!
「おめでとう」
「おめでとう」
俺とアズミちゃんの周囲にたくさんの白い人影が現れた。
それは、うっすらとした輪郭のみを残している何かのようだった。
「君は、君たちは、手に入れた」
「失ったものを」
「全てを」
「だけど」
女が不満げに唇を尖らせた。
「これでは、消滅は、回避できない」
「いや」
誰かが言った。
「もう1人の彼もまた、失ったものを取り戻した」
「2つの世界に奇妙なズレが生じたからだ」
「そうだ」
「全てがずれていき、決して、もう、重なることがない」
「だから」
その人は、満足げに言った。
「2つの世界がどちらも滅されることなく存続することが出来る」
「世界は、安定した」
「もはや、これ以上、新しく創り直す必要は、ない」
「足りないこともなく、多すぎることもない」
「善すぎることもなく、悪すぎることもない」
「全てが満ち、そして、欠けていく」
「善い」
「これで、善い世界、だ」
「カナメ」
誰かに名を呼ばれて、俺は、はっと気づいた。
そこは、真っ暗な世界。
だけど。
美しい星星が輝いている。
遥かな夜空がしんと拡がっている。
俺は、前に立っている少女を見詰めた。
愛しい少女。
「アズミちゃん」
俺は、彼女の名を呼んだ。
アズミちゃんは、俺に、優しく微笑んだ。
「約束、した。ずっと、一緒だって」
「うん」
俺は、アズミちゃんと繋いだ手を握りしめる。
「ずっと、ずっと」
「厄災は、去った」
俺がそう告げると、神官たちはざわめいた。
彼らの内の1人が、俺たちに訊ねた。
「あなた方は?」
「確か、神子は、エンリコ・ファーガスン伯爵だった筈なのに」
「彼は、どこへ?」
彼らは、きいた。
「そして、あなた方は、何処から?」
「私が、お答えします!」
その場に駆け付けた荷馬車に乗った人々の内の1人であったファーガスン伯爵が叫んだ。
「その方は、勇者、です!勇者 カナメ様、です」
「勇者、だって?」
神官たちが驚愕した。
「そんな、まさか」
「だって、勇者は」
「勇者は、みなさんの目の前にいるではないですか!」
ファーガスン伯爵が言った。
「たった今!この国を、世界を救ってくれた!」




