6-9 厄災ですか?
6ー9 厄災ですか?
「しかし」
エンリコが俺の方をちらっと見て言った。
「この方は、失敗だったのではないのですか?」
「違います」
姫は、どや顔で言った。
「カナメは、正真正銘の勇者です」
「確かに、追放後のあなた方の行動してきたことを見れば、そうなのかもしれませんね」
エンリコは言った。
「だが、まさか、失敗した勇者召喚が、実は、成功していたとは思いませんでした」
「それらのことは、こちらの予言書に全て書かれています」
姫がエンリコにきいた。
「そちらの予言書には、いったい何が書かれているのですか?」
「それは・・」
エンリコが語り始めた。
「姫には、お辛い内容かもしれませんが」
クリスティア王家に伝わる予言書は、2冊あるのだという。
一冊は、ヨハンナたちの手にあり、もう一冊は姫たちの手にある。
姫たちの持つ予言書の内容は、勇者召喚の真実や、新しい国のことが書かれており、ヨハンナの方の予言書には、勇者召喚の方法と迫り来る厄災について書かれているのだという。
そして、ヨハンナたちの持つ予言書によると、勇者召喚のためには王家に代々伝わる2つの魔導具の内、1つが必要なのだという。
魔導具の内の1つは、姫の体内に埋め込まれて姫の生命を維持している魔石であり、もう1つは、父であるクリスティア国王の心臓に埋め込まれている王の証のリングだった。
ヨハンナは、姫の体内の魔石を奪おうとしていた。
だが、クリスティア国王に阻まれたのだという。
「我が娘の命を奪うつもりなら、まず、私の命を奪うがいい」
それが、王の言葉だった。
王は、そう言うと自らの心臓を差し出したのだという。
「王は、姫を守りたかったのです」
エンリコは言った。
「姫と国を守るために、王は、自ら命を絶たれたのです」
「お父様・・」
姫が涙ぐんだ。
「私のために・・」
「しかし、せっかくの王の犠牲も無駄となってしまったと思われていました」
エンリコが俺の方を見た。
「よもや、勇者召喚が成功していたとは思いもせずに、ヨハンナ様は、あなたを追い出してしまったのです」
その通りだった。
俺は、うんうん、と頷いた。
何にしてもヨハンナが俺を追い出したことに変わりはない。
「それから半年後、最初の異変が起こりました」
エンリコが言った。
「最初の消滅が起こったのは、クリスティア王国の最果ての町アマンダでした」
ある日、突然、現れた黒い闇に飲み込まれてアマンダの町は、跡形もなく消えてしまった。
次は、隣町のラクアの町が消滅した。
「そして、あの巨大なウルディナル湖の水が急に消滅しました」
あれ?
俺は、ちらっと姫を見た。
それって、俺たちのやったことじゃね?




